3side春斗⑥
自室に駆け込んだ俺は、後ろ手に閉めたドアを背にしてずるずるとその場にへたり込み、叫びそうになる口元を両手で覆って押さえこむ。
――どうしよう、どうしようっ!
今自分がしでかしたことの重大さに、感情は荒れ狂う海のごとく波打ち、心臓は破裂しそうなくらいにどくどくと音を立てている。
「き……キス、しちゃった……うわぁ……」
あまりの羞恥心に両手に顔を埋める。
耳元で太鼓を叩かれているような感覚に、身動きが取れなかった。
高揚感と背徳感、罪悪感がせめぎ合って俺の中をぐちゃぐちゃにかき混ぜる。
ふゆくんに触れるだけでなく、頬にキスをしてしまった。……もう少しで、唇にキスするところだったのを寸でのところで頬に軌道修正したのだ。
明日のことを謝りにふゆくんの部屋を訪れたけど返事がなくて、部屋を覗くとふゆくんはベッドの上で眠っていて……。気付けば、俺は吸い寄せられるようにふゆくんのそばに近寄っていた。
目を閉じたふゆくんは、いつもよりも幼さが感じられてすごくかわいくて。無防備さも相まって、前髪から覗くつるんとしたおでこに指を這わせて髪をかき分けた。
――ずっと触っていたい……。
指先から伝わる熱に、胸が焦がされるようだった。
ずっと好きだった。
もう二度と会うことはないんだろうな、ってなんとなく思ってた人と、また会えると知ったとき、本当に嬉しかった。我ながら未練がましいし、初恋に執着するあまり拗らせてしまっている自覚はあったけど……。でも、どれも自分ではどうにもできない気持ちだった。
そう、自分ではどうしようもないのだ。
熱に浮かされるように、気付けばキスをしてしまっていた。
こんなこと、駄目なのに。
好きでもなんでもない、ただの幼なじみにキスされたなんて知ったら、きっと気持ち悪いって思うに決まってる。それに、ふゆくんには彼女もいる。
俺はなんて馬鹿な事をしちゃったんだろう。
我慢できなかったなんて言い訳にもならない。
それでも、ふゆくんに触れていたあの時間は、なにものにも変えられないほどに幸せだった……。
触れた肌の感触も、熱も、なにもかもが、愛おしくてたまらなかった。
もう、こんなことは最後にするから。
これで諦めるから。
この初恋に終止符を打たせて。
そんな思いで触れたふゆくんのすべてを、俺はきっと一生忘れられない――……
自室に駆け込んだ俺は、後ろ手に閉めたドアを背にしてずるずるとその場にへたり込み、叫びそうになる口元を両手で覆って押さえこむ。
――どうしよう、どうしようっ!
今自分がしでかしたことの重大さに、感情は荒れ狂う海のごとく波打ち、心臓は破裂しそうなくらいにどくどくと音を立てている。
「き……キス、しちゃった……うわぁ……」
あまりの羞恥心に両手に顔を埋める。
耳元で太鼓を叩かれているような感覚に、身動きが取れなかった。
高揚感と背徳感、罪悪感がせめぎ合って俺の中をぐちゃぐちゃにかき混ぜる。
ふゆくんに触れるだけでなく、頬にキスをしてしまった。……もう少しで、唇にキスするところだったのを寸でのところで頬に軌道修正したのだ。
明日のことを謝りにふゆくんの部屋を訪れたけど返事がなくて、部屋を覗くとふゆくんはベッドの上で眠っていて……。気付けば、俺は吸い寄せられるようにふゆくんのそばに近寄っていた。
目を閉じたふゆくんは、いつもよりも幼さが感じられてすごくかわいくて。無防備さも相まって、前髪から覗くつるんとしたおでこに指を這わせて髪をかき分けた。
――ずっと触っていたい……。
指先から伝わる熱に、胸が焦がされるようだった。
ずっと好きだった。
もう二度と会うことはないんだろうな、ってなんとなく思ってた人と、また会えると知ったとき、本当に嬉しかった。我ながら未練がましいし、初恋に執着するあまり拗らせてしまっている自覚はあったけど……。でも、どれも自分ではどうにもできない気持ちだった。
そう、自分ではどうしようもないのだ。
熱に浮かされるように、気付けばキスをしてしまっていた。
こんなこと、駄目なのに。
好きでもなんでもない、ただの幼なじみにキスされたなんて知ったら、きっと気持ち悪いって思うに決まってる。それに、ふゆくんには彼女もいる。
俺はなんて馬鹿な事をしちゃったんだろう。
我慢できなかったなんて言い訳にもならない。
それでも、ふゆくんに触れていたあの時間は、なにものにも変えられないほどに幸せだった……。
触れた肌の感触も、熱も、なにもかもが、愛おしくてたまらなかった。
もう、こんなことは最後にするから。
これで諦めるから。
この初恋に終止符を打たせて。
そんな思いで触れたふゆくんのすべてを、俺はきっと一生忘れられない――……



