翌日、私のシフトは十時から十九時までだった。一時間の休憩を入れて実働八時間。昨日はたくさん残業したので、溜まっていた仕事を片付けることができた。
ちなみに、朝七時入りの日は、娘は夫が保育園に連れて行ってくれることになっている。保育士の子どもは優先的に保育園に入れるようになっているが、我が子を自分の保育園で見ると要らぬ心配が増えるので、別の保育園で見てもらっている。なんとも皮肉なことだが、そうするしかないのだ。
夕真くんを教室で目にした私は、彼がカプセルトイを手にしていないところを見てほっとする。連絡帳を見ると、保護者から保育士への連絡欄は空欄になっていた。灰谷さんがきちんと読んでくれたのか不安になったが、夕真くんがカプセルトイを持っていないところを見ると、一応読んではくれているらしかった。
朝のあいさつを終えると、他の保育士たちと一緒に子どもたちを連れて園庭に出る。走ったり遊具で遊んだり、思い思いの遊びをさせてから教室に戻ると、泥だらけになった子どもたちの手を洗う作業が待っている。四歳なので自分でできる子がほとんどだが、それでももたもたしてしまうので、手伝えるところは手伝うようにしていた。
全員が手を洗って、給食の準備をしていたときだ。
一人の先生——綾瀬先生が「あれ?」と首を傾げていた。
「どうしたんですか、綾瀬先生」
綾瀬先生は私よりも十歳年上の女性だ。彼女自身、中学生のお子さんがいることもあり、子どもたちをあやすのがとても上手だ。そんな綾瀬先生のことを、私も尊敬していた。彼女は私を見て「夕真くんがね」と近くにいた彼の肩に触れていた。
「また人形を持ってきているみたいなの。確か昨日、花村先生が注意してくれたはずよね?」
「は、はい。連絡帳にも書いて、今朝持ってないことを確認したのですが」
「それが、鞄のポケットの中に入ってたのよお。本人が取り出してきて、また持ってきたんだってびっくりしちゃった」
「そうだったんですか。それは……すみません。私の確認不足です」
鞄のポケットまで確認していなかった。朝は夕真くんのお母さんに会っていないし、もうすこしよく確認しておくべきだった。
「いや、仕方ないわね。灰谷さんっていつも朝も夜も忙しそうでしょ? あんまり長く話せないでしょうし」
「はあ。じつはそうなんですよね。昨日のお迎えの時もちゃんと話せてなくて……」
ちなみに、朝七時入りの日は、娘は夫が保育園に連れて行ってくれることになっている。保育士の子どもは優先的に保育園に入れるようになっているが、我が子を自分の保育園で見ると要らぬ心配が増えるので、別の保育園で見てもらっている。なんとも皮肉なことだが、そうするしかないのだ。
夕真くんを教室で目にした私は、彼がカプセルトイを手にしていないところを見てほっとする。連絡帳を見ると、保護者から保育士への連絡欄は空欄になっていた。灰谷さんがきちんと読んでくれたのか不安になったが、夕真くんがカプセルトイを持っていないところを見ると、一応読んではくれているらしかった。
朝のあいさつを終えると、他の保育士たちと一緒に子どもたちを連れて園庭に出る。走ったり遊具で遊んだり、思い思いの遊びをさせてから教室に戻ると、泥だらけになった子どもたちの手を洗う作業が待っている。四歳なので自分でできる子がほとんどだが、それでももたもたしてしまうので、手伝えるところは手伝うようにしていた。
全員が手を洗って、給食の準備をしていたときだ。
一人の先生——綾瀬先生が「あれ?」と首を傾げていた。
「どうしたんですか、綾瀬先生」
綾瀬先生は私よりも十歳年上の女性だ。彼女自身、中学生のお子さんがいることもあり、子どもたちをあやすのがとても上手だ。そんな綾瀬先生のことを、私も尊敬していた。彼女は私を見て「夕真くんがね」と近くにいた彼の肩に触れていた。
「また人形を持ってきているみたいなの。確か昨日、花村先生が注意してくれたはずよね?」
「は、はい。連絡帳にも書いて、今朝持ってないことを確認したのですが」
「それが、鞄のポケットの中に入ってたのよお。本人が取り出してきて、また持ってきたんだってびっくりしちゃった」
「そうだったんですか。それは……すみません。私の確認不足です」
鞄のポケットまで確認していなかった。朝は夕真くんのお母さんに会っていないし、もうすこしよく確認しておくべきだった。
「いや、仕方ないわね。灰谷さんっていつも朝も夜も忙しそうでしょ? あんまり長く話せないでしょうし」
「はあ。じつはそうなんですよね。昨日のお迎えの時もちゃんと話せてなくて……」



