半月後。
今日も私の席に実里が近づいてくる。
「広奈、今日もバイト?」
「そう、稼がないとだから」
「そっかー、無理しちゃ駄目だよ?」
「うん」
あの日の後、私は自分の家庭状況を実里に話した。実里は私の「大切なもの」だと思ったから。
お母さんに関しては、まだ判断出来ていない。でも、成人するまではどうせ家を出ることは難しい。だから、あと約二年の間に決めたら良い。
二年あれば、自分の大切のものも、もっと目に見えてくるだろう。
その時、ガラッと教室の扉が開いて、久しぶりに本当の担任が入ってくる。
「あー、榊先生だ! 休暇終わったのー?」
「そうですよー。皆さん、立花先生に聞かなかったの? 昨日伝えてって言っておいたのに」
「聞いてないー!」
教壇に立つ昨日とは違う先生。そして、懐かしい本当の担任。教壇の前の席に座る私と榊先生は、パッと目が合った。
「倉持さん、昨日立花先生は私の復帰のことを言わなかったの?」
榊先生がもう一度、私に確認する。
「聞いてないです」
「あら、忘れたのかしら。まぁ、いいわ。立花先生の代打担任はどうだった?」
「うーん、榊先生の方が好きですね……」
「あら、倉持さんは先生の機嫌をとるのが上手ね」
また日常が始まる。少しの心の変化を添えながら。
fin.
今日も私の席に実里が近づいてくる。
「広奈、今日もバイト?」
「そう、稼がないとだから」
「そっかー、無理しちゃ駄目だよ?」
「うん」
あの日の後、私は自分の家庭状況を実里に話した。実里は私の「大切なもの」だと思ったから。
お母さんに関しては、まだ判断出来ていない。でも、成人するまではどうせ家を出ることは難しい。だから、あと約二年の間に決めたら良い。
二年あれば、自分の大切のものも、もっと目に見えてくるだろう。
その時、ガラッと教室の扉が開いて、久しぶりに本当の担任が入ってくる。
「あー、榊先生だ! 休暇終わったのー?」
「そうですよー。皆さん、立花先生に聞かなかったの? 昨日伝えてって言っておいたのに」
「聞いてないー!」
教壇に立つ昨日とは違う先生。そして、懐かしい本当の担任。教壇の前の席に座る私と榊先生は、パッと目が合った。
「倉持さん、昨日立花先生は私の復帰のことを言わなかったの?」
榊先生がもう一度、私に確認する。
「聞いてないです」
「あら、忘れたのかしら。まぁ、いいわ。立花先生の代打担任はどうだった?」
「うーん、榊先生の方が好きですね……」
「あら、倉持さんは先生の機嫌をとるのが上手ね」
また日常が始まる。少しの心の変化を添えながら。
fin.