(好きな人のために、何ができるのか)
慣れない朝食作りに、体が追いつかない。
また母親に注意されそうなくらい瞼は重いけど、今度こそ無理はしないって約束をした上での朝食作り。
(何もできないって諦めたくないんだよなー……)
できることから、始めてみようとは思った。
できるときは自分で作る。
できないときは、ちゃんと母さんを頼る。
そういう、家族を頼るってやり方を覚えようと思った。
「お母さん、お弁当完成したから。あとは任せるね」
「はーい」
朝の光がまだ薄暗い時間帯に母親と一緒に起きたはずなのに、母親の手際の良さに敵うはずもなく。
眠気が重くのしかかってくる俺に対して、母さんは家族のための昼食の準備を終えてリビングを去っていく。
(くっそー……)
学校の授業でやる調理実習すら、いい思い出がない。
それだけ料理と無縁だった自分が料理を始めるなんて、それこそ無謀な話。
でも、いつまでも料理できないって諦めてたら、上手くなるものも上手くならない。
眠気に負けないように、愛情を込めて作る朝食を準備しようと気合を入れる。
「はよ……」
「おはよう!」
毎日の朝食作りをしてくれている母親がリビングにいなくて、八木沢くんは困惑していると思う。
「無理に早起きしたわけじゃないよ。朝早くに学校に行って、勉強始めようと思って」
本当は、八木沢くんと一緒に朝食を食べるため。
八木沢くんと一緒に過ごす唯一の時間を、大切にしていきたいと思ったから。
「今日の朝食は、納豆雑炊」
テーブルの上には、いつも通り何種類かの小鉢を用意。
朝だから、そんなに品数が多いわけではない。
それでも、魚の唐揚げ・こんにゃくの炒め物・かぼちゃサラダという三品の小鉢が揃うだけで一気に朝食が華やかになる。
「結構、腹持ちよくて、おすすめ」
「ありがと」
八木沢くんが、食事の席に着く。
「八木沢くんは好き嫌いがないって聞いてるけど」
「うん」
「味の好みは教えて」
「俺の好みなんて聞いてたら、料理が続かなくなる」
八木沢くん言葉を受けて、料理に対するやる気が失せると思ったら大間違い。
彼は声も表情も柔らかくて、俺のことを考えてくれてるんだなってことが凄くよく伝わってくるから耳を傾けたくなってしまう。
「八木沢くんの好みを聞くのは、面倒でも苦労でもないよ」
今日も、いただきますの声が重なる。
食事を始めるときの挨拶は一斉にって約束しているわけでもなく、自然と一緒に重なる声が嬉しいって思う。
「朝から揚げ物かよって、重たく感じるかもしれないけど」
魚の唐揚げを口にしようと、箸を運ぶ。
「雑炊の添え物に合うから好きなんだよね」
八木沢くんにも朝食を食べ進めてほしくて、俺の話は聞き流していいよって合図を送る。
すると、八木沢くんも俺と同じ魚の唐揚げを一口目に選んでくれた。
「あ」
「重たい?」
「え、箸が止まらなくなるかも」
「あ、良かった」
八木沢くんの表情が寝起きの顔から、口にしている唐揚げが美味しいって顔に変わっていく。
「本当は、揚げたてが一番美味しいんだけどね」
揚げたてのサクサク感が失われてしまった唐揚げは、油が少し重たく感じてしまう。
申し訳なさそうな表情を浮かべる俺に対して、八木沢くんは一口食べるたびに『美味しい』と言葉を返してくれるから凄いと思う。
(他人の喜ばせ方、知ってるんだもんなぁ)
同い年のはずなのに、八木沢くんだけはずっと大人っぽい。
その大人っぽい雰囲気は幼い頃から芸能界で働いていることとか、お母さんと二人で暮らしてきたってこともあるのかもしれないけど、あまりにもずっと大人っぽいを貫くから、ときどき心配になる。
「柊?」
「八木沢くんは気遣いやさんだなーって思ってたところ」
母親が初めて納豆入りの雑炊を作ってくれたときは、母親は一体何を完成させてしまったのかってって抵抗があった。
