すべてを食べ終え片付けも終えた後に律先輩とのんびり駄弁っていると、突然扉がノックされた。
そのまま開かれた扉の前には、見知らぬ男性が立っている。
「こんにちは」
スーツを身に纏ったその人は、一言で言うと「出来る男」って感じだった。凛とした表情でスタイリッシュな紺のスーツを着こなし、よく似合う上品な腕時計をつけている。
歳はそんなに変わらないように見えるけど、嫌でも社会人と学生の差を感じさせられた。
「えっと……どちら様でしょうか」
「あぁ、僕は」
その人が何か言いかけた時、横から律先輩が「わぁ!」と大声を上げた。
「先輩じゃん! 久しぶりー。すっかり社会人だし! ハルくん、この人は大河内さん。ここのOBだよ」
「去年卒業した大河内です。よろしく」
「山村です」
中に入ってきた大河内さんは俺に手を差し出した。その手を握ると、優しく握り返される。
「律に後輩がいるなんて感慨深いなあ。山村くん、石橋研はどう? 何か困っていることはない? 教授とか律が煩くない?」
大河内さんが微笑むと、キリッとした目がふにゃりと細まった。それだけで嬉しくなる自分がいる。
この人、絶対人たらしだ。律先輩とは別ベクトルの。
……律先輩が好きになった理由も分かる気がする。
「とっても良い研究室です。お二人とも良くしてくれるので」
「本当に? それはきっと山村くんが良い子だからだね。良い後輩が出来て僕も嬉しいよ」
「いや、そんな……」
初対面の人に面と向かって褒められて顔が熱くなる。何照れているだ、俺は。
この人は律先輩の――。
「今日は結婚の報告に来たんだけど、石橋教授の部屋に行ったら不在だったからここに顔を出したんだ」
大河内さんは左手をひらひらと振った。薬指には指輪がキラリと光っている。
「それは、えっと、おめでとうございます」
け、結婚!?
大声を出さなかった自分を褒めたい。
相手は相思相愛だったっていう彼女だろうか。
じゃあ……律先輩は?
思わず律先輩の方を見ようとしたその時――。
そのまま開かれた扉の前には、見知らぬ男性が立っている。
「こんにちは」
スーツを身に纏ったその人は、一言で言うと「出来る男」って感じだった。凛とした表情でスタイリッシュな紺のスーツを着こなし、よく似合う上品な腕時計をつけている。
歳はそんなに変わらないように見えるけど、嫌でも社会人と学生の差を感じさせられた。
「えっと……どちら様でしょうか」
「あぁ、僕は」
その人が何か言いかけた時、横から律先輩が「わぁ!」と大声を上げた。
「先輩じゃん! 久しぶりー。すっかり社会人だし! ハルくん、この人は大河内さん。ここのOBだよ」
「去年卒業した大河内です。よろしく」
「山村です」
中に入ってきた大河内さんは俺に手を差し出した。その手を握ると、優しく握り返される。
「律に後輩がいるなんて感慨深いなあ。山村くん、石橋研はどう? 何か困っていることはない? 教授とか律が煩くない?」
大河内さんが微笑むと、キリッとした目がふにゃりと細まった。それだけで嬉しくなる自分がいる。
この人、絶対人たらしだ。律先輩とは別ベクトルの。
……律先輩が好きになった理由も分かる気がする。
「とっても良い研究室です。お二人とも良くしてくれるので」
「本当に? それはきっと山村くんが良い子だからだね。良い後輩が出来て僕も嬉しいよ」
「いや、そんな……」
初対面の人に面と向かって褒められて顔が熱くなる。何照れているだ、俺は。
この人は律先輩の――。
「今日は結婚の報告に来たんだけど、石橋教授の部屋に行ったら不在だったからここに顔を出したんだ」
大河内さんは左手をひらひらと振った。薬指には指輪がキラリと光っている。
「それは、えっと、おめでとうございます」
け、結婚!?
大声を出さなかった自分を褒めたい。
相手は相思相愛だったっていう彼女だろうか。
じゃあ……律先輩は?
思わず律先輩の方を見ようとしたその時――。



