九時。同窓会はお開きとなり、二次会に行く人達が集まっていた。
 しかし、私は……。
「ごめん。今日中に帰らないといけなくて! 今からなら間に合うから帰るね」
 そう、にっこり笑う。

 それを聞いていた拓也は表情を変えるけど、スッと目を逸らした。

「え? 大変だね」
「無理しないでよ?」
 二人はそう言ってくれる。
 ありがとう。本当に。

「じゃあね」
 私は同級生達に手を振り、会場を後にする。

「綾子ー! また連絡するから! 返事返してよー!」
 朱莉と直美はそう叫んでくれる。だけど。
 ごめんね。それは約束出来ないと思う。

 そう思いながらホテルを出た私が、向かった先は駅だった。
 
 今なら最終電車に乗れる。それで行けるところまで行って、適当な場所で泊まろう。
 実家にも立ち寄らない。
 両親と兄は今日の帰省を知っていて、待ってると言ってくれていたけど。こんな私の姿を見せるなんて、一番の親不孝だから。

 雪道を歩いていると、やはり街並みは十年前と変わっていて、私はまるで全然知らない世界に迷い込んだみたいだった。
 私だけ目的地に辿り着けず、永遠と迷い続けるのだろうか……。

 そんな思いを抱えながら歩き続けていると、目の前には廃校予定の高校。
 私は十年前も、この場所で立っていた。