"ギターは俺の武器であり、隠れる為の盾でもある"
ーーーーーーー【Buraiann・May 】 イギリス最高のロックバンド、𝓠𝚞𝚎𝚎𝚗のギタリスト
去年の今頃は、きっとコートを着ていたはずだ。 今年は気温が妙に生暖かい。だから気味が悪い。
生暖かいのは、気温だけでは無い。俺の周りの目もだ。
留年を告げられたあの日、ドヤされると思ってそれを伝えた俺に、
親父は「そうか。」とだけ言い、何も言わずに出て行った。
それだけだった。
俺の人生、何もかもがつまらない。
つまらなくしたんだ。俺が、自分で。
ーーー。全ては俺の所為だ。
怖気付いた、あのライブから。
『今日から皆さんの担任となりました、大正 琴音 《オオタダ コトネ》と申します。
……。なんて、堅苦しいのはおいといて〜!! ウェぇぇーイお前ら!! 入学おめでとう‼️』
……。少し、いや結構変な……。個性的、個性的な人だな…。
『俺ら、同じクラスらしーな! 良かったな〜』
隣の席の彼は、この前知り合った共鳴君だ。
『オレさ〜、初見演奏の課題曲がめっちゃ簡単な奴で、 エリーゼのために だったんよ。
命拾いしたわ〜!マジで。』
いいな〜。僕もせめて、音符がある曲が弾きたかったなぁ……。
帰蝶『皆さんはじめまして、って言いたいとこなんやけど…。
六弦、興戸 、お前ら、また1年生かよwww 』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー?
どういうことだ?
???①『……。 すんません。』
???②『センセェ~〜、なんで自分らが留年しなきゃいけないンすかァ? 』
帰蝶『お前らだけだぞ、単位が足りんかったのは―。 そんな呑気に構えててもいいんか?
次やったら 退 学 なんやけど。 』
②『そ こ を ‼️ 何とか御願いしゃーっすよぉ〜〜』
帰蝶『アホか』
声がした方を見ると、どうやらこの二人が 留年生 らしかった。
一人は、如何にもやる気無し、と言いたげな態度で だらしなく机の上に長ズボンをはいた両足を乗せ、ぐたっと肩に手を組んでいた。
さっき口答えしていたのは、どうやらこの人らしい。
オレンジ色とピンク色を足して割った様な独特な髪色で、アシメントリーな短髪だ。シャツの上からは 興戸と苗字が刺繍されたジャージをぐちゃっと羽織っている。
そしてもう1人はーーーーーーーーーーーーーーーーー。
さっきの生徒とは対照的に、グッタリと俯いて表情が見えない。 黒髪の短髪の先は 金色のグラデーションになっており、頭の後ろの方でただ無造作に束ねてあった。
片方の留年生とは打って変わって、この生徒は制服は着崩してなかった。
ただ、彼の雰囲気は 最早希望が無い、もう生きる気力が残っていない、そんな 無気力なオーラを纏っていた。 恐らく、この男子が「六弦」なのだろう。
その後は、教科書の配布や簡単な説明 クラスメイトたちのの自己紹介に費やされた。
そうして入学初日の授業時間は過ぎていった。
『おつかれ~~つっ メガネ!!』
『あっ、お疲れ様です。共鳴君。』
『よーやく自由時間になったな! 早速メシ行こーぜ‼️ 』
あぁ、食堂のことかー……。
聖帝学園の食堂は、1階の合唱ホールのすぐ側にあった。
然し、学園自体がえげつない広さなので、見つけるまでには随分と途方も無い時間が掛かってしまった。
『ハア……。 学校の癖に、何でこんな迷宮みたいな造りしてんだよぉ……。
どんだけぇ~……。』
『け、結構 時間かかっちゃいましたね―。 もしかしたら、もう閉店してるかも……。』
『ハアア!? マジで困るって…』
軽く口論になりながらも僕らはグダグダと食堂に入る。
食堂内は流石の広さだったけれど、時間も相まって 生徒の人数はそぞろになってきているところだった。
入口すぐ近くに、見渡せるくらいの大きさのメニュー表が写真と共に設置してあり、各々自由に選べるようだった。
『なぁー、お前さ、なん頼むん?』
『えぇと……。 親子丼にしよっかなー?』
『マジ?じゃあオレは〜。カツ丼にしよっーと‼️』
そう言って、共鳴君はトテトテと受け取り口の方へと歩んでいく。
『あ、ちょっと待って下さい…。』
『あぁ? なんすかー?』
『カツ丼、あと一つで売り切れだっte……。』
『『はァ!? もっと早く言ってよ馬鹿ァ‼️』』
残り一メートル位の距離で、猛然とダッシュしだした……。
ごめん。次はもっと早く伝えますー。
『すみませーん!! カツ丼1個下sa……!』
???『あ、14番のカツ丼1つお願いします。』
店員『かしこまりましたー!』
……。あっ。
共鳴『……。huh???』
5秒くらい。
たったそれだけの差で、こうも簡単に人は絶望できるのか。
トレーを持ったまま此方をチラッと覗く瞳。風で揺れる特徴的な水色のポニーテール。
この女子には何処か見覚えがあった。
『あーー!! お前はァ! あの時《入学試験の時》の!』
???『は? 誰ですか あんた?』
どうやら共鳴君も彼女と面識があったらしい。
だが向こうは違ったようだ。
『音無? であってるよね? オレだよー! テストの時後ろの席だった』
音無『 そうだけど ー。 他の人とか、そんなのいちいち覚えてる暇、無いから。』
『御願い致します!!! そのカツ丼 ラス1だからさ!!
