冴木君にボコボコにされて、僕は病院に連れていかれた。
 蒼唯が入院している病院だ。

 頬は酷く腫れたけれど、幸い、骨は折れていなかった。
 これを戦士の勲章なんて言ったら、誰か笑ってくれるだろうか。

 ……蒼唯は、笑ってくれるだろうか。

 いやいや、僕はもう、蒼唯の友達ではいられないし。
 だから、もう話すことはないだろうし。

 なんて言いながら、蒼唯の病室に足が向いてしまっているあたり、やっぱりただの強がりみたいだ。

 でも、ドアを開ける勇気がなかった。

 大人しく帰ろうとしたそのとき、ドアが開けられた。

「……優誠(ゆうせい)?」

 まさか、蒼唯が開けるなんて思ってもいなかった。
 蒼唯は僕の顔を見て驚いている。

 まあ、それはそうだろう。

「えっと……久しぶり」
「いや、久しぶりだけど……そのケガ、どうしたの」

 言うか、言うまいか。
 どうせなら、言ってしまえ。

「あー……戦士の勲章?」

 蒼唯はポカンと口を開けている。

 ……言わなきゃよかった。

「……ふふ、なにそれ」

 笑ってる……蒼唯が、くだらないって、笑ってくれてる……

 やっぱり無理だ。
 蒼唯と友達をやめるなんて。

 僕はずっと、蒼唯とこうやってくだらないことで笑いあっていたい。

「ちょっと優誠、なんで泣いてるの」
「はー? 泣いてねーし!」

 僕がケガした理由も、泣いてる理由も、全部、蒼唯には教えない。

 だけど、これからは全力で伝えるんだ。

 僕は蒼唯の味方だって。