頭を使うお菓子タイムはいかが?

 真紀がぼんやりと二人を見送っていると、右隣を歩いている奏が気まずそうに言った。

「……あれ、私が見た男子高校生」
「え?」

 真紀と穂香が慌てて振り返ってカップルを見ると、カップルは楽し気に話しながら西口に向かって歩いて行っている。

「はあ? カップルは人ごみに飲み込まれれば良いんだよ」

 これまで一度たりとも見たことが無いほど険しい顔をしながら、穂香が吐き捨てるように言った。

「穂香、顔」

 苦笑した奏がなだめるように言っても、穂香の顔の形が変わることはない。普段が穏やかにいるだけに、この変貌具合に真紀は目を瞠った。

「私たちは受験勉強が彼氏じゃん」

 慰めるように奏が穂香の肩を軽く叩いた。

「全カップルは受験生の前に現れるな」

 何かを祈祷するかのように穂香が大きく柏手を打って、がっちりと両手を組んで祈った。誰に祈っているのかは、この際聞かないでおくのが正解に違いない。

 穂香の肩を両側から、真紀と奏に軽く叩いて、三人は特段の意味もなく肩を組んで帰宅の途につくことにした。