オレに譲って頂きたく……。 』
音無『『無理。』』
『……。厳しいって……。』
まるでゲームのデータを親に消されたかのような、あまりに見事な落ち込みっぷり。
『ま、まぁ……。 他のメニューはまだ残ってるからさ……。
その、元気出してください??』
『わ、分かったから……。
……。月見うどんで御願いします。』
店員『かしこまりました。
350ユーロンでございます。』
『え、??? お金いるのぉ??』
店員 『え』
音無『は?』
僕『え?……。えっ?』
即座に顔を見合わす僕ら2人。
考えていたことはどうやら同じだったらしい。
共鳴『だ、だからほら……。
学校側が資金出して下さるとかじゃなくて💦???』
白い目をした女性陣。
音無さんに至っては、最早 干からびた蛙を見るような、侮蔑のこもった眼差しをこちらに刺してくる。
???『あ〜。 ちょっと良いすかぁ?』
店員『す、すみません。今ちょっと……。』
???『そこ御三方。 自分が奢るッスよ。』
『『え?』』
音無『な、?』
???『良いの良いの〜。 気にせんで? お金持っとらんのやろ?
これでも自分、《先輩》なんでぇ。』
店員『は、はい。 分かりました。……。』
和柄な趣向の財布をはためかせながら、【興戸 羅夢】は、ニマニマと笑っていた。
『あ、ありがとうございます……。
興戸センパi……。』
『ラムちゃん。 で良いっすよ〜』
『えぇ???』
『自分、堅苦しーの嫌いなんで。』
『で、ですが……。』
『良いから良いから〜~www』
『……。』
『……。 ラムちゃん、先輩‼️』
間髪入れずに共鳴君のツッコミが響く。
共鳴『おい? どーしてそうなった💦 』
そうやって、少々ゴタゴタしてる内に、さっき頼んだ料理が届いた。
久しぶりに食べる親子丼は、やっぱり格別な味わいだった。
噛み締める度に溢れかえる、肉汁の旨みと、仄かに薫る卵とキビ砂糖の優しい甘味。
何よりも、まだ肌寒い時期だったので、ホカホカの白米の温もりが嬉しかった。
『ら、ラム先輩、本当にすみません……。』
『お気に為さらず〜~。 自分、どうせ味分からないっすから。』
――!
