夕真くんの頭を愛しそうに撫でるお母さんは、心底ほっとした様子だった。昨日はどういうわけか、お母さんの身長が低く見えたけれど、今日は普通だ。勘違いだろうと、無理やり自分を納得させた。
ただ、心なしか顔色は悪いように見える。仕事と育児で疲れが溜まっているのだろうか。すこし心配になった。
「あ、あの、灰谷さん」
すぐに去っていこうとする夕真くんのお母さんを後ろから呼び止める。彼女は「なんでしょうか」と振り返った。
「連絡帳にも書いたのですが、じつは昨日から夕真くんが人形を持ってきてるようなんです。カプセルトイの。私物は持ってきてはいけないルールなので、明日からはご自宅に置いてきていただけないでしょうか? 他の子たちが気になるようで、取られたりなくしたりしたら大変なので……」
私の注意を聞いたその刹那、夕真くんのお母さんははっと表情をこわばらせ、どういうわけかきょろきょろと辺りを見回したあと、「すみません!」と勢いよく頭を下げた。
「昨日連絡帳を見て、持ってこないように夕真にも言ったつもりなのですが、今日も持ってきていたのですね……。本当に申し訳ありません。明日から持ってこないように注意します」
心底申し訳なさそうに何度も頭を下げる夕真くんのお母さん。私は、逆に自分が見当違いな指摘をしているような気持ちにさせられて、「いえ、ご注意いただけるのでしたらいいんです」と自分の中で熱が引いていくのを感じた。
良かった……やっぱり灰谷さんは良いひとだ。たぶん、仕事と育児の疲れが溜まっているせいで、カプセルトイが鞄に入っているかどうかというところまで気が回らなかったのだろう。明日からは注意してくれるはずだ。夕真くんに「さようなら」と告げると、彼はなんだか寂しそうに「ばいばい」と小さく手を振ってくれた。
ただ、心なしか顔色は悪いように見える。仕事と育児で疲れが溜まっているのだろうか。すこし心配になった。
「あ、あの、灰谷さん」
すぐに去っていこうとする夕真くんのお母さんを後ろから呼び止める。彼女は「なんでしょうか」と振り返った。
「連絡帳にも書いたのですが、じつは昨日から夕真くんが人形を持ってきてるようなんです。カプセルトイの。私物は持ってきてはいけないルールなので、明日からはご自宅に置いてきていただけないでしょうか? 他の子たちが気になるようで、取られたりなくしたりしたら大変なので……」
私の注意を聞いたその刹那、夕真くんのお母さんははっと表情をこわばらせ、どういうわけかきょろきょろと辺りを見回したあと、「すみません!」と勢いよく頭を下げた。
「昨日連絡帳を見て、持ってこないように夕真にも言ったつもりなのですが、今日も持ってきていたのですね……。本当に申し訳ありません。明日から持ってこないように注意します」
心底申し訳なさそうに何度も頭を下げる夕真くんのお母さん。私は、逆に自分が見当違いな指摘をしているような気持ちにさせられて、「いえ、ご注意いただけるのでしたらいいんです」と自分の中で熱が引いていくのを感じた。
良かった……やっぱり灰谷さんは良いひとだ。たぶん、仕事と育児の疲れが溜まっているせいで、カプセルトイが鞄に入っているかどうかというところまで気が回らなかったのだろう。明日からは注意してくれるはずだ。夕真くんに「さようなら」と告げると、彼はなんだか寂しそうに「ばいばい」と小さく手を振ってくれた。



