《 SIDE : 匠真 》
双子の妹、苑里とは当たり前のように比べられて生きてきていた。そして、両親は学力主義者だった。
苑里の頭も俺の頭も悪くはなかったが、苑里が95点を取るテストで、俺は90点だった。どれだけ頑張っても、この5点の差を埋めることは出来なかった。苑里が怠け者なら超えられたかもしれないが、苑里も俺も両親に認められるために頑張っていた。頑張って、最大限の力を出して、95点と90点だった。その5点の差で両親は苑里を溺愛した。
小学生の時に世界の残酷さを知り、
中学一年生でもがき、
中学二年生で諦めを知り、
中学三年生で悟った。
この5点を埋められることはないと。それからだった。俺は苑里を「下に見れる」瞬間が大好きになった。どんな小さなことでも良い。苑里が苦手な科目を教えることに快感を覚え、苑里の興味のないファッションでも苑里がジャージで歩いている横でお洒落な服を着ることが楽しかった。中学の時から苑里は割とハッキリとものを言う性格だった。俺も同じタイプだったが、中学の時に苑里だけ運悪くクラスで浮いた。俺はそれが嬉しくて嬉しくて堪らなかった。
なのに、苑里は高校で友達が出来たと嬉しそうに俺に話した。
どこかイラついていた心は、苑里が友達だと話していた未織を見た時に治まった。苑里を仲間外れにしようとしている姿を見て、正直「ざまぁみろ」と苑里を嘲笑った。
「お前が海老原 未織?」
話しかけた未織は思ったよりも面白いやつだった。
「響ちゃんには言わないでっ!!」
ああ、これは使える。もっと苑里を下に見れる光景を作れると思った。
「苑里ともっと仲良くなって」
苑里とこれから親友になるやつは、苑里のことが大嫌い。そして、それを俺は知っている。気分が良すぎる。だって、これから苑里が嬉しそうに話す友達の話は全て虚構だと分かるのだから。苑里の周りの人間関係をぐちゃぐちゃにしたかった。苑里が気づかないだけで、苑里の人間関係は俺の手のひらの上にある。それが楽しくて堪らない。
もっともっと壊さないと。この気持ちは満たされない。
「苑里、今日の高校楽しかった?」
ついからかうように家でそう聞いてしまう。
「楽しかったよ! 未織と響ちゃんがね!」
楽しそうに話す苑里の言葉は何故か耳を通り抜けていく。
ああ、いけない。ちゃんとこの状況を楽しまないと。楽しくて堪らないのに。なんでまだ満たされないのだろう?
双子の妹、苑里とは当たり前のように比べられて生きてきていた。そして、両親は学力主義者だった。
苑里の頭も俺の頭も悪くはなかったが、苑里が95点を取るテストで、俺は90点だった。どれだけ頑張っても、この5点の差を埋めることは出来なかった。苑里が怠け者なら超えられたかもしれないが、苑里も俺も両親に認められるために頑張っていた。頑張って、最大限の力を出して、95点と90点だった。その5点の差で両親は苑里を溺愛した。
小学生の時に世界の残酷さを知り、
中学一年生でもがき、
中学二年生で諦めを知り、
中学三年生で悟った。
この5点を埋められることはないと。それからだった。俺は苑里を「下に見れる」瞬間が大好きになった。どんな小さなことでも良い。苑里が苦手な科目を教えることに快感を覚え、苑里の興味のないファッションでも苑里がジャージで歩いている横でお洒落な服を着ることが楽しかった。中学の時から苑里は割とハッキリとものを言う性格だった。俺も同じタイプだったが、中学の時に苑里だけ運悪くクラスで浮いた。俺はそれが嬉しくて嬉しくて堪らなかった。
なのに、苑里は高校で友達が出来たと嬉しそうに俺に話した。
どこかイラついていた心は、苑里が友達だと話していた未織を見た時に治まった。苑里を仲間外れにしようとしている姿を見て、正直「ざまぁみろ」と苑里を嘲笑った。
「お前が海老原 未織?」
話しかけた未織は思ったよりも面白いやつだった。
「響ちゃんには言わないでっ!!」
ああ、これは使える。もっと苑里を下に見れる光景を作れると思った。
「苑里ともっと仲良くなって」
苑里とこれから親友になるやつは、苑里のことが大嫌い。そして、それを俺は知っている。気分が良すぎる。だって、これから苑里が嬉しそうに話す友達の話は全て虚構だと分かるのだから。苑里の周りの人間関係をぐちゃぐちゃにしたかった。苑里が気づかないだけで、苑里の人間関係は俺の手のひらの上にある。それが楽しくて堪らない。
もっともっと壊さないと。この気持ちは満たされない。
「苑里、今日の高校楽しかった?」
ついからかうように家でそう聞いてしまう。
「楽しかったよ! 未織と響ちゃんがね!」
楽しそうに話す苑里の言葉は何故か耳を通り抜けていく。
ああ、いけない。ちゃんとこの状況を楽しまないと。楽しくて堪らないのに。なんでまだ満たされないのだろう?