『そ、それって……!』
『そのとーり! ムジークの【代償】ってやつ??』
『……。』
『な、なんか……。
本当、申し訳ないです。』
『ハハッ!! 別に大丈夫っすよ〜。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。 実の所、君らに御願いがあって。』
急に声のトーンが変わった、 声だけじゃない。
……。 威圧的な雰囲気がひしひしと、痛いくらいに伝わって来る。
『……。 何ですか? 頼みって。』
『ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
御願い、聞いてくれるらしいね?』
『あ・の・さ!』
待ってましたとばかりに、羅夢先輩は クワッと此方に身を乗り出してきた。
まるで黒真珠の様な澄み渡る瞳を、更に輝かせて 彼(彼女??)は問い掛ける。
『君ら、-バンド-に興味無い??』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
成程、文字通り【うまい話には裏がある】という訳だ。
ーーーーーーー【Buraiann・May 】 イギリス最高のロックバンド、𝓠𝚞𝚎𝚎𝚗のギタリスト
去年の今頃は、きっとコートを着ていたはずだ。 今年は気温が妙に生暖かい。だから気味が悪い。
生暖かいのは、気温だけでは無い。俺の周りの目もだ。
留年を告げられたあの日、ドヤされると思ってそれを伝えた俺に、
親父は「そうか。」とだけ言い、何も言わずに出て行った。
それだけだった。
俺の人生、何もかもがつまらない。
つまらなくしたんだ。俺が、自分で。
ーーー。全ては俺の所為だ。
怖気付いた、あのライブから。
『今日から皆さんの担任となりました、大正 琴音 《オオタダ コトネ》と申します。
……。なんて、堅苦しいのはおいといて〜!! ウェぇぇーイお前ら!! 入学おめでとう‼️』
……。少し、いや結構変な……。個性的、個性的な人だな…。
『俺ら、同じクラスらしーな! 良かったな〜』
隣の席の彼は、この前知り合った共鳴君だ。
『オレさ〜、初見演奏の課題曲がめっちゃ簡単な奴で、 エリーゼのために だったんよ。
命拾いしたわ〜!マジで。』
いいな〜。僕もせめて、音符がある曲が弾きたかったなぁ……。
帰蝶『皆さんはじめまして、って言いたいとこなんやけど…。
六弦、興戸 、お前ら、また1年生かよwww 』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー?
どういうことだ?
???①『……。 すんません。』
???②『センセェ~〜、なんで自分らが留年しなきゃいけないンすかァ? 』
帰蝶『お前らだけだぞ、単位が足りんかったのは―。 そんな呑気に構えててもいいんか?
次やったら 退 学 なんやけど。 』
②『そ こ を ‼️ 何とか御願いしゃーっすよぉ〜〜』
帰蝶『アホか』
声がした方を見ると、どうやらこの二人が 留年生 らしかった。
一人は、如何にもやる気無し、と言いたげな態度で だらしなく机の上に長ズボンをはいた両足を乗せ、ぐたっと肩に手を組んでいた。
さっき口答えしていたのは、どうやらこの人らしい。
オレンジ色とピンク色を足して割った様な独特な髪色で、アシメントリーな短髪だ。シャツの上からは 興戸と苗字が刺繍されたジャージをぐちゃっと羽織っている。
そしてもう1人はーーーーーーーーーーーーーーーーー。
さっきの生徒とは対照的に、グッタリと俯いて表情が見えない。 黒髪の短髪の先は 金色のグラデーションになっており、頭の後ろの方でただ無造作に束ねてあった。
片方の留年生とは打って変わって、この生徒は制服は着崩してなかった。
ただ、彼の雰囲気は 最早希望が無い、もう生きる気力が残っていない、そんな 無気力なオーラを纏っていた。 恐らく、この男子が「六弦」なのだろう。
その後は、教科書の配布や簡単な説明 クラスメイトたちのの自己紹介に費やされた。
そうして入学初日の授業時間は過ぎていった。
『おつかれ~~つっ メガネ!!』
『あっ、お疲れ様です。共鳴君。』
『よーやく自由時間になったな! 早速メシ行こーぜ‼️ 』
あぁ、食堂のことかー……。
聖帝学園の食堂は、1階の合唱ホールのすぐ側にあった。
然し、学園自体がえげつない広さなので、見つけるまでには随分と途方も無い時間が掛かってしまった。
『ハア……。 学校の癖に、何でこんな迷宮みたいな造りしてんだよぉ……。
どんだけぇ~……。』
『け、結構 時間かかっちゃいましたね―。 もしかしたら、もう閉店してるかも……。』
『ハアア!? マジで困るって…』
軽く口論になりながらも僕らはグダグダと食堂に入る。
食堂内は流石の広さだったけれど、時間も相まって 生徒の人数はそぞろになってきているところだった。
入口すぐ近くに、見渡せるくらいの大きさのメニュー表が写真と共に設置してあり、各々自由に選べるようだった。
『なぁー、お前さ、なん頼むん?』
『えぇと……。 親子丼にしよっかなー?』
『マジ?じゃあオレは〜。カツ丼にしよっーと‼️』
そう言って、共鳴君はトテトテと受け取り口の方へと歩んでいく。
『あ、ちょっと待って下さい…。』
『あぁ? なんすかー?』
『カツ丼、あと一つで売り切れだっte……。』
『『はァ!? もっと早く言ってよ馬鹿ァ‼️』』
残り一メートル位の距離で、猛然とダッシュしだした……。
ごめん。次はもっと早く伝えますー。
『すみませーん!! カツ丼1個下sa……!』
???『あ、14番のカツ丼1つお願いします。』
店員『かしこまりましたー!』
……。あっ。
共鳴『……。huh???』
5秒くらい。
たったそれだけの差で、こうも簡単に人は絶望できるのか。
トレーを持ったまま此方をチラッと覗く瞳。風で揺れる特徴的な水色のポニーテール。
この女子には何処か見覚えがあった。
『あーー!! お前はァ! あの時《入学試験の時》の!』
???『は? 誰ですか あんた?』
どうやら共鳴君も彼女と面識があったらしい。
だが向こうは違ったようだ。
『音無? であってるよね? オレだよー! テストの時後ろの席だった』
音無『 そうだけど ー。 他の人とか、そんなのいちいち覚えてる暇、無いから。』
『御願い致します!!! そのカツ丼 ラス1だからさ!!
