◇
それから愛莉たちは、ツブヤイターのグループDMを利用して意欲を掻き立て合うような情報交換を行なったり、また、読者投票期間に向けて、意気込みや作品紹介等を語る対談配信の企画を行ったりと、ライバルらしからぬ団結力で共に切磋琢磨しているように、表面上は見えていた。
[それじゃあ読者投票開始日二十一時からの宣伝&投票呼びかけ配信、ホストで参加決定なのが俺と愛莉さん。春奈ちゃんとセイさんとヤミさんはチャットでの参加ってことでOKでしょうか?]
読者投票開始二日前の夜。
田島から送られてきたグループDMのメッセージに、一斉に前向きな回答が並ぶ。
[了解です。頑張って早くに帰ってきますね!]
これは愛莉。
[すみません、みなさん。うちは親が煩いので、チャットでの参加が精一杯で……それでお願いします]
これは青木。
[うちもごめんねー。すぐ近くで子が寝てるような環境だから、声出すと起きちゃうんだよね。全力で寝かしつけて急いで駆けつけるから!]
これは日暮。そして――。
[寝落ちしていなければ行きます]
相変わらず、淡白な反応の宵町。
いつもこのグループDMのやり取りを行う上で、宵町だけは必要最小限のメッセージしか返さなかった。
おそらく、監視のために会話はチェックするが、馴れ合いはしたくない。そんな心情なのだろうと愛莉は察している。
[みなさんあざーす! チャットで参加してくれるだけでもありがたいっすよー。そんじゃ、極力盛り上げていきたいんで、各自繋がりのある作家さんや読者さんに声かけてもらったりして、拡散よろしくっす!]
盛り上げ役の田島の音頭に、みんなが一斉にツブヤイターで配信告知の呟きを投稿する。
田島の呟きはあっという間にファンタジー創作者界隈の仲間たちに、青木の呟きは青春ジャンル創作者界隈に、日暮の呟きはママ友界隈に、さざなみのように拡がっていく。
宵町の呟きだけは他のメンバーと違ってかなり少なめの反響だったが、それでもいくつかはファンと思しき読者から[うわ、闇さんが配信⁉︎ 珍しい! 楽しみです!]といった反応をもらっていた。本人はそのコメントに〝いいね〟だけをつけて、返信はしないつもりのようだが。
もちろん愛莉も、自分のフォロワーたちに向けて呟きを行う。
愛莉の呟きは、読者のアカウントのフォロワーをメインに勢いよく拡がっていった。
[愛莉さんのお声が聞けるの⁉︎ うわ絶対いきます!!]
[ぎゃー! 愛莉さんの配信⁉︎ 死んでもいく!!]
[配信めっちゃ嬉しいです愛莉さん! 生き甲斐ができたー!]
すぐに飛んでくるリプライ通知。自分を必要としてくれることがわかるフォロワーたちの声が、染み入るように愛莉の心を満たしていく。
すぐにでも返信をつけたくなるところだったが、ほどなくしてグループDMが再び賑わい始めた。
[ちょっと俺、〝NARERUYO〟の現役トップランカーの知り合いたちにも呼びかけてみますね! きてくれたらめっちゃ盛り上がると思うんで!]
[おー! それ超盛り上がりそうだしいいね! んー、うちはあんま大物とか知り合いいないんだけども、今エッセイジャンルでランカーになってるミユちゃんとか、黒猫さんとか、書籍化作家のトモトモママさんとか、あとは金魚の森のサブアカウントで知り合ったイケメンゲーマーのナルパパさんとかに声かけてみよーかな。あの人、ママ友界隈でファンが多くてそこそこ名が通ってる人だから]
[わ、セイさん、トモトモママさんと友達なんですか⁉︎ 私、作品持ってます。あと、金魚の森、私も少しだけプレイしたことあるので、ナルパパさんのことも、なんとなく名前だけは聞いたことあります]
[かなりイイ人だよー。サブ垢はまだデメキンタウン住みのレベル15とかでさー、全然収集スキルないから困ってるんですーって話しかけたら無料で金魚素材とかめっちゃくれたし!]
[ふふ。〝金魚の森〟の世界では〝金魚素材〟が欠かせないですもんね。そっかー、ナルパパさんかー。トモトモママさんもどっちもきてくれたら嬉しいなあ。……あ、私は前年度大賞者の『ののあ』さんとか、せっかくなので青春恋愛ジャンルの書籍化作家の樹里ちゃんとか、こないだ別サイトの青春コンテストで大賞とってたレイナちゃんに声かけてみようと思います]
[おー、すげー!! それ絶対盛り上がるやつ!!]
相変わらず傍観態勢を貫く宵町はさておき、田島や日暮、青木が、率先的に創作仲間に声をかけ始めたため、愛莉も慌てて創作仲間にツブヤイター上で声をかけようとした……のだが。
[ありがとうございます皆さん。じゃあ、私も――]
(……って、ちょっと待って。えっと、書き手の創作仲間……)
愛莉はDMのやり取り履歴やフォロワーのアイコンを辿る。
ノベルマ・恋愛ジャンルランカーの英玲奈――ダメだ、一度やりとりしただけでそれ以降全然連絡とってない。
ノベルマ・恋愛ジャンル書籍化作家の楠木リリア――ダメ。彼女が書籍化してからは全然やりとりしてない。
そもそもノベルマ自体に仲間が少ない。ならばと、愛莉は〝NARERUYO〟時代の創作仲間とのDM履歴を辿る。読者アカウントを省くと最近のものは全くない。かなり初期の頃まで遡ることになるが誰でもいい。恋愛ジャンルでそこそこ人気のあったメンバーか、あるいはもう、知名度は低くても恋愛小説に詳しそうな人……。
それから愛莉たちは、ツブヤイターのグループDMを利用して意欲を掻き立て合うような情報交換を行なったり、また、読者投票期間に向けて、意気込みや作品紹介等を語る対談配信の企画を行ったりと、ライバルらしからぬ団結力で共に切磋琢磨しているように、表面上は見えていた。
[それじゃあ読者投票開始日二十一時からの宣伝&投票呼びかけ配信、ホストで参加決定なのが俺と愛莉さん。春奈ちゃんとセイさんとヤミさんはチャットでの参加ってことでOKでしょうか?]
