それから教授や就活支援室を訪問しまくった。面接の練習もやり直し、研究発表の練習にも力を入れた。
すき間時間には企業研究や業界のニュースを読みふけっていた。必修講義で会った健太郎には「山村の目が本気だ……!」とかなり驚かれた。
それはほんの数週間の間だったけど、受験の時よりも頭をフル回転させていたと思う。
そうして俺は、第一志望の最終面接の日を迎えた。
「次の方、どうぞ」
「失礼します」
もう、やるべき事はやった。正直に、思ったことを話せば良い。
もし……もし落ちたって、まだまだ企業はたくさんあるんだから大丈夫。
俺は脳内で自分を鼓舞すると、面接会場に足を踏み入れた。
◇◇◇
最終面接から一週間後、俺が講義棟を歩いていると遠くに石橋教授を見かけた。
俺は慌てて駆け寄って声をかけた。
「教授!」
「おや山村くん。どうかしたかい?」
「俺っ、内定出ました! 第一志望!」
つい先程、合格の電話をもらったばかりだった。
今から報告に行こうかと思っていた時に教授を見かけたものだから、思わず声をかけてしまったのだ。
教授は目を細めて手を差し伸べてきた。
俺がその手を握ると力強く握り返される。
「おめでとう。山村くんなら大丈夫だと思っていたよ」
「ありがとうございます。教授にアドバイスをいただいたおかげです」
「ははは、僕は大したことをしてないよ。全部山村くんの頑張りだ」
こうして教授と話していると、六月のあの日を思い出す。
俺が初めて石橋研究室を訪れたあの日を。
「桜庭くんには伝えた?」
「今から研究室に行って伝えます」
「きっと飛び上がって喜ぶだろうね。僕も見に行きたいけれど、今から会議なんだ。後でどんな様子だったか教えてよ」
「もちろんです!」
律先輩はどんな反応をするかな。
きっと自分のことみたいに喜んでくれる。
色々アドバイスをくれたし、散々お世話になったんだから、今度ちゃんとしたお礼を贈ろうかな。
そんなことを考えて研究室の扉を開けた。
「律先輩っ!」
「ハルくん? やっほー」
「内定、出ました」
早く言いたくて、部屋に入ってすぐに告げる。
律先輩は一瞬だけきょとんとしていたけど、次第に目を見開いた。
「え? ほ、本当? 内定もらえたの?」
「はいっ、さっき電話がかかってきて、それで内定をもらえてっ……うわっ! ちょ、ちょっと律先輩、苦しい、です」
律先輩はこちらに駆け寄ってくると、痛いくらいに俺を抱きしめた。握りつぶされそうなくらい強く。
「やったね」
律先輩の声はとても小さくて震えていた。
「あの」
「すごい……すごいよ。ハルくん頑張ったね。おめでとう」
抱きしめられたまま上から降ってくる涙声に、だんだんと俺の目頭が熱くなってくる。
「律先輩のおかげです。本当に、ありがとうございました」
お互いの顔が見えなくて良かった。俺の顔はきっと酷くて、見せられない顔をしていたから。
「お祝いしなきゃだね」
「お祝いなんて……むしろ俺が律先輩にお礼をしなきゃいけないですよ」
「あ、じゃあさ」
律先輩はガバっと身体を離してそのまま肩をガシッと掴んできた。
「一緒にご飯作ろう! 俺はハルくんにお祝いご飯。ハルくんは俺にお礼ご飯。作りっこしよう」
「それっていつもと一緒ですよね?」
「分かってないなぁ。いつもと同じだけど、ちょっとトクベツってのが良いんでしょ」
「ははっ、分かりました。じゃあ美味しいやつ頼みます」
律先輩は目元を赤くしたまま、「オッケー」とくしゃくしゃの顔で笑っていた。
すき間時間には企業研究や業界のニュースを読みふけっていた。必修講義で会った健太郎には「山村の目が本気だ……!」とかなり驚かれた。
それはほんの数週間の間だったけど、受験の時よりも頭をフル回転させていたと思う。
そうして俺は、第一志望の最終面接の日を迎えた。
「次の方、どうぞ」
「失礼します」
もう、やるべき事はやった。正直に、思ったことを話せば良い。
もし……もし落ちたって、まだまだ企業はたくさんあるんだから大丈夫。
俺は脳内で自分を鼓舞すると、面接会場に足を踏み入れた。
◇◇◇
最終面接から一週間後、俺が講義棟を歩いていると遠くに石橋教授を見かけた。
俺は慌てて駆け寄って声をかけた。
「教授!」
「おや山村くん。どうかしたかい?」
「俺っ、内定出ました! 第一志望!」
つい先程、合格の電話をもらったばかりだった。
今から報告に行こうかと思っていた時に教授を見かけたものだから、思わず声をかけてしまったのだ。
教授は目を細めて手を差し伸べてきた。
俺がその手を握ると力強く握り返される。
「おめでとう。山村くんなら大丈夫だと思っていたよ」
「ありがとうございます。教授にアドバイスをいただいたおかげです」
「ははは、僕は大したことをしてないよ。全部山村くんの頑張りだ」
こうして教授と話していると、六月のあの日を思い出す。
俺が初めて石橋研究室を訪れたあの日を。
「桜庭くんには伝えた?」
「今から研究室に行って伝えます」
「きっと飛び上がって喜ぶだろうね。僕も見に行きたいけれど、今から会議なんだ。後でどんな様子だったか教えてよ」
「もちろんです!」
律先輩はどんな反応をするかな。
きっと自分のことみたいに喜んでくれる。
色々アドバイスをくれたし、散々お世話になったんだから、今度ちゃんとしたお礼を贈ろうかな。
そんなことを考えて研究室の扉を開けた。
「律先輩っ!」
「ハルくん? やっほー」
「内定、出ました」
早く言いたくて、部屋に入ってすぐに告げる。
律先輩は一瞬だけきょとんとしていたけど、次第に目を見開いた。
「え? ほ、本当? 内定もらえたの?」
「はいっ、さっき電話がかかってきて、それで内定をもらえてっ……うわっ! ちょ、ちょっと律先輩、苦しい、です」
律先輩はこちらに駆け寄ってくると、痛いくらいに俺を抱きしめた。握りつぶされそうなくらい強く。
「やったね」
律先輩の声はとても小さくて震えていた。
「あの」
「すごい……すごいよ。ハルくん頑張ったね。おめでとう」
抱きしめられたまま上から降ってくる涙声に、だんだんと俺の目頭が熱くなってくる。
「律先輩のおかげです。本当に、ありがとうございました」
お互いの顔が見えなくて良かった。俺の顔はきっと酷くて、見せられない顔をしていたから。
「お祝いしなきゃだね」
「お祝いなんて……むしろ俺が律先輩にお礼をしなきゃいけないですよ」
「あ、じゃあさ」
律先輩はガバっと身体を離してそのまま肩をガシッと掴んできた。
「一緒にご飯作ろう! 俺はハルくんにお祝いご飯。ハルくんは俺にお礼ご飯。作りっこしよう」
「それっていつもと一緒ですよね?」
「分かってないなぁ。いつもと同じだけど、ちょっとトクベツってのが良いんでしょ」
「ははっ、分かりました。じゃあ美味しいやつ頼みます」
律先輩は目元を赤くしたまま、「オッケー」とくしゃくしゃの顔で笑っていた。



