そんなある日の放課後、匠真が校門の前に立っていた。
「未織、ちょっと良い?」
「嫌、行きたくない」
匠真に向かってそう投げ捨てて、私はその場を離れようとする。そんな私の手を匠真はパシッと掴んだ。そのまま人気の少ない校舎裏まで私を連れて行く。
「今の未織の青春が壊れているのって俺のせいだろ?」
「まず壊れてないから」
「未織の正義って共感なんだろ?」
「……」
「俺さ、未織って自分の意見がないわけじゃないと思うんだよね。ただ自分の意見を優先するより、共感を優先したがっているように見える」
そうだよ、共感より優先するものなんてない。
「なぁ、共感しなかったらどうなるんだ?」
そんなの決まっている。
「共感しなかったら、嫌われるの」
「なるほどな」
匠真は何かに納得したようだった。
「共感は未織なりの自己防衛か。嫌われない、傷つけられないための手段」
匠真が言っていることが事実であろうと、違っていようとどうでも良い。共感は私なりの正義なのだから。
「なぁ、俺。未織に謝らないといけないことある」
不穏な謝罪。それは青春が完全に崩壊する音。
匠真が取り出したのはスマホだった。そこには匠真と響ちゃんとのトーク画面が映っていた。
「俺、事前に苑里に響ちゃんの連絡先を聞いていて、苑里に送ったタイミングと同時に響ちゃんにもあの録音を送ったんだよね」
まだ壊れないで。どうかまだ戻れる段階でいて。私の青春よ。
その録音に対する響ちゃんの返信は一言だけだった。
『知ってる』
もう私たちは普通の形には戻れないのかもしれない。
「未織、ちょっと良い?」
「嫌、行きたくない」
匠真に向かってそう投げ捨てて、私はその場を離れようとする。そんな私の手を匠真はパシッと掴んだ。そのまま人気の少ない校舎裏まで私を連れて行く。
「今の未織の青春が壊れているのって俺のせいだろ?」
「まず壊れてないから」
「未織の正義って共感なんだろ?」
「……」
「俺さ、未織って自分の意見がないわけじゃないと思うんだよね。ただ自分の意見を優先するより、共感を優先したがっているように見える」
そうだよ、共感より優先するものなんてない。
「なぁ、共感しなかったらどうなるんだ?」
そんなの決まっている。
「共感しなかったら、嫌われるの」
「なるほどな」
匠真は何かに納得したようだった。
「共感は未織なりの自己防衛か。嫌われない、傷つけられないための手段」
匠真が言っていることが事実であろうと、違っていようとどうでも良い。共感は私なりの正義なのだから。
「なぁ、俺。未織に謝らないといけないことある」
不穏な謝罪。それは青春が完全に崩壊する音。
匠真が取り出したのはスマホだった。そこには匠真と響ちゃんとのトーク画面が映っていた。
「俺、事前に苑里に響ちゃんの連絡先を聞いていて、苑里に送ったタイミングと同時に響ちゃんにもあの録音を送ったんだよね」
まだ壊れないで。どうかまだ戻れる段階でいて。私の青春よ。
その録音に対する響ちゃんの返信は一言だけだった。
『知ってる』
もう私たちは普通の形には戻れないのかもしれない。