読者投票開始二日前の夜。
田島から送られてきたグループDMのメッセージに、一斉に前向きな回答が並ぶ。
[了解です。頑張って早くに帰ってきますね!]
これは愛莉。
[すみません、みなさん。うちは親が煩いので、チャットでの参加が精一杯で……それでお願いします]
これは青木。
[うちもごめんねー。すぐ近くで子が寝てるような環境だから、声出すと起きちゃうんだよね。全力で寝かしつけて急いで駆けつけるから!]
これは日暮。そして――。
[寝落ちしていなければ行きます]
相変わらず、淡白な反応の宵町。
いつもこのグループDMのやり取りを行う上で、宵町だけは必要最小限のメッセージしか返さなかった。
おそらく、監視のために会話はチェックするが、馴れ合いはしたくない。そんな心情なのだろうと愛莉は察している。
[みなさんあざーす! チャットで参加してくれるだけでもありがたいっすよー。そんじゃ、極力盛り上げていきたいんで、各自繋がりのある作家さんや読者さんに声かけてもらったりして、拡散よろしくっす!]
盛り上げ役の田島の音頭に、みんなが一斉にツブヤイターで配信告知の呟きを投稿する。
田島の呟きはあっという間にファンタジー創作者界隈の仲間たちに、青木の呟きは青春ジャンル創作者界隈に、日暮の呟きはママ友界隈に、さざなみのように拡がっていく。
宵町の呟きだけは他のメンバーと違ってかなり少なめの反響だったが、それでもいくつかはファンと思しき読者から[うわ、闇さんが配信⁉︎ 珍しい! 楽しみです!]といった反応をもらっていた。本人はそのコメントに〝いいね〟だけをつけて、返信はしないつもりのようだが。
もちろん愛莉も、自分のフォロワーたちに向けて呟きを行う。
愛莉の呟きは、読者のアカウントのフォロワーをメインに勢いよく拡がっていった。
[愛莉さんのお声が聞けるの⁉︎ うわ絶対いきます!!]
[ぎゃー! 愛莉さんの配信⁉︎ 死んでもいく!!]
[配信めっちゃ嬉しいです愛莉さん! 生き甲斐ができたー!]
すぐに飛んでくるリプライ通知。自分を必要としてくれることがわかるフォロワーたちの声が、染み入るように愛莉の心を満たしていく。
すぐにでも返信をつけたくなるところだったが、ほどなくしてグループDMが再び賑わい始めた。
[ちょっと俺、〝NARERUYO〟の現役トップランカーの知り合いたちにも呼びかけてみますね! きてくれたらめっちゃ盛り上がると思うんで!]
[おー! それ超盛り上がりそうだしいいね! んー、うちはあんま大物とか知り合いいないんだけども、今エッセイジャンルでランカーになってるミユちゃんとか、黒猫さんとか、書籍化作家のトモトモママさんとか、あとは金魚の森のサブアカウントで知り合ったイケメンゲーマーのナルパパさんとかに声かけてみよーかな。あの人、ママ友界隈でファンが多くてそこそこ名が通ってる人だから]
[わ、セイさん、トモトモママさんと友達なんですか⁉︎ 私、作品持ってます。あと、金魚の森、私も少しだけプレイしたことあるので、ナルパパさんのことも、なんとなく名前だけは聞いたことあります]
[かなりイイ人だよー。サブ垢はまだデメキンタウン住みのレベル15とかでさー、全然収集スキルないから困ってるんですーって話しかけたら無料で金魚素材とかめっちゃくれたし!]
[ふふ。〝金魚の森〟の世界では〝金魚素材〟が欠かせないですもんね。そっかー、ナルパパさんかー。トモトモママさんもどっちもきてくれたら嬉しいなあ。……あ、私は前年度大賞者の『ののあ』さんとか、せっかくなので青春恋愛ジャンルの書籍化作家の樹里ちゃんとか、こないだ別サイトの青春コンテストで大賞とってたレイナちゃんに声かけてみようと思います]
[おー、すげー!! それ絶対盛り上がるやつ!!]
相変わらず傍観態勢を貫く宵町はさておき、田島や日暮、青木が、率先的に創作仲間に声をかけ始めたため、愛莉も慌てて創作仲間にツブヤイター上で声をかけようとした……のだが。
[ありがとうございます皆さん。じゃあ、私も――]
(……って、ちょっと待って。えっと、書き手の創作仲間……)
愛莉はDMのやり取り履歴やフォロワーのアイコンを辿る。
ノベルマ・恋愛ジャンルランカーの英玲奈――ダメだ、一度やりとりしただけでそれ以降全然連絡とってない。
ノベルマ・恋愛ジャンル書籍化作家の楠木リリア――ダメ。彼女が書籍化してからは全然やりとりしてない。
そもそもノベルマ自体に仲間が少ない。ならばと、愛莉は〝NARERUYO〟時代の創作仲間とのDM履歴を辿る。読者アカウントを省くと最近のものは全くない。かなり初期の頃まで遡ることになるが誰でもいい。恋愛ジャンルでそこそこ人気のあったメンバーか、あるいはもう、知名度は低くても恋愛小説に詳しそうな人……。