「まもなくー、ペルシャ猫図書館前ー、ペルシャ猫図書館前ー」
先ほどの三毛猫車掌の声のアナウンスがひびき渡り、チリンチリンと鈴の音が鳴る。駅名がなんとも不思議で、どんな場所なのかが気になった。
またたび特急は駅のホームらしいところに滑りこみ、なめらかに停車する。ここがペルシャ猫図書館前らしい。好奇心から、仕切りを開けてみようとしたけれど、やっぱり動かなかった。車掌の言うとおり、終点まで行かなければならないのだろう。
「発車します。えー、次に停車いたしますのはー、アメリカンショートヘア市場前です。到着は約10分後です」
またもや不可思議な駅名が聞こえてくる。ほかにはどんな駅があるのだろう、と考えると、ポンっとテーブルの上に何かが現れた。
「ななな、なに!?」
おどろいて飛び上がってしまう。
おそるおそるそれを手にとると、どうやら路線図のようだった。またたび特急の停車駅それぞれに日本語で簡単な説明がつけ加えられている。丁寧にラミネートがかけられたそれは、幻想的な空間とは少し似つかわしくなかった。
ペルシャ猫図書館:何かを知りたい、という知的好奇心を持った者のもとに切符が訪れます。片眼鏡をかけたペルシャ猫の図書館長が、あなたの求めている本を探し出してくれるでしょう。
——かわいい! 片眼鏡をかけている猫だなんて、かわいいに決まっている。でも、「〜者のもとに切符が訪れる」とは不思議な表現だ。確かに知らないうちに切符がカバンに入っていたけれど……。
アメリカンショートヘア市場:孤独で寂しさに溺れそうな者のもとに切符が訪れます。夜空の下、活気のある市場で声高に猫たちがおすすめの商品を紹介。明るく社交的なアメリカンショートヘアの案内猫が一緒にお買いものをしてくれます。
ミヌエット喫茶:悩みごとを誰にも相談できず、ひとりで抱えこんでいる者のもとに切符が訪れます。お茶目でフレンドリーなミヌエットのマダムがあなたの気分に合った料理と飲みものを振る舞い、明るく優しく話を聴いてくれるでしょう。
ほかにも、駅ごとのコンセプトが書かれている。どの駅も魅力的で、気になって仕方がない。自分が行くらしい「黒猫城」については、こんなことが書いてあった。
黒猫城:先行きに思い悩む者のもとに切符が訪れます。夜目のきく黒猫の女主人が、あなたの先を見通して、ちょっとした人生のアドバイスをしてくれるでしょう。
面白そうだ。どんなお城なんだろう、女主人はどんな猫なんだろう。わくわくが芽生えてくる。
一つひとつ丁寧に見てから、全体を俯瞰してみると、あることに気づく。7つの駅が北斗七星のかたちに並んでいる。なんておしゃれな列車なのだろう。
熱心に路線図を読んでいる間に、列車はアメリカンショートヘア市場前という駅に到着した。様子を見ようと窓に張りつくけれど、普通の駅の様相をしているだけで、特に変わった様子はない。誰かが降りているのかもしれないと思って注意深く観察するも、ひとが降りているところを見ることはできなかった。
このまたたび特急には私しか乗っていないのだろうか。
すぐに列車は走り出し、また淡い光の玉があふれる世界を徐々に浮かびはじめた。

先ほどの三毛猫車掌の声のアナウンスがひびき渡り、チリンチリンと鈴の音が鳴る。駅名がなんとも不思議で、どんな場所なのかが気になった。
またたび特急は駅のホームらしいところに滑りこみ、なめらかに停車する。ここがペルシャ猫図書館前らしい。好奇心から、仕切りを開けてみようとしたけれど、やっぱり動かなかった。車掌の言うとおり、終点まで行かなければならないのだろう。
「発車します。えー、次に停車いたしますのはー、アメリカンショートヘア市場前です。到着は約10分後です」
またもや不可思議な駅名が聞こえてくる。ほかにはどんな駅があるのだろう、と考えると、ポンっとテーブルの上に何かが現れた。
「ななな、なに!?」
おどろいて飛び上がってしまう。
おそるおそるそれを手にとると、どうやら路線図のようだった。またたび特急の停車駅それぞれに日本語で簡単な説明がつけ加えられている。丁寧にラミネートがかけられたそれは、幻想的な空間とは少し似つかわしくなかった。
ペルシャ猫図書館:何かを知りたい、という知的好奇心を持った者のもとに切符が訪れます。片眼鏡をかけたペルシャ猫の図書館長が、あなたの求めている本を探し出してくれるでしょう。
——かわいい! 片眼鏡をかけている猫だなんて、かわいいに決まっている。でも、「〜者のもとに切符が訪れる」とは不思議な表現だ。確かに知らないうちに切符がカバンに入っていたけれど……。
アメリカンショートヘア市場:孤独で寂しさに溺れそうな者のもとに切符が訪れます。夜空の下、活気のある市場で声高に猫たちがおすすめの商品を紹介。明るく社交的なアメリカンショートヘアの案内猫が一緒にお買いものをしてくれます。
ミヌエット喫茶:悩みごとを誰にも相談できず、ひとりで抱えこんでいる者のもとに切符が訪れます。お茶目でフレンドリーなミヌエットのマダムがあなたの気分に合った料理と飲みものを振る舞い、明るく優しく話を聴いてくれるでしょう。
ほかにも、駅ごとのコンセプトが書かれている。どの駅も魅力的で、気になって仕方がない。自分が行くらしい「黒猫城」については、こんなことが書いてあった。
黒猫城:先行きに思い悩む者のもとに切符が訪れます。夜目のきく黒猫の女主人が、あなたの先を見通して、ちょっとした人生のアドバイスをしてくれるでしょう。
面白そうだ。どんなお城なんだろう、女主人はどんな猫なんだろう。わくわくが芽生えてくる。
一つひとつ丁寧に見てから、全体を俯瞰してみると、あることに気づく。7つの駅が北斗七星のかたちに並んでいる。なんておしゃれな列車なのだろう。
熱心に路線図を読んでいる間に、列車はアメリカンショートヘア市場前という駅に到着した。様子を見ようと窓に張りつくけれど、普通の駅の様相をしているだけで、特に変わった様子はない。誰かが降りているのかもしれないと思って注意深く観察するも、ひとが降りているところを見ることはできなかった。
このまたたび特急には私しか乗っていないのだろうか。
すぐに列車は走り出し、また淡い光の玉があふれる世界を徐々に浮かびはじめた。




