だけど、この思いは絶対に内緒だ。
男からの告白なんて迷惑だろうし。
それに――。
「そんなことより律先輩、さっきスマホ鳴ってましたよ」
俺が先輩のスマホを指さすと、先輩は少し困ったように視線を向けた。
「どれどれ? あー……ははは」
「またですか?」
「うん。昔会った女の子が俺のこと殴りたいって。しょうがないなー」
鼻歌を歌いながらスマホで返信を打ち込む姿に、何とも言えない苦い感情が湧き上がる。
「今度の人には何をしたんですか?」
「うーん……二、三回飲んだ、かも? 記憶ないや」
「本当に、いつか刺されますよ」
「ははは。あーぁ……なんで皆、気持ちを押し付けてくるんだろう? ハルくんみたい普通に仲良くしてくれるだけで良いのになー」
律先輩は無自覚の天然沼男なのだ……!
律先輩に思いを寄せている女性は、もれなくメンヘラ化してしまうらしい。
最近は女性関係を絶っているらしいのに、今でもこんな風に呼び出されてビンタされたり、怒鳴られたりしている。
……俺も若干巻き込まれたことがある。
研究は計画的に出来るのに、人付き合いは無計画。
人をたらし込むのに、すぐ縁を切る。
ハマったらお終いな人だ。
俺もこれ以上ハマったら、メンヘラになって留年してしまうかもしれない。
だから、俺は絶対に気持ちを悟られちゃいけないし、告白なんてもってのほかだ。
ただ一緒に過ごせるだけで良い。
一番仲の良い後輩の座にいられるだけで幸せだった。
「そういえば、さっき教授からレトルトカレー貰ったんだ。明日カレードリアにしようと思うんだけど、どう?」
「……明日までに必要な物を買っておきます」
「そうこなくっちゃ! よーし、今日も明日もがんばろー」
「はい」
ほら。
先輩は沼男だけど、こんな風に俺のやる気を引き出してくれる。ほんの少しの好意を寄せるだけなら、人生を豊かにしてくれる。多分。
俺は食べかけのおにぎらずを横に置いて、実験計画書を書き始めた。
すると律先輩は再び俺の方に近づいてきた。
「あ、まだ食べきってないの? じゃあもう一口」
止める間もなく先輩の口に入っていく俺のおにぎらず。
「ちょっと! 勝手に食べないでくださいよ」
「怒んないでよー。俺のも分けてあげる。ほら、あーん」
先輩のおにぎらずが差し出される。
一瞬の躊躇を悟られないように、先輩のおにぎらずにかぶりついた。
「スパムと卵も美味しいでしょ?」
「はい、とても」
顔が熱くなっているのが分かる。俺は実験計画書に無意味な文字列を羅列した。
律先輩はいつも距離が近すぎる。さっきから意識しないようにしていたのに、一旦気にしてしまうと駄目だった。
「二人いると、たくさんの味が楽しめていいね。俺さ、ハルくんと同じ研究室で幸せ―」
……この、人たらしめ!!
俺の気持ち知ってて弄んでいるのか!?
いや、この人は最初からこんな感じだったな。
俺は律先輩と出会った頃を思い出していた。
男からの告白なんて迷惑だろうし。
それに――。
「そんなことより律先輩、さっきスマホ鳴ってましたよ」
俺が先輩のスマホを指さすと、先輩は少し困ったように視線を向けた。
「どれどれ? あー……ははは」
「またですか?」
「うん。昔会った女の子が俺のこと殴りたいって。しょうがないなー」
鼻歌を歌いながらスマホで返信を打ち込む姿に、何とも言えない苦い感情が湧き上がる。
「今度の人には何をしたんですか?」
「うーん……二、三回飲んだ、かも? 記憶ないや」
「本当に、いつか刺されますよ」
「ははは。あーぁ……なんで皆、気持ちを押し付けてくるんだろう? ハルくんみたい普通に仲良くしてくれるだけで良いのになー」
律先輩は無自覚の天然沼男なのだ……!
律先輩に思いを寄せている女性は、もれなくメンヘラ化してしまうらしい。
最近は女性関係を絶っているらしいのに、今でもこんな風に呼び出されてビンタされたり、怒鳴られたりしている。
……俺も若干巻き込まれたことがある。
研究は計画的に出来るのに、人付き合いは無計画。
人をたらし込むのに、すぐ縁を切る。
ハマったらお終いな人だ。
俺もこれ以上ハマったら、メンヘラになって留年してしまうかもしれない。
だから、俺は絶対に気持ちを悟られちゃいけないし、告白なんてもってのほかだ。
ただ一緒に過ごせるだけで良い。
一番仲の良い後輩の座にいられるだけで幸せだった。
「そういえば、さっき教授からレトルトカレー貰ったんだ。明日カレードリアにしようと思うんだけど、どう?」
「……明日までに必要な物を買っておきます」
「そうこなくっちゃ! よーし、今日も明日もがんばろー」
「はい」
ほら。
先輩は沼男だけど、こんな風に俺のやる気を引き出してくれる。ほんの少しの好意を寄せるだけなら、人生を豊かにしてくれる。多分。
俺は食べかけのおにぎらずを横に置いて、実験計画書を書き始めた。
すると律先輩は再び俺の方に近づいてきた。
「あ、まだ食べきってないの? じゃあもう一口」
止める間もなく先輩の口に入っていく俺のおにぎらず。
「ちょっと! 勝手に食べないでくださいよ」
「怒んないでよー。俺のも分けてあげる。ほら、あーん」
先輩のおにぎらずが差し出される。
一瞬の躊躇を悟られないように、先輩のおにぎらずにかぶりついた。
「スパムと卵も美味しいでしょ?」
「はい、とても」
顔が熱くなっているのが分かる。俺は実験計画書に無意味な文字列を羅列した。
律先輩はいつも距離が近すぎる。さっきから意識しないようにしていたのに、一旦気にしてしまうと駄目だった。
「二人いると、たくさんの味が楽しめていいね。俺さ、ハルくんと同じ研究室で幸せ―」
……この、人たらしめ!!
俺の気持ち知ってて弄んでいるのか!?
いや、この人は最初からこんな感じだったな。
俺は律先輩と出会った頃を思い出していた。



