そんな三浦園子の名前を、結人は10日前に口にしていた。
 私が彼と最後に電話をした日のことだ。

——あ、ああ。いや、でもそんなこと、ありえない……。

 園子の名前を口にしてから、結人の様子がおかしくなった。何かに怯えた口調になり、錯乱しているかのようだった。
 普段冷静な彼が、なぜあんなにも取り乱していたのか。その時の私は一気に体調が悪くなったこともあり、結人がおかしくなった原因について、深く考える余裕がなかった。
 でももし、三浦園子という人物に何かしらのヒントがあるのだとすれば——。
 ずっと結人のことが好きだった彼女のことだから、もしかしたら大学に進学してからも、結人と連絡をとっていたのかもしれない。私が知らないだけで、二人はずっと繋がっていたのかも。
 だとすれば、三浦園子は結人の失踪について、何か知っているかもしれない。
 
「彼女の連絡先は……」

 メッセージアプリを開いて、通っていた高校の「3年1組」のグループトークを開く。最近ではめっきり動いていないトークルームだが、一応メンバーは元クラスメイトたちで、グループを退会しているような人もいなかった。
 グループメンバーの数は31人。確か、3年1組は32人クラスだったような気がする。
 メンバーの一人一人の名前を確認していく。女子の中には結婚して苗字が変わっている人もいて、やや探すのに手間がかかった。アイコンと名前を丁寧に見ていったが、その中に三浦園子らしい人物はいなかった。

「やっぱりか」

 32人クラスなのに31人しか登録がないということは、誰か一人が抜けている計算になる。その一人が園子だったとしても、まったく不思議ではない。おそらく、最初からグループのメンバーに誘われていなかったに違いない。不登校にもなっていたし、故意でなくとも、彼女がグループから漏れている理由は察しがついた。

 こうなると、園子に直接連絡する手段はないのだが——と諦めかけたところで、ふとあることを思いついた。
 そうだ。園子だって何かしらのSNSはやっているのではないか。
 今の時代、ネットで名前を検索すればその人がやっているSNSや、その人が働いている会社とか、分かることだってある。ブログを書いていればブログの記事が出てくるだろう。もちろん、本名で何かしらの活動をしていた場合の話だが。
 
 思い立ったが吉日、私は早速スマホでネットを開き、「三浦園子」という名前を検索してみた。ほんの少しでもいい。彼女と繋がれる情報があれば知りたい——その一心だった。

「え……」

 しかし、画面に現れた検索結果を見て、私は絶句する。
 そこに映し出されていたのは、園子のSNSのアカウント情報などではなかった。ネットのニュース記事。検索画面の一ページ目はすべて記事で埋まっていた。