《 SIDE : 匠真 》

「苑里、早く準備しろよ。近くするぞ」
「……え」
「何だよ」
「いつも私のこと置いて先に行くのに」
「たまには別にいいだろ」

 もう逃げない。苑里を(ひが)んでも前に進めない。




《 SIDE : 苑里 》

「苑里、これいる? 結構使いやすかったよ」
「あー、ごめん。要らない。自分のが気に入っているから」

 私は変わらない。このままの自分が好きだから。




《 SIDE : 響子 》

「響子って呼んで良い?」
「いいよ。好きなように呼んで」

 二人が前に進むなら、私だって変わりたい。自分の目で相手を判断するように、相手にどこを見られても誇れる自分でありたい。





《 SIDE : 未織 》

 今日も教室の扉を開ければ、二人が駆け寄って来てくれる。

「未織、コンビニでグミ買ってきたの。一個いる?」

 共感する?

 ねぇ、今の私はどうしたい?



「一個欲しい!」



 無理に変わる必要ない。急がない。


「未織、髪下ろさないの?」


 この言葉には共感する?


「うーん、ポニーテール気に入っているからこのままで良いかも!」


 言いたいことは言って、譲れないことも作ろう。

 共感しないと機嫌が悪くなる人なんてもうどうでも良い。

 これからは自分の意見も大切にしていくの。

 


 この世界には沢山の考え方が溢れている。

 自分の意見をハッキリ言う子、双子の妹を羨む兄、「可哀想」という言葉が大嫌いな子。

 そして、「共感」しかしない子。

 誰が悪い、誰が間違っている。決めつけられない。でも、私は「共感」しかしない自分が嫌いだった。

 ならば、前に進むしかない。変化を恐れてばかりじゃいられない。

 まだこんな所で止まっていられない。




fin.