時計を見れば一時間くらいお菓子タイムに使ってしまっていた。本当ならば、受験生たるもの、この一時間さえ惜しむように勉強しないといけない。だけど、受験勉強とは関係がない時間のように思えるが、頭を使ったのだから、三人とも満面の笑みでなぜか頷きあった。そこからは食堂が締まるまでの三時間みっちりと受験勉強に精を出すことができた。
真紀は自分で課したノルマもほとんどこなすところができた。外を見れば、空の色がオレンジを帯び始めていた。
一息ついていると、蛍の光がスピーカーから流れ始めた。誰ともなく声をかけることもなく、それぞれが鞄に勉強道具と残ったお菓子を詰め込んだ。
暑さが厳しいままの外に出るなり、辟易した。暑さのピークが見えないまま過ごす、夏休みは受験一色だ。エアコンが効いた場所を探さねばやっていられない。
暑さに負けないように日陰を選びながら歩き、最寄りのLRTの駅に向かってゆっくり歩く。学校を出るなり、汗はあっと言う間に出てきたので、ポケットタオの活躍ぶりは湿り具合だけでもわかる。
三人で明日の講座の予定や勉強の進み具合など、受験生らしいたわいもない話をしながら駅に着くと、浴衣を着た人たちが目に付いた。
真紀はふとお菓子タイムで話し、自分たちが出した結論が、果たしてあっているのか、気になった。
考えていたことは三人とも同じだったようで、互いに顔を見合わせ、苦笑してからLRTに乗り込んだ。色とりどりの浴衣を着ている人を横目に見てから、自分達の味気ない制服姿に、少しだけ真紀は複雑な気持ちになった。
受験生たるもの、勉強を疎かにしてはならない。それはわかっている。だけど、目の前にこれから夏祭りに向かう人たちを見ていると、心の端で羨ましいと思わずにいられなかった。
真紀の両隣にいた奏、穂香も同じ気持ちだったようで、何も言わずにリュックに入れていた英単語帳や古語単語帳を手に取り、思い思いに開いて、黙ったまま単語帳に目を移した。
規則正しい揺れに身を預けながらいると、最後尾に乗ったせいかジャラジャラと小銭に両替する音が真紀の耳に入ってきた。ぱっと顔を上げると、三人同時に顔が上がって目が合った。
思うところは同じだったようで、互いに肩をすくめあった。終点まであと数駅のアナウンスが聞こえた。もう一度単語帳に目線を戻して、真紀は単語帳に書かれている英単語を一つ一つ頭に入れ直していく。
最終駅のアナウンスが聞こえ、顔を上げるとLRTはホームにゆっくりと到着した。もみくちゃにされながら車両から出ると、ホームはいつもよりもにぎわっているように見えた。
友達同士で夏祭りに行く人、恋人同士で行く人、様々だ。だけど、その人たちはこれから待ってる楽しみに思いを馳せているようにしていた。
宇都宮で開催される夏祭り、ふるさと宮祭りは八月の第一土曜日と日曜日に開催される。宇都宮駅西側で開催されるお祭りは、どこから人が集まってくるのだろうかと思うほど、ホームだけではなく駅のコンコースに人がいた。普段は車で動いているはずの人が、駅にあつまり、ゆっくりと二荒山神社に向かって歩いて行っている。
お祭りの雰囲気にのまれながら、真紀たちはゆっくりと西口から二荒山神社に続く大通りに向かった。ロータリーの上から、蓋荒山神社に向かって大勢の人がゆっくりと移動しているのをフェンス越しにもたれかかりながら見た。
昼から開催されているせいか、すでに大通りから先に歩いている人が多い。二日間で五十八万人が訪れるこのお祭りは、屋台が多い。大通りだけではなく、その裏通りにも店が並び、お腹を空かせた人たちは思い思いの食べ物を買う。
「いいなぁ、お祭り」
真紀は自分で課したノルマもほとんどこなすところができた。外を見れば、空の色がオレンジを帯び始めていた。
一息ついていると、蛍の光がスピーカーから流れ始めた。誰ともなく声をかけることもなく、それぞれが鞄に勉強道具と残ったお菓子を詰め込んだ。
暑さが厳しいままの外に出るなり、辟易した。暑さのピークが見えないまま過ごす、夏休みは受験一色だ。エアコンが効いた場所を探さねばやっていられない。
暑さに負けないように日陰を選びながら歩き、最寄りのLRTの駅に向かってゆっくり歩く。学校を出るなり、汗はあっと言う間に出てきたので、ポケットタオの活躍ぶりは湿り具合だけでもわかる。
三人で明日の講座の予定や勉強の進み具合など、受験生らしいたわいもない話をしながら駅に着くと、浴衣を着た人たちが目に付いた。
真紀はふとお菓子タイムで話し、自分たちが出した結論が、果たしてあっているのか、気になった。
考えていたことは三人とも同じだったようで、互いに顔を見合わせ、苦笑してからLRTに乗り込んだ。色とりどりの浴衣を着ている人を横目に見てから、自分達の味気ない制服姿に、少しだけ真紀は複雑な気持ちになった。
受験生たるもの、勉強を疎かにしてはならない。それはわかっている。だけど、目の前にこれから夏祭りに向かう人たちを見ていると、心の端で羨ましいと思わずにいられなかった。
真紀の両隣にいた奏、穂香も同じ気持ちだったようで、何も言わずにリュックに入れていた英単語帳や古語単語帳を手に取り、思い思いに開いて、黙ったまま単語帳に目を移した。
規則正しい揺れに身を預けながらいると、最後尾に乗ったせいかジャラジャラと小銭に両替する音が真紀の耳に入ってきた。ぱっと顔を上げると、三人同時に顔が上がって目が合った。
思うところは同じだったようで、互いに肩をすくめあった。終点まであと数駅のアナウンスが聞こえた。もう一度単語帳に目線を戻して、真紀は単語帳に書かれている英単語を一つ一つ頭に入れ直していく。
最終駅のアナウンスが聞こえ、顔を上げるとLRTはホームにゆっくりと到着した。もみくちゃにされながら車両から出ると、ホームはいつもよりもにぎわっているように見えた。
友達同士で夏祭りに行く人、恋人同士で行く人、様々だ。だけど、その人たちはこれから待ってる楽しみに思いを馳せているようにしていた。
宇都宮で開催される夏祭り、ふるさと宮祭りは八月の第一土曜日と日曜日に開催される。宇都宮駅西側で開催されるお祭りは、どこから人が集まってくるのだろうかと思うほど、ホームだけではなく駅のコンコースに人がいた。普段は車で動いているはずの人が、駅にあつまり、ゆっくりと二荒山神社に向かって歩いて行っている。
お祭りの雰囲気にのまれながら、真紀たちはゆっくりと西口から二荒山神社に続く大通りに向かった。ロータリーの上から、蓋荒山神社に向かって大勢の人がゆっくりと移動しているのをフェンス越しにもたれかかりながら見た。
昼から開催されているせいか、すでに大通りから先に歩いている人が多い。二日間で五十八万人が訪れるこのお祭りは、屋台が多い。大通りだけではなく、その裏通りにも店が並び、お腹を空かせた人たちは思い思いの食べ物を買う。
「いいなぁ、お祭り」



