研究室でご飯を。君と。

 その後、律先輩はスープを作ってくれた。
 この間と同じドライオニオンのスープ。少ししょっぱくて、でも温かかった。


 律先輩は最後まで何も言わなかった。
 家に帰ってやれとか、好きにしていいとか。

 何も言わずに抱きしめて、スープをくれて。それだけ。でもそれが嬉しかった。

「ありがとうございます」
「ふふっ、最近素直だね。どういたしまして」

 律先輩は本当にすごい。
 一つしか歳が違わないのに、一生勝てる気がしなかった。



 スープを飲んで落ち着いたら、いつものように雑談して、ついでに論文の書き方を教わった。その流れで就活の悩みを聞いてもらったりもした。

「……それで学部の奴らに『石橋研究室は哀れ』って言われたんです。俺、頭にきちゃって。絶対内定取ってやる! って思いました」
「ははは。俺も学部の時言われたなー。でも関係ないよ。俺の先輩も第一志望の企業に就職してたし。今度、石橋教授に聞いてみ? 実はうちの研究室、結構優秀だからさ」
「律先輩見てたら分かります。優秀だって」
「嬉しいこと言ってくれるじゃん! 可愛い後輩だなー」


 いつもみたいな時間の過ごし方だった。
 だけど、俺の心臓はいつもよりドキドキと高鳴っていた。
 なんだ、これ……。



 その日の夜、俺は寮に帰ると母さんにメールを送った。

『就活とか卒論終わったら帰る。父さんにもよろしくって言っといて』

 返事はすぐに返ってきた。

『お父さん喜んでいるよ。待ってるからね。たまには連絡くらいしてよ』

 さて、親にも宣言しちゃったし、絶対に内定取って卒論も仕上げないと。
 そうだ、先輩にも何かお礼がしたいな。

 律先輩のことを考えると、再び心臓がドクリと音を立てた。