※晴翔視点に戻ります※
今、俺は、蓮に強く強く抱きしめられている。
「晴翔、好きだよ。愛してる」
まるで愛の告白のようなセリフ。
でも、蓮が俺のことを好きなはずない。友達にもなれていなかったのだから。
だから、これは————何だ?
さっきから、蓮は今までに見たことがないくらい切羽詰まった様子。
まるで、俺が海斗といることに嫉妬しているような口振りと態度。
(まぁ、必死で探しているのに、当の本人はヘラヘラと札幌の街を堪能していたなんて怒るか)
いや、それでも怒りすぎな気がする。今までにない程怒っている。過去一だ。
『もう離さない。絶対離さない。晴翔が逃げても追っかける』
分からない。蓮が分からない。
誰よりも蓮のことを知っていると思っていたのに、全然分からない。
「晴翔、顔見せて」
蓮に前髪を触られ、思わず顔を引いた。
「晴翔……」
蓮の行き場の無くなった手と、悲しそうな表情。その手が再び伸びて来た。
「ごめッ」
また怒られると思い、目をギュッと瞑って謝った。
しかし、怒られることはなく、蓮は優しく前髪を分けてきた。
「晴翔、目開けて」
俺は恐る恐る目を開けた。
久々に蓮と目が合った。今までも目は合っていたが、前髪のフィルター越しだ。直で合ったのは数年ぶり。
蓮は、困った顔で笑いながら言った。
「これは、まだ分かってない顔だね」
「なッ」
「鈍い晴翔にもう一度言うね」
蓮は、チュッとさっきよりも優しいキスをしてから言った。
「晴翔。好きだよ。フリとかじゃなく、僕と付き合って欲しい」
「え……」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。数秒後に言葉が脳に追いついた。
俺の顔はみるみる赤くなり、漫画のように頭からボンッと湯気が出そうになった。
蓮が、俺を好き!?
「え、でも、蓮は新城先生が好きで……」
「は?」
「新城先生に、今晩告白する予定……なんだろ?」
「そんな訳ないじゃん」
「でも、今晩、新城先生のところ行くって」
蓮は、俺の勘違いに気付いたようだ。ふっと笑って言った。
「僕、風紀委員だからさ。新城先生と消灯時の見回り行くんだよ」
「あー、なるほど」
それを俺はとんだ勘違いをしていたのか。勝手に勘違いして嫉妬して……恥ずかしい。
「で、でも。俺のこと、友達として見たことないって……」
「そんなの、ずっと恋愛対象として見てたってことに決まってるじゃん。親友止まりじゃ嫌だよ」
どこかで聞いたことのあるようなオチだ。いや、それは今は良い。
てことは、つまり——。
俺と蓮は、もっと前から両想いだったということか?
「晴翔、ご飯食べた?」
「まだ……だけど」
「じゃあ、一緒に食べに行こ」
蓮は、立ち上がって手を差し伸べてきた。
「え、でも……」
俺の気持ちはまだ伝えていない。俺も伝えないと。
「蓮、俺……」
「返事は、また今度で良いよ。なんか、聞くの怖いし」
蓮の自信の無さそうな顔を初めて見た。
そして、その顔を見て気が付いた。
蓮も、俺と同じだったんだ。
同性だから、幼馴染だから、嫌われたくないから……とにかく不安でいっぱいで、今の関係を壊したくなくて、でもそれ以上を求めて……。
言わなきゃ。俺も言わなきゃいけない。
蓮の不安な顔を笑顔にさせないと。
「蓮、俺……」
俺は、蓮の手を取って立ち上がった。
「俺も、ずっと蓮のこと」
「今すぐじゃなくて良いって。明日、気まずくなるの嫌だし」
蓮は逃げるように、自身のネクタイを拾って部屋を出ようとした。
「蓮、待って」
襖を開ける前に、俺は急いで蓮の腕を掴んだ。
「俺、蓮のこと。ずっと、す、す、す」
言わないと。蓮の不安を取り除いてあげないと。けれども、いつものように“好き”の二文字が出てこない。
「晴翔、無理しなくて良いよ。それが答えなんでしょ」
「違ッ」
肝心な時に声が出ないなんて、どこまで意気地がないんだ。俺!
蓮の顔は、どんどん寂しそうな表情になっていく。
俺は、蓮の胸ぐらを掴んで背伸びした。そして、唇にチュッとキスをした。
「え、晴翔……?」
呆気に取られている蓮に、照れながら言った。
「これが、答え。じゃ……ダメかな?」
好きの二文字は言えないのに、キスなら出来るなんて……。
そして、キスのハードルが下がっているというのも、如何なものだろうか。
「それに、俺が逃げても追いかけてくるんだろ?」
そう言うと、蓮が満面の笑みになった。
「うん! 絶対逃さない!」
蓮にギュッと抱きしめられ、キスされた。
「んッ」
角度を変えて、何度も何度も確認するようにキスをした。
「晴翔、好き……大好き……」
そのうち、蓮の舌が入ってきて、そのまま貪られるように口付けされた。
「ぷはッ」
「ふふ、晴翔、息しないと」
「出来ないって……んんッ」
俺達は食事もせず、クラスメイトが部屋に戻ってくるまで、深い深い口付けを交わした。
——そして、俺は思った。
キスも、まだまだハードルが高い……と。
今、俺は、蓮に強く強く抱きしめられている。
「晴翔、好きだよ。愛してる」
まるで愛の告白のようなセリフ。
でも、蓮が俺のことを好きなはずない。友達にもなれていなかったのだから。
だから、これは————何だ?
