今日は朝七時から仕事が始まった。美奈は夫が保育園に送っていってくれた。
 朝が早い日は美奈に寂しそうな顔をされるから、ちょっと胸が痛い。我が子ではなく他の子の面倒を見なければならないことに罪悪感を覚えつつ、それでも私は職場へと急いだ。

「え、今日はお休みなんですか」

 普段なら夕真くんが朝一でやってくるのだが、今日はなかなか来ないなと思っていると、園長から欠席連絡が来ていると伝えられた。

「家の用事なんだって。急用ができたとかって」

「急用……そうなんですね」

 働き詰めの灰谷さんに急用ができるなんて。身内に不幸でもあったのだろうか。だとすればそう連絡が来ると思ったのだが、具体的に伝えたくないというひともいるだろう。

「あとねえ、ちょっと言いづらいんだけど、他の保護者の方から数件、クレームが来てるのよ」

 園児たちに聞こえないように、園長先生がこっそりと私に耳打ちをして教えてくれる。

「クレーム、ですか。どんな内容です?」

「それが、夕真くんの持ってきてたおもちゃの件で……。私は現場にいなかったから、花村先生のほうであとで確認してもらえないかしら」

「はあ、分かりました」

 うちの園では連絡帳のほかに、連絡アプリを使って保護者と保育士がオンラインでメッセージを送れるようになっている。欠席連絡もそのアプリを通してすることができて、気軽に使えると評判だった。
 そして、気軽に使えるぶん、保育園の教育方針にアプリを使って物申してくる保護者の方もちらほらいるわけで。建設的な意見もあるので、もちろん無碍にしたりしない。きちんと内容を見て、対応を考えるのだ。

 お昼寝の時間にさっそく件のメッセージに目を通していった。