-----------------------------------------------
萌生さん

ご返信ありがとうございます!
やはり、萌生さんも、「69,」からのコメントのせいで投稿を控えていらっしゃったんですね。
決して萌生さんのせいじゃありませんよ!
すべて、「69,」が悪いんです。
どうかご自身を責めないでください。

それから、私の心配をしてくださってありがとうございます。
自分で吐き出しておいて、余計なことを言ってしまったかもとちょっぴり後悔していたので、優しい言葉をかけてくださってほっとしました。
自分の経験を作品に反映させてしまうのは、もうどうしようもないですね(笑)
彼とは上手くいかなかったですけれど、これからもっと素敵な人に出会えるよう、頑張ります!

萌生さんは気になる男性がいらっしゃるんですね。
(あ、こういう恋愛ネタは大好きなので、いつでもウェルカムですよ♡)
しかも、ノベマ!で活動されてる方! 榊しのぶさん、私一度その方の作品を拝読したことがあります。
というか、男性だったんですね。中性的なお名前なのでどっちかな、って思ってたんです。作品を拝見して、なんとなく女性かと思っていたので男性なのは少し驚きですね。

『十年越しのこの愛にさよならを』——今連載されている彼の作品、最新話まで読んでいます。ここ1ヶ月半ぐらい、更新はされてないみたいなのでちょっと残念だなーって思ってたところです。
この作品、登場人物に既視感があるなって思ってたら、『莠ャ驛ス蟄ヲ逕滓オェ貍ォ』に出てくる人たちだったんですね。『莠ャ驛ス蟄ヲ逕滓オェ貍ォ』の二次創作かと思ってたんですけど、作者、ご本人だったんですね。私、『莠ャ驛ス蟄ヲ逕滓オェ貍ォ』が大好きだったので、榊さんの『十年越しのこの愛にさよならを』にもすっと入り込めたんでしょうね。でも『莠ャ驛ス蟄ヲ逕滓オェ貍ォ』が絶版になってしまったのは残念でした……。もっとたくさんの人に読んでもらいたい作品だったので、今でも悔しいです。

あ、すみません、今母から電話がかかってきました。
そろそろ終わりますね。
こちらこそ、何かあればまたお話聞かせてください!
-----------------------------------------------



 美月からの返信を見て、私は素直に驚いた。
 彼女が榊しのぶの存在を知っていたこともそうだが、彼の『十年越しのこの愛にさよならを』を読んで、結人の作品と結びつけていたなんて。

「にしてもなんでタイトルのとこ、文字化けしてるんだろ」

 彼女から送られてきたDMの一部が文字化けしていることに違和感を覚えた。
 文字化け解析ツールを使って変換してみると、ちゃんと彼の絶版してしまったデビュー作のタイトルに直された。
 DMのタイトルの部分だけが文字化けしてしまうことに、薄ら寒さを覚えて後ろを振り返る。結人のノベマ!での最新作『十年越しのこの愛にさよならを』に届いていた20件の感想コメントが瞬時にフラッシュバックした。

「結人……」

 ドクン、ドクン、となぜだか猛烈な胸騒ぎを覚えて、美月とのDMのやりとりの画面を閉じる。代わりに結人の連絡先の画面を開いた。
 最後に彼と連絡したのは8月9日のことだったから、彼とのトーク画面はメッセージ履歴の比較的上の方に表示されていた。メッセージは私との通話の履歴を最後に途切れている。この間連絡をしたときは、新刊本の準備で忙しいと言っていた。おそらくお盆休みの間もずっと仕事をしていたんだろう。今はちょっとだけ落ち着いたかな? 彼の仕事の状況は分からなかったが、どうしても今彼に連絡をしなければならないような気がして、私は「最近どう?」とメッセージを送った。

「既読」はすぐにはつかなかった。
もともと返信はマメな方だが、仕事が忙しい時にプライベートの連絡を後回しにしてしまうのは、誰にでもあることだ。逸る気持ちをなんとかなだめて、彼からの返信を待った。

 しかし、待てど暮らせど、返信はこない。
 夕飯を終えてお風呂に入り、寝る前の読書をしている時間も、Xのタイムラインをぼんやりと眺めている時間も、時々結人ともトーク画面を確認していたが、やっぱり連絡はなかった。ついでに「既読」すらついていないことも分かった。

「よっぽど忙しいのね」

 マメな結人が未読スルーをしてしまうほど忙しいのだから、きっと今日はもう返信もこないだろう。仕事が詰まっている時に連絡して申し訳なかったな、という罪悪感を覚える。それからやっぱり心のどこかで、片想いをしている相手から興味を持たれてもいないのかもしれないという自分本位な淋しさが胸を襲った。
 まったく、私はいつもこう。
 自分のことばっかりだから、いまだに気になる彼に振り向いてももらえないのよ。
 高校生の頃から、結人のこと、好きだったのにな——……。

 ノベマ!でのことや、職場で立花先生が休んでいることなど、いろんな不安が重なって、心がぐらついていた。落ち着かない。こんな日にせめて仲の良い友達の一人でもそばにいてくれたらどうってことないのかもしれない。遠くに暮らしている美月のことを思って、彼女に会ってみたいな、なんてまた自分よがりなことを考えていた。

 この日、結局午前0時を回り、自然にやってきた睡魔に襲われるまで、結人からの返信はなかった。