笑顔の角度は13度 ― SMILE_MASTER.mov

ランクイン履歴

総合16位(2025/10/12)

ミステリー1位(2025/10/21)

ミステリー

笑顔の角度は13度 ― SMILE_MASTER.mov
作品番号
1761331
最終更新
2025/09/20
総文字数
24,832
ページ数
4ページ
ステータス
完結
いいね数
217
ランクイン履歴

総合16位(2025/10/12)

ミステリー1位(2025/10/21)

「上歯は六本。口角は二ミリ。
笑顔の角度は……十三度。」

──明るいBGM、白バックの企業理念、
新人の“良い例・悪い例”、
誕生日に店内で歌う合唱。

その幸福のフォーマットに、
はじめは「音」だけが、ずれる。
カチ、カチ、カチ……120bpm。
誰も打っていないはずのクリックが、笑顔を刻む。

編集者がタイムラインを拡大すると、
存在しないはずのクリップ名が瞬く。
SMILE_MASTER.mov
参照フレームはわずか二枚。
削除すると、翌朝のクラウド同期で“戻る”。

閉店後のCCTV。
誰もいない店内で、揃ってお辞儀をする影。
鏡面だけが、一拍遅れて笑う。
合唱には見えない拍手が混ざる。

「大丈夫、これは“標準化”だから。」

本社の通達はやわらかく、
KPIのグラフは右肩上がり。
“幸福の運用”が、逃げ道をふさぐ。

そして検証映像のラストに、編集者は実験を仕掛ける。
観客の表情ログを重ね、あなたの口角が
0.6ミリ上がる瞬間を映すために。

再生を止めるのは、いったい誰だ?
あなたか。
規格か。
それとも……笑顔そのものか。
あらすじ
新人研修のプロモ映像は、誰かの“理想の笑顔”でできている。
タイムラインに残る2フレーム、合唱に混じるクリック音、鏡面に遅れて映る口角。
削除しても戻ってくる「標準笑顔(2013)」は、いまもあなたの表情を採点している。
再生を止められないのは、会社のためか、映像のためか――。

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