奏の片頬が上がっている。何かをたくらんでいるように見えた。
「何それ?」
奏での提案に、瞬きをはっきりと繰り返して穂香は首を傾げた。真紀も同じように傾げる。
「ちょっと今日気になった人を見てね」
ゴソゴソと学校指定の黒色のリュックからラムネを取り出して奏が話し始める。ラムネの包装には『勉強やお仕事のお供に。糖分注入用』と書かれていた。ラムネ好きの奏には珍しく、可愛らしい風鈴の模様が書かれている包装だった。ラムネを一つ口に放りこんだ奏を見て、真紀と穂香も思い思いのお菓子をカバンから取り出す。奏が美味しそうに食べているのを見ると、どうやらこの時間はクッキーとかお菓子を食べても良いらしい。
LRTの駅から学校に来るまでにあるコンビニに寄ってきて買ったお菓子は、お菓子タイムには欠かせないお供だ。各々好きなお菓子は、受験勉強で疲れ切っている自分たちの脳へのささやかなご褒美になっている。
だけど、このご褒美は三年生になってからというものの、勉強に精を出しているせいか、お菓子を食べる頻度が多くなっている気がする。
「LRTで私だけ先頭に乗っちゃったじゃん?」
夏休み真っただ中だというのに、人は確かに多かった。いつもならば別れて別の車両に乗ることは無い。穂香が頷きながらお菓子の封を切った。
「確かに今日はめちゃ混んでたよね。真紀とあたしは隣に行かなくちゃいけなかったし」
「そのとき、やけにジャラジャラ両替する人がいたんだ」
「両替機なんてあったっけ?」
穂香がぎゅっと目を瞑って思い出そうとしている。
「ほら、一番前と後ろにあるじゃん」
真紀が言うと、奏は頷き、穂香は思い出せないのか首を傾げていた。
普段からLRTを使っていると、交通系ICカードを定期にしているからか、両替機をすぐに思い出せない。乗車するときに交通系ICカードを使う人がほとんどだけど、普段からLRTや電車を使うことがなければ、現金払いの方が良いのかもしれない。
「その両替機を占拠して両替機している人がいたんだよね。しかも変なこと言ってたし」
「何?」
奏の話の仕方に興味をそそられ、真紀は訊く。穂香もクッキーを食べながら、じっと奏の言葉を待った。バタークッキーと書かれた包装には『全国民が喜んだ!』と本当のような嘘のようなことが書かれていた。穂香はパッケージデザインや珍しいお菓子に目がない。今日は妙な売り文句が書かれたバタークッキーが気になったみたいだ。
穂香はピンク色のラムネを一つ取り出して、口に放り込む。やわらかいタイプではないらしく、ガリガリと音をさせながら食べ終えてから口を開いた。
「百円が少ない。これじゃ困るんだよなぁ」
それだけ言うと奏はラムネをもう一つ食べる。今度は水色だった。一体何色あるんだろうか。ラムネを口に含めている香菜での次の言葉を待てど暮らせど、次の言葉はなかなか出てこない。
「奏、それだけなの?」
「何それ?」
奏での提案に、瞬きをはっきりと繰り返して穂香は首を傾げた。真紀も同じように傾げる。
「ちょっと今日気になった人を見てね」
ゴソゴソと学校指定の黒色のリュックからラムネを取り出して奏が話し始める。ラムネの包装には『勉強やお仕事のお供に。糖分注入用』と書かれていた。ラムネ好きの奏には珍しく、可愛らしい風鈴の模様が書かれている包装だった。ラムネを一つ口に放りこんだ奏を見て、真紀と穂香も思い思いのお菓子をカバンから取り出す。奏が美味しそうに食べているのを見ると、どうやらこの時間はクッキーとかお菓子を食べても良いらしい。
LRTの駅から学校に来るまでにあるコンビニに寄ってきて買ったお菓子は、お菓子タイムには欠かせないお供だ。各々好きなお菓子は、受験勉強で疲れ切っている自分たちの脳へのささやかなご褒美になっている。
だけど、このご褒美は三年生になってからというものの、勉強に精を出しているせいか、お菓子を食べる頻度が多くなっている気がする。
「LRTで私だけ先頭に乗っちゃったじゃん?」
夏休み真っただ中だというのに、人は確かに多かった。いつもならば別れて別の車両に乗ることは無い。穂香が頷きながらお菓子の封を切った。
「確かに今日はめちゃ混んでたよね。真紀とあたしは隣に行かなくちゃいけなかったし」
「そのとき、やけにジャラジャラ両替する人がいたんだ」
「両替機なんてあったっけ?」
穂香がぎゅっと目を瞑って思い出そうとしている。
「ほら、一番前と後ろにあるじゃん」
真紀が言うと、奏は頷き、穂香は思い出せないのか首を傾げていた。
普段からLRTを使っていると、交通系ICカードを定期にしているからか、両替機をすぐに思い出せない。乗車するときに交通系ICカードを使う人がほとんどだけど、普段からLRTや電車を使うことがなければ、現金払いの方が良いのかもしれない。
「その両替機を占拠して両替機している人がいたんだよね。しかも変なこと言ってたし」
「何?」
奏の話の仕方に興味をそそられ、真紀は訊く。穂香もクッキーを食べながら、じっと奏の言葉を待った。バタークッキーと書かれた包装には『全国民が喜んだ!』と本当のような嘘のようなことが書かれていた。穂香はパッケージデザインや珍しいお菓子に目がない。今日は妙な売り文句が書かれたバタークッキーが気になったみたいだ。
穂香はピンク色のラムネを一つ取り出して、口に放り込む。やわらかいタイプではないらしく、ガリガリと音をさせながら食べ終えてから口を開いた。
「百円が少ない。これじゃ困るんだよなぁ」
それだけ言うと奏はラムネをもう一つ食べる。今度は水色だった。一体何色あるんだろうか。ラムネを口に含めている香菜での次の言葉を待てど暮らせど、次の言葉はなかなか出てこない。
「奏、それだけなの?」



