研究室でご飯を。君と。

 それから就活も研究もあっという間に忙しくなった。
 研究の方は、忙しいながらもメインの実験結果が出揃って、なんとか論文として形になりそうだった。
 就活の方も、人より遅いけれど前進していた。
 先輩と一緒に新しくエントリーした企業のいくつかが、書類選考や一次面接を通り始めていたのだ。

 就職支援室に報告へいくと、その場にいた職員はとても喜んでくれた。

「一次が通るってことは、方向性は合っているってことだよ。二次とか最終の面接は……こればっかりは相性とか縁だから。山村くんは面接の受け答えも問題ないし、決まるのも時間の問題だよ」
「はい。ありがとうございます」

 少しずつ前に進めている。
 きっと大丈夫だ。



 就職支援室を出ると、何人か知っている人が集まっていた。
 多分同じ学部の人達だ。男子も女子もいて、共通点のなさそうな不思議なグループだ。

 向こうは俺に気づくと、わっと集まってきた。
 な、なんだ……?

「あ、山村くん」
「山村くんもここにいるってことは、苦労組かー」
「山村も? なんか意外」

 苦労組?
 俺が首を傾げていると、女子の一人が教えてくれた。
 就活組の中でまだ一つも内定がない人達のことだって。

「山村くんも大変だろうけど、お互い頑張ろ! 私も全然決まらなくてさあ……」

 化粧品メーカー志望なのだと言う彼女を、俺は講義で何度か見かけたことがある。
 真面目な態度で教授に何度か質問していたからだ。

 名前も良く知らないが、彼女は身だしなみもキッチリしていて、そういう業界が似合いそうだ。勤勉だし、きっとすぐ内定をもらえるだろう。
 俺がそう言うと、彼女は嬉しそうに頬を赤らめていた。

「でも山村くんが苦戦してたのは意外だな」
「やっぱり成績とは関係ないんだなー」
「運も悪かったよね。石橋研究室じゃ……」

 急に研究室の名前を出されて、思わず「はあ?」と声が出た。
 石橋研究室は運が悪い? 何言っているんだ?

「ほら、他の教授のとこならOBの先輩とかたくさんいるから企業の情報が集まりやすいし、教授に力があれば研究室推薦は選び放題でしょ? だけど石橋教授のところは……」
「そうそう。それに遺伝子系? とかって、就活厳しいんだろ? 山村は成績も良かったのに勿体ないよなー」

 周りの皆は、哀れみの目で俺を見ていた。


 何だそれ。
 教授は悪くないだろ。
 研究室は悪くないだろっ……!

 俺は苛立ちを抑えて、拳を握りしめた。

「別に研究室のせいじゃない。今までは俺がちゃんと企業研究とか出来てなかった。色々アドバイス貰ったし、多分もう大丈夫」

 それだけ言ってその場を立ち去った。
 あのまま皆といたら、酷いことを言ってしまいそうだったから――。