『舞台で脚本や演技を侮辱すれば呪われる』
 そんなありがちな噂が、月桂学園(げっけいがくえん)の演劇部にはあった。
 部員以外の生徒たちは、よくある学校の七不思議として、面白半分に知っているだけの、この噂。
 しかし、当の演劇部員たちはこの噂を信じ、舞台での失敗を犯さぬよう、日々稽古を続けていた。前例があるわけではない。あくまで、彼らのプライドだ。
 そして今日、月桂学園演劇部は、新たな脚本で、生徒の前で公演を行う。
 偶然迷い込んだ村娘。
 酒好きで聡明な主人。
 心優しい奥様。
 少しわがままなお嬢様。
 面倒見が良い見習い召使。
 無邪気で明るい見習いメイド。
 物腰柔らかな執事。
 お調子者なメイド。
 これは、彼らが織りなす吹雪の屋敷で起こる事件の物語である。