さっきから、蓮は今までに見たことがないくらい切羽詰まった様子。
まるで、俺が海斗といることに嫉妬しているような口振りと態度。
(まぁ、必死で探しているのに、当の本人はヘラヘラと札幌の街を堪能していたなんて怒るか)
いや、それでも怒りすぎな気がする。今までにない程怒っている。過去一だ。
『もう離さない。絶対離さない。晴翔が逃げても追っかける』
分からない。蓮が分からない。
誰よりも蓮のことを知っていると思っていたのに、全然分からない。
「晴翔、顔見せて」
蓮に前髪を触られ、思わず顔を引いた。
「晴翔……」
蓮の行き場の無くなった手と、悲しそうな表情。その手が再び伸びて来た。
「ごめッ」
また怒られると思い、目をギュッと瞑って謝った。
しかし、怒られることはなく、蓮は優しく前髪を分けてきた。
「晴翔、目開けて」
俺は恐る恐る目を開けた。
久々に蓮と目が合った。今までも目は合っていたが、前髪のフィルター越しだ。直で合ったのは数年ぶり。
蓮は、困った顔で笑いながら言った。
「これは、まだ分かってない顔だね」
「なッ」
「鈍い晴翔にもう一度言うね」
蓮は、チュッとさっきよりも優しいキスをしてから言った。
「晴翔。好きだよ。フリとかじゃなく、僕と付き合って欲しい」
「え……」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。数秒後に言葉が脳に追いついた。
俺の顔はみるみる赤くなり、漫画のように頭からボンッと湯気が出そうになった。
蓮が、俺を好き!?
「え、でも、蓮は新城先生が好きで……」
「は?」
「新城先生に、今晩告白する予定……なんだろ?」
「そんな訳ないじゃん」
「でも、今晩、新城先生のところ行くって」
蓮は、俺の勘違いに気付いたようだ。ふっと笑って言った。
「僕、風紀委員だからさ。新城先生と消灯時の見回り行くんだよ」
「あー、なるほど」
それを俺はとんだ勘違いをしていたのか。勝手に勘違いして嫉妬して……恥ずかしい。
「で、でも。俺のこと、友達として見たことないって……」
「そんなの、ずっと恋愛対象として見てたってことに決まってるじゃん。親友止まりじゃ嫌だよ」
どこかで聞いたことのあるようなオチだ。いや、それは今は良い。
てことは、つまり——。
俺と蓮は、もっと前から両想いだったということか?
「晴翔、ご飯食べた?」
「まだ……だけど」
「じゃあ、一緒に食べに行こ」
蓮は、立ち上がって手を差し伸べてきた。
「え、でも……」
俺の気持ちはまだ伝えていない。俺も伝えないと。
「蓮、俺……」
「返事は、また今度で良いよ。なんか、聞くの怖いし」
蓮の自信の無さそうな顔を初めて見た。
そして、その顔を見て気が付いた。
蓮も、俺と同じだったんだ。
同性だから、幼馴染だから、嫌われたくないから……とにかく不安でいっぱいで、今の関係を壊したくなくて、でもそれ以上を求めて……。
言わなきゃ。俺も言わなきゃいけない。
蓮の不安な顔を笑顔にさせないと。
「蓮、俺……」
俺は、蓮の手を取って立ち上がった。
「俺も、ずっと蓮のこと」
「今すぐじゃなくて良いって。明日、気まずくなるの嫌だし」
蓮は逃げるように、自身のネクタイを拾って部屋を出ようとした。
「蓮、待って」
襖を開ける前に、俺は急いで蓮の腕を掴んだ。
「俺、蓮のこと。ずっと、す、す、す」
言わないと。蓮の不安を取り除いてあげないと。けれども、いつものように“好き”の二文字が出てこない。
「晴翔、無理しなくて良いよ。それが答えなんでしょ」
「違ッ」
肝心な時に声が出ないなんて、どこまで意気地がないんだ。俺!
蓮の顔は、どんどん寂しそうな表情になっていく。
俺は、蓮の胸ぐらを掴んで背伸びした。そして、唇にチュッとキスをした。
「え、晴翔……?」
呆気に取られている蓮に、照れながら言った。
「これが、答え。じゃ……ダメかな?」
好きの二文字は言えないのに、キスなら出来るなんて……。
そして、キスのハードルが下がっているというのも、如何なものだろうか。
「それに、俺が逃げても追いかけてくるんだろ?」
そう言うと、蓮が満面の笑みになった。
「うん! 絶対逃さない!」
蓮にギュッと抱きしめられ、キスされた。
「んッ」
角度を変えて、何度も何度も確認するようにキスをした。
「晴翔、好き……大好き……」
そのうち、蓮の舌が入ってきて、そのまま貪られるように口付けされた。
「ぷはッ」
「ふふ、晴翔、息しないと」
「出来ないって……んんッ」
俺達は食事もせず、クラスメイトが部屋に戻ってくるまで、深い深い口付けを交わした。
——そして、俺は思った。
キスも、まだまだハードルが高い……と。



