「律、先輩」
気がつくと、俺は先輩の名前を呼んでいた。
「なーに?」
「なんか食べましょ。俺、律先輩の料理食べたいです」
「おっ? いいね! では話を聞いてくれたお礼に振舞ってさしあげよう」
律先輩は俺が呼び方を変えたことにも気づかずに、冷蔵庫をいそいそと開ける。
「何がいいかなー。あっ、チーズ残ってるしアレにしようかな」
「何作るんですか?」
「ふっふっふ、俺のお気に入り。出来るまでちょっと待っててね」
「はーい」
俺は実験計画を立てながら、大人しく律先輩の料理する姿を眺めていた。
「はい、どーぞ。特製スープだよ」
「旨そう……いただきます」
律先輩が作ってくれたのは、ドライオニオンを使ったスープだった。
スープの上には小さなトーストとチーズが乗っている。
トーストをかじると、サクッとした食感の後にスープの旨味がジュワッと口の中に広がった。
スープの上に何かを乗せるという発想がなかった俺にとって、それは革命だった。
「ははは。食べてる時のハルくんって、本当に幸せそうだよね」
「……本当に美味しいんで。食べないと冷めますよ、律先輩」
「うん」
二人でスープをすする。
無言の時間が流れていく。
だけど、もう気まずくはなかった。
「ご馳走様でした。そろそろ帰ります。律先輩は?」
「うーん、ちょっと実験してから帰ろうかな」
「……いつも思ってたんですけど、律先輩って家あるんですか? もしかして、ここに住んでます?」
俺がかねてからの疑問をぶつけると、律先輩は吹き出した。
「あるよ! あるに決まってんじゃん! はははっ、今度招待してあげる」
「別にいいです」
「そんなこと言わずー。車で数分だからさ。……せっかく名前で呼んでくれるようになったし、少しは俺に懐いてくれたでしょ?」
「ばっ……! はぁ?! べ、別に懐いてないですけど?」
バレてた。
俺は恥ずかしくなって「家があるならさっさと帰ってくださいね。身体壊しますよ!?」とだけ吐き捨てると、急いで帰り支度をした。
「ハルくんは可愛いなー。猫みたい」
律先輩が何か言っていたけど、俺は聞こえないふりをしてさっさと帰宅した。
気がつくと、俺は先輩の名前を呼んでいた。
「なーに?」
「なんか食べましょ。俺、律先輩の料理食べたいです」
「おっ? いいね! では話を聞いてくれたお礼に振舞ってさしあげよう」
律先輩は俺が呼び方を変えたことにも気づかずに、冷蔵庫をいそいそと開ける。
「何がいいかなー。あっ、チーズ残ってるしアレにしようかな」
「何作るんですか?」
「ふっふっふ、俺のお気に入り。出来るまでちょっと待っててね」
「はーい」
俺は実験計画を立てながら、大人しく律先輩の料理する姿を眺めていた。
「はい、どーぞ。特製スープだよ」
「旨そう……いただきます」
律先輩が作ってくれたのは、ドライオニオンを使ったスープだった。
スープの上には小さなトーストとチーズが乗っている。
トーストをかじると、サクッとした食感の後にスープの旨味がジュワッと口の中に広がった。
スープの上に何かを乗せるという発想がなかった俺にとって、それは革命だった。
「ははは。食べてる時のハルくんって、本当に幸せそうだよね」
「……本当に美味しいんで。食べないと冷めますよ、律先輩」
「うん」
二人でスープをすする。
無言の時間が流れていく。
だけど、もう気まずくはなかった。
「ご馳走様でした。そろそろ帰ります。律先輩は?」
「うーん、ちょっと実験してから帰ろうかな」
「……いつも思ってたんですけど、律先輩って家あるんですか? もしかして、ここに住んでます?」
俺がかねてからの疑問をぶつけると、律先輩は吹き出した。
「あるよ! あるに決まってんじゃん! はははっ、今度招待してあげる」
「別にいいです」
「そんなこと言わずー。車で数分だからさ。……せっかく名前で呼んでくれるようになったし、少しは俺に懐いてくれたでしょ?」
「ばっ……! はぁ?! べ、別に懐いてないですけど?」
バレてた。
俺は恥ずかしくなって「家があるならさっさと帰ってくださいね。身体壊しますよ!?」とだけ吐き捨てると、急いで帰り支度をした。
「ハルくんは可愛いなー。猫みたい」
律先輩が何か言っていたけど、俺は聞こえないふりをしてさっさと帰宅した。