慣れない朝食作りに、体が追いつかない。
また母親に注意されそうなくらい瞼は重いけど、今度こそ無理はしないって約束をした上での朝食作り。
(何もできないって諦めたくないんだよなー……)
できることから、始めてみようとは思った。
できるときは自分で作る。
できないときは、ちゃんと母さんを頼る。
そういう、家族を頼るってやり方を覚えようと思った。
「お母さん、お弁当完成したから。あとは任せるね」
「はーい」
朝の光がまだ薄暗い時間帯に母親と一緒に起きたはずなのに、母親の手際の良さに敵うはずもなく。
眠気が重くのしかかってくる俺に対して、母さんは家族のための昼食の準備を終えてリビングを去っていく。
(くっそー……)
学校の授業でやる調理実習すら、いい思い出がない。
それだけ料理と無縁だった自分が料理を始めるなんて、それこそ無謀な話。
でも、いつまでも料理できないって諦めてたら、上手くなるものも上手くならない。
眠気に負けないように、愛情を込めて作る朝食を準備しようと気合を入れる。
「はよ……」
「おはよう!」
毎日の朝食作りをしてくれている母親がリビングにいなくて、八木沢くんは困惑していると思う。
「無理に早起きしたわけじゃないよ。朝早くに学校に行って、勉強始めようと思って」
本当は、八木沢くんと一緒に朝食を食べるため。
八木沢くんと一緒に過ごす唯一の時間を、大切にしていきたいと思ったから。
「今日の朝食は、納豆雑炊」
テーブルの上には、いつも通り何種類かの小鉢を用意。
朝だから、そんなに品数が多いわけではない。
それでも、魚の唐揚げ・こんにゃくの炒め物・かぼちゃサラダという三品の小鉢が揃うだけで一気に朝食が華やかになる。
「結構、腹持ちよくて、おすすめ」
「ありがと」
八木沢くんが、食事の席に着く。
「八木沢くんは好き嫌いがないって聞いてるけど」
「うん」
「味の好みは教えて」
「俺の好みなんて聞いてたら、料理が続かなくなる」
八木沢くん言葉を受けて、料理に対するやる気が失せると思ったら大間違い。
彼は声も表情も柔らかくて、俺のことを考えてくれてるんだなってことが凄くよく伝わってくるから耳を傾けたくなってしまう。
「八木沢くんの好みを聞くのは、面倒でも苦労でもないよ」
今日も、いただきますの声が重なる。
食事を始めるときの挨拶は一斉にって約束しているわけでもなく、自然と一緒に重なる声が嬉しいって思う。
「朝から揚げ物かよって、重たく感じるかもしれないけど」
魚の唐揚げを口にしようと、箸を運ぶ。
「雑炊の添え物に合うから好きなんだよね」
八木沢くんにも朝食を食べ進めてほしくて、俺の話は聞き流していいよって合図を送る。
すると、八木沢くんも俺と同じ魚の唐揚げを一口目に選んでくれた。
「あ」
「重たい?」
「え、箸が止まらなくなるかも」
「あ、良かった」
八木沢くんの表情が寝起きの顔から、口にしている唐揚げが美味しいって顔に変わっていく。
「本当は、揚げたてが一番美味しいんだけどね」
揚げたてのサクサク感が失われてしまった唐揚げは、油が少し重たく感じてしまう。
申し訳なさそうな表情を浮かべる俺に対して、八木沢くんは一口食べるたびに『美味しい』と言葉を返してくれるから凄いと思う。
(他人の喜ばせ方、知ってるんだもんなぁ)
同い年のはずなのに、八木沢くんだけはずっと大人っぽい。
その大人っぽい雰囲気は幼い頃から芸能界で働いていることとか、お母さんと二人で暮らしてきたってこともあるのかもしれないけど、あまりにもずっと大人っぽいを貫くから、ときどき心配になる。
「柊?」
「八木沢くんは気遣いやさんだなーって思ってたところ」
母親が初めて納豆入りの雑炊を作ってくれたときは、母親は一体何を完成させてしまったのかってって抵抗があった。