俺ときみの、失恋からはじまる恋

閑話 立花さんの策略

 なんということでしょう。
 我がクラス、いや我が校切ってのイケメン推しカップルの“壁”という超大役を(勝手に)任されているにも関わらず、(理想)受けの冴木くんと二人きりというシチュに浮かれてしまった私、立花芽衣子は、「小林くんと一緒に帰れなくなっちゃって、寂しいよね」なんてうっかり揺さぶりをかけてしまいました。
 そしたら……、なんということでしょう!
 真っ赤になって動揺する受けのなんと可愛いこと!
 あぁ、神様ごめんなさい。壁失格です。
 可愛い受けが焦っている姿を見ていられなくて、思わず「小林くんのこと、好きなんだね」と口が滑りました。

 ――はい、嘘ですすみません。確信犯です。

 だって、必死に言い訳を探す受けが、健気で健気で可愛そうで黙ってられなかったんだもん……。
 私の気迫に押されて(理想)攻めの小林くんのことが好きと認めた冴木くんは、同性が好きなんて気持ち悪くないのか、と聞いてきた。
 その一言で、彼の葛藤が見て取れるようで、私はありったけの気持ちを込めてそれを否定する。
 誰かが誰かを好きでいることが、気持ち悪いなんてありえないもの。(そりゃぁ、世の中には、ストーカーとか歪んだ「愛」も少なからず存在してるけど)。
 私の熱弁が伝わったのか、冴木くんのほっとした表情を見て私も安堵する。この健気で愛らしい受けを、不安なままにしておくなんて、壁失格だもの。
 その後も作業をしつつ、冴木くんといろいろな話をした。
 中でも一番驚いたのは、小林くんに「恋愛対象じゃないから」と言われて振られているということ。
 え、嘘でしょ?
 このカップルが成立しないなんてこと、あるの?
 てっきりくっつくのは時間の問題だと思ってたし、なんならもうくっついてる説まであっただけにショックが大きすぎた。
 これは全腐女子が泣く……!
 ……ううん、諦めるのはまだ早い。
 これはきっとじれキュン要素の内であって、交際前のフラグに決まってる……!

 それにしても、再会した初日に女の子だと思われていたことが発覚しただけじゃなく、恋愛対象じゃないと言われたなんて……。初恋相手にそんなことを言われた冴木くんの気持ちを思うと、胸が痛いくらい締め付けられた。
 悲しいのに無理やり笑顔を作ろうとする冴木くんが痛々しくて、居ても立っても居られなくなった私は、「私にできることならなんでもするから!」と豪語して迫りRINEのIDをゲットしたのだった。