研究室でご飯を。君と。

 数週間後。
 俺は、第一志望の企業から『お祈りメール』を受け取っていた。
 正直、面接の段階で結果は分かっていたから、なんとも思わなかった。

 でも、これでまた振り出しに戻ってしまった。
 またエントリー先を増やして、履歴書を書いて、面接対策して……。
 そう思うと、就職がずっと遠くに感じられた。

「今って受け手市場だって言われていたのに……」

 理学部で決まっていない「苦労組」の残りは、俺を含めて三人ほどらしい。
 報告に行った時、就職支援室職員の心配の眼差しが痛かった。

 このまま決まらなかったら?

 暗い感情が頭を支配する。
 俺は無意識に研究室へと向かい、自分のデスクで眠ってしまったようだった。


 
「おーいハルくーん、今日は徹夜? ……なわけないか。そろそろ起きないと、明日に響くよ」
「律先輩……?」

 肩をそっと揺さぶられてぼんやりと目を開ける。
 ぼんやりとした頭に「寝ちゃってたのー? 疲れてるんじゃない?」という律先輩の声が響く。窓の外を見ると、もう日が暮れて真っ暗だった。

 先輩は俺の顔を見ると、ギョッとしたように目を見開いた。

「ハルくん、ちょっと出かけよ」
「え?」

 腕を引かれて立ち上がる。
 今、何時? 出かけるって、どこへ?

 先輩は黙って俺の手を引いていく。
 だから俺もよく分からないまま、律先輩について行った。
 大学を出て暗い道を歩く。

 田舎だから街頭なんてほとんどない。
 時折聞こえる虫の声と、遠くを走る車の音だけが聞こえてくる。

 ぬるい風が俺の顔を撫でた。

 歩いているうちに頭がだんだんとハッキリしてくる。
 ついでに忘れていた現実も思い出した。
 暗い気持ちがズンとのしかかる。

 律先輩は一体どこへ連れて行くつもりだろう。
 この辺には何もないのに。

「この辺りって、すげー星が見えるよね」

 突然律先輩が上を指さした。
 つられて上を見ると、確かに星がたくさん光っていた。

「街灯少ないですからね」

 頭上に広がる星空を見ていると、本当に自分はちっぽけなんだと分からされる。
 だけど、ちっぽけにはちっぽけの悩みがあるんだ。

「あっ、見て。自販機ある。なんか飲む? 俺、コーヒー」
「……オレンジジュースで」

 ガコン。
 律先輩はコーヒーとオレンジジュースを買うと、俺に差し出した。

「はい、オレンジジュース」
「ありがとうございます」

 財布すら持っていない俺は、大人しく受け取るしかない。
 手に取ったオレンジジュースはひんやりと冷たい。一口飲むと、身体がスッと冷えるのを感じた。