研究室でご飯を。君と。

 その後、もう少しだけベンチで休憩をした俺たちは、お昼ご飯を食べることにしたのだが――。

「土曜日に出かけたはずなのに、研究室に来るっていうのは……」
「いやー科学博物館がキッチリしてて肩こっちゃったから『いつもの』ご飯が食べたいなーって」

 笑いながら律先輩が買い物袋の中身を冷蔵庫へと移している。
 俺は「せっかく出かけたのに……」と言いつつ内心では先輩に感謝していた。


 あんなことを言ってしまった手前、羞恥心にまみれた俺は先輩の言葉に「……はい」としか返せなくなっていた。
 要するにギクシャクしてしまったのだ。

 すると律先輩が、「なんかハルくん気疲れしちゃったかな? よしっ、じゃあいつもと同じことをしよう!」と言って、車でスーパーへと買い出しに連れ出したのだ。
 そしてその足で、研究室へとやって来たのだった。

 先輩の目論見通り、俺は少し平常心を取り戻し、まともな会話が出来るくらいには回復していた。

「今日は買い出ししてきたから食材が豊富だよー。何でも作れちゃう! ハルくん、何食べたい?」
「えっと……ラーメンとか」

 ラーメン。それは俺が初めて研究室で食べたご飯だ。ふとそれを思い出して急に食べたくなる。
 せっかく色々買い出しに行ったのにインスタント麺だなんて……と気づいた時には、もうリクエストが口から出てしまっていた。

 それなのに、律先輩は嬉しそうに「イイね!」と笑っていた。

「ちょうど試したいレシピがあるんだよー。材料も……ある! じゃあラーメンに決定! ハルくん、お湯沸かしてくれる?」
「はい」

 律先輩はスマホでレシピを見ながらゴソゴソと作業を始めた。……レシピが必要なインスタント麺のアレンジ?
 不思議に思いながら「手伝います」と声をかけると、先輩は俺を椅子に座らせた。

「ビックリさせたいから座ってて」

 律先輩はさっきまでの不調が嘘のようにくるくると動き回っている。
 その背中を見ていると、どうしようもなくギュッと胸が締め付けられた。

 俺、やっぱり律先輩が好きなんだ。

 なんでこんなにも好きなんだろう。 
 綺麗な顔の女子ならいくらでもいる。それこそ理学部内にも。
 優しいという条件なら、健太郎だってかなり優しい。

 それなのに、律先輩が好きなんだ――。