スレッドはそこで終わっていた。そんなに長くは続いておらず、これ自体それほど話題に上っていないようだった。でも、「呪いのカプセルトイ」の話は少なからず私の胸に影を落とした。
スレッドの中にあったオカルト雑誌のURLをタップしてみる。だが、「ページが見つかりませんでした」という文言が出てきてため息をつく。
スレ自体五年前のものだから、リンク切れを起こしていても不思議ではない。
ふと顔を上げると、スマホを凝視していた私を他の先生たちが怪訝そうに見つめているのに気づいてはっとスマホをしまう。
仕事を忘れて調べ物にのめり込んでしまった。園長から「花村さん、最近ずっと心ここにあらずって感じだけど大丈夫?」と呆れられた。
「すみません。いろいろと立て込んでいて。でももう大丈夫です」
「そう。それならいいんだけどね。なのはな組の保護者から最近クレームが多いから」
「夕真くんの件でしたら、私の監督不行届ですみません。気をつけます」
「いや、あなたのせいってわけじゃないけどね。頼んだわよ」
園長はたぶん、これ以上保護者から小言を頂戴するのが嫌なのだろう。気持ちはよくわかる。でも、私も綾瀬先生もいっぱいいっぱいになりながら対処している。人形は捨てたことだしもう大丈夫……と信じよう。
今日は夕方に仕事を上がれたので、その足で美奈を迎えに行く。美奈はいつも元気に「おかえりー!」と私を迎えてくれる。私が保育士であることは美奈の保育園の先生も知っているので、「いつもお疲れ様です」とお互いに労い合う。
「ママ、“願いを叶えるカプセルトイ”って知ってる?」
美奈が私を見上げながらそう聞いてきたのは、保育園からの帰り道を歩いている時だった。
「……え?」
「きょうね、きょうこちゃんが言ってたの。“願いを叶えるカプセルトイを回したんだ”って。美奈もやりたぁーい」
不意に、昼間にネットで調べたスレのことがフラッシュバックする。
願いを叶えるカプセルトイ。
だが、その実態は“呪いのカプセルトイ”である——。
「美奈、その話はやめなさい」
「え、なんで?」
自分でも思った以上に暗い声が響いて、隣を歩いていた美奈が困惑気味に私を見上げる。
「そのカプセルトイはすっごく高いからママはやらせてあげられない。きょうこちゃんがカプセルトイを持ってきても、絶対取ったり触ったりしちゃだめよ」
「え〜ケチ〜」
ケチ、なんてどこで覚えてきたのか、頬を膨らませる美奈は納得いかない様子だった。でもそれでいい。得体の知れないカプセルトイを娘が手にしたらと思うと気が気でなかった。
スレッドの中にあったオカルト雑誌のURLをタップしてみる。だが、「ページが見つかりませんでした」という文言が出てきてため息をつく。
スレ自体五年前のものだから、リンク切れを起こしていても不思議ではない。
ふと顔を上げると、スマホを凝視していた私を他の先生たちが怪訝そうに見つめているのに気づいてはっとスマホをしまう。
仕事を忘れて調べ物にのめり込んでしまった。園長から「花村さん、最近ずっと心ここにあらずって感じだけど大丈夫?」と呆れられた。
「すみません。いろいろと立て込んでいて。でももう大丈夫です」
「そう。それならいいんだけどね。なのはな組の保護者から最近クレームが多いから」
「夕真くんの件でしたら、私の監督不行届ですみません。気をつけます」
「いや、あなたのせいってわけじゃないけどね。頼んだわよ」
園長はたぶん、これ以上保護者から小言を頂戴するのが嫌なのだろう。気持ちはよくわかる。でも、私も綾瀬先生もいっぱいいっぱいになりながら対処している。人形は捨てたことだしもう大丈夫……と信じよう。
今日は夕方に仕事を上がれたので、その足で美奈を迎えに行く。美奈はいつも元気に「おかえりー!」と私を迎えてくれる。私が保育士であることは美奈の保育園の先生も知っているので、「いつもお疲れ様です」とお互いに労い合う。
「ママ、“願いを叶えるカプセルトイ”って知ってる?」
美奈が私を見上げながらそう聞いてきたのは、保育園からの帰り道を歩いている時だった。
「……え?」
「きょうね、きょうこちゃんが言ってたの。“願いを叶えるカプセルトイを回したんだ”って。美奈もやりたぁーい」
不意に、昼間にネットで調べたスレのことがフラッシュバックする。
願いを叶えるカプセルトイ。
だが、その実態は“呪いのカプセルトイ”である——。
「美奈、その話はやめなさい」
「え、なんで?」
自分でも思った以上に暗い声が響いて、隣を歩いていた美奈が困惑気味に私を見上げる。
「そのカプセルトイはすっごく高いからママはやらせてあげられない。きょうこちゃんがカプセルトイを持ってきても、絶対取ったり触ったりしちゃだめよ」
「え〜ケチ〜」
ケチ、なんてどこで覚えてきたのか、頬を膨らませる美奈は納得いかない様子だった。でもそれでいい。得体の知れないカプセルトイを娘が手にしたらと思うと気が気でなかった。



