「一時調査を中断……?」
文書の中に示された、まさかの対応に、私は頭の中が混乱していた。
6日前に届いた編集部の吉岡さんからのメールによると、対策本部を立ち上げて調査に乗り出したということだった。文面からも、編集部のみなさんが誠意を持ってこの件に対応してくださっていることが窺えたので、安心していたのだが。その調査を、一時中断するとはどういうことだろうか?
ノベマ!公式アカウントからのお知らせは瞬く間に拡散されていった。引用ポストを見ると、「大変ですね」とか、「お疲れ様です」とか、編集部の方を労う言葉が見受けられる。それは確かにそう思うのだが、調査を中断していることを疑問に思っているのは私だけだろうか。「諸事情があり」と簡単に書かれているが、事情って何? 何か、不測の事態が起きたことだけは想像がつく。でもその内容が全く分からないので、対処を後回しにされたようにも感じてしまい、気持ちがざわざわと揺れた。
私はすぐさま、メールフォルダを開く。もしかしたら、吉岡さんから何かメッセージが来ているかもしれない——そう思ったのだが、メールフォルダは見事に空。どうでもいいレストランの宣伝プロモーションばかりが溜まっていた。
この件について、そのまま見過ごすわけにはいかない。
致し方ない事情があるというのは先ほどXに流れて来た「お知らせ」を見れば分かるのだが、当事者である私にとっては今後の創作生活に関わる死活問題だ。
編集部の方も混乱している中申し訳ないと思いつつ、勇気を出して「新規メール作成」のボタンを押した。
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2024/8/5 18:15
From: hakatamei@******
To:support.novema@*******
【不適切コメントの件につきまして】
ノベマ!編集部
吉岡直樹様
お世話になっております。
度々ご連絡を差し上げ失礼いたします。
本日Xの方で、ノベマ!公式アカウントより、<ノベマ!をご利用くださっている皆様へ重要なお知らせ>が投稿されたかと存じます。私も先ほど拝見いたしました。
様々なご事情がある中、あのようなお知らせを出されたのだと推測します。
いちノベマ!ユーザーである私には分かりかねることがあるかと思いますので、ご事情は承知いたしました。
ですが、調査を中断された件については、少々納得のいかないところがあります。
正直、今後も「69,」からの攻撃が止まないかもしれないと思うと、安心して作品を投稿することができないので……。
……そちらでの決定事項に口出しをしてしまい、申し訳ございません。
もし差し支えなければ、このメールでだけでも、ご事情をご教示願えないでしょうか?
もちろん、教えていただいたことは公の場で口外することはいたしません。
ご検討いただけますと幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
葉方萌生
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スターツ出版が会社を挙げて決定した件に関してこうして意見をするのが失礼であることは重々承知していた。だが、やはりこのままでは「69,」を駆逐する根本対策は見つからないままだろう。そうなると私だけでなく、他のユーザーたちもまた不快な思いをすることになる。せめて調査を中断するほどの納得のいく理由を知りたい——その一心で文面を綴った。
十分に文章を見直したあと、意を決して「送信」ボタンを押した。
普段ならば一日ほどで返信が来るのだが、今回はどうだろう。
吉岡さんにも他の仕事があるだろうから、問い合わせばかりには構っていられないとは思う。けれど、どうにかしてあの不愉快な感想コメントをする行為を禁止してほしい——そう願わずにはいられなかった。
文書の中に示された、まさかの対応に、私は頭の中が混乱していた。
6日前に届いた編集部の吉岡さんからのメールによると、対策本部を立ち上げて調査に乗り出したということだった。文面からも、編集部のみなさんが誠意を持ってこの件に対応してくださっていることが窺えたので、安心していたのだが。その調査を、一時中断するとはどういうことだろうか?
ノベマ!公式アカウントからのお知らせは瞬く間に拡散されていった。引用ポストを見ると、「大変ですね」とか、「お疲れ様です」とか、編集部の方を労う言葉が見受けられる。それは確かにそう思うのだが、調査を中断していることを疑問に思っているのは私だけだろうか。「諸事情があり」と簡単に書かれているが、事情って何? 何か、不測の事態が起きたことだけは想像がつく。でもその内容が全く分からないので、対処を後回しにされたようにも感じてしまい、気持ちがざわざわと揺れた。
私はすぐさま、メールフォルダを開く。もしかしたら、吉岡さんから何かメッセージが来ているかもしれない——そう思ったのだが、メールフォルダは見事に空。どうでもいいレストランの宣伝プロモーションばかりが溜まっていた。
この件について、そのまま見過ごすわけにはいかない。
致し方ない事情があるというのは先ほどXに流れて来た「お知らせ」を見れば分かるのだが、当事者である私にとっては今後の創作生活に関わる死活問題だ。
編集部の方も混乱している中申し訳ないと思いつつ、勇気を出して「新規メール作成」のボタンを押した。
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2024/8/5 18:15
From: hakatamei@******
To:support.novema@*******
【不適切コメントの件につきまして】
ノベマ!編集部
吉岡直樹様
お世話になっております。
度々ご連絡を差し上げ失礼いたします。
本日Xの方で、ノベマ!公式アカウントより、<ノベマ!をご利用くださっている皆様へ重要なお知らせ>が投稿されたかと存じます。私も先ほど拝見いたしました。
様々なご事情がある中、あのようなお知らせを出されたのだと推測します。
いちノベマ!ユーザーである私には分かりかねることがあるかと思いますので、ご事情は承知いたしました。
ですが、調査を中断された件については、少々納得のいかないところがあります。
正直、今後も「69,」からの攻撃が止まないかもしれないと思うと、安心して作品を投稿することができないので……。
……そちらでの決定事項に口出しをしてしまい、申し訳ございません。
もし差し支えなければ、このメールでだけでも、ご事情をご教示願えないでしょうか?
もちろん、教えていただいたことは公の場で口外することはいたしません。
ご検討いただけますと幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
葉方萌生
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スターツ出版が会社を挙げて決定した件に関してこうして意見をするのが失礼であることは重々承知していた。だが、やはりこのままでは「69,」を駆逐する根本対策は見つからないままだろう。そうなると私だけでなく、他のユーザーたちもまた不快な思いをすることになる。せめて調査を中断するほどの納得のいく理由を知りたい——その一心で文面を綴った。
十分に文章を見直したあと、意を決して「送信」ボタンを押した。
普段ならば一日ほどで返信が来るのだが、今回はどうだろう。
吉岡さんにも他の仕事があるだろうから、問い合わせばかりには構っていられないとは思う。けれど、どうにかしてあの不愉快な感想コメントをする行為を禁止してほしい——そう願わずにはいられなかった。