S「えっと、突然電話してきて何かと思えば……カプセルトイのことですか? はあ。そうそう。その件について、こちらも聞きたいことがあったのよ。先生、Yくんが私物のカプセルトイを持ってきてるのを容認してるんですってね。え、容認はしてない? じゃあなんで何度もYくんはカプセルトイを持ってきてるんでしょうか。注意しても聞かなかったってこと? ああ、そういえばYさんのお母さんってシングルでお忙しいんでしたっけ。でもまあ、それとこれとは話が別ですよね。ルールはルールですから」

S「で、そのカプセルトイを見たことがあるかって? うーん、あったようなないような……。娘が言うには、黄土色の人形だそうですね。あ、そういえば昔、祖父に言われたことがあったかも。この地域のどこかに“願いを叶えるカプセルトイ”があるって。でも、実は願いを叶えるんじゃなくて、カプセルトイを持っていると呪われるっていう噂もあって。本当のところはどっちなんだろうってずっと疑問には思ってました。でもそんな些細な噂話なんて、目の前の最新ゲームやおもちゃに比べたら、楽しくもなんともないし、すぐ忘れちゃいました。そのままこうして大人になってずーっと忘れたんですけど、言われてみればそんな噂あったなって今思い出しましたよ」

S「そのカプセルトイがどこにあるか……ですか。はあ。私が子どもの頃からあるってことはかなり古いカプセルトイでしょ。だからもうほとんど残ってないんじゃないですか。でもYくんが持ってるってことは、この付近になるのかな……。ああ、そうだ。あそこはどうしょう? 商店街に、小さなおもちゃ屋さんがあるでしょう。そこ、今もまだあったんじゃないかな。ひとが入ってるところなんてほとんど見たことがないけど。その店の前にガチャガチャの機械があったと思います。一度見に行ってみたらどうですか? すみません、もう夕飯なので、そろそろいいですか。娘がお腹すいたってうるさいので。失礼します」