オレに譲って頂きたく……。 』
音無『『無理。』』
『……。厳しいって……。』
まるでゲームのデータを親に消されたかのような、あまりに見事な落ち込みっぷり。
『ま、まぁ……。 他のメニューはまだ残ってるからさ……。
その、元気出してください??』
『わ、分かったから……。
……。月見うどんで御願いします。』
店員『かしこまりました。
350ユーロンでございます。』
『え、??? お金いるのぉ??』
店員 『え』
音無『は?』
僕『え?……。えっ?』
即座に顔を見合わす僕ら2人。
考えていたことはどうやら同じだったらしい。
共鳴『だ、だからほら……。
学校側が資金出して下さるとかじゃなくて💦???』
白い目をした女性陣。
音無さんに至っては、最早 干からびた蛙を見るような、侮蔑のこもった眼差しをこちらに刺してくる。
???『あ〜。 ちょっと良いすかぁ?』
店員『す、すみません。今ちょっと……。』
???『そこ御三方。 自分が奢るッスよ。』
『『え?』』
音無『な、?』
???『良いの良いの〜。 気にせんで? お金持っとらんのやろ?
これでも自分、《先輩》なんでぇ。』
店員『は、はい。 分かりました。……。』
和柄な趣向の財布をはためかせながら、【興戸 羅夢】は、ニマニマと笑っていた。
『あ、ありがとうございます……。
興戸センパi……。』
『ラムちゃん。 で良いっすよ〜』
『えぇ???』
『自分、堅苦しーの嫌いなんで。』
『で、ですが……。』
『良いから良いから〜~www』
『……。』
『……。 ラムちゃん、先輩‼️』
間髪入れずに共鳴君のツッコミが響く。
共鳴『おい? どーしてそうなった💦 』
そうやって、少々ゴタゴタしてる内に、さっき頼んだ料理が届いた。
久しぶりに食べる親子丼は、やっぱり格別な味わいだった。
噛み締める度に溢れかえる、肉汁の旨みと、仄かに薫る卵とキビ砂糖の優しい甘味。
何よりも、まだ肌寒い時期だったので、ホカホカの白米の温もりが嬉しかった。
『ら、ラム先輩、本当にすみません……。』
『お気に為さらず〜~。 自分、どうせ味分からないっすから。』
――!
『そ、それって……!』
『そのとーり! ムジークの【代償】ってやつ??』
『……。』
『な、なんか……。
本当、申し訳ないです。』
『ハハッ!! 別に大丈夫っすよ〜。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。 実の所、君らに御願いがあって。』
急に声のトーンが変わった、 声だけじゃない。
……。 威圧的な雰囲気がひしひしと、痛いくらいに伝わって来る。
『……。 何ですか? 頼みって。』
『ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
御願い、聞いてくれるらしいね?』
『あ・の・さ!』
待ってましたとばかりに、羅夢先輩は クワッと此方に身を乗り出してきた。
まるで黒真珠の様な澄み渡る瞳を、更に輝かせて 彼(彼女??)は問い掛ける。
『君ら、-バンド-に興味無い??』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
成程、文字通り【うまい話には裏がある】という訳だ。