羊垣内家の裏庭にある、薄暗い小屋。……その中にある三畳の座敷牢が、折檻部屋だった。木造の床は傷み、虫の死骸も転がっている、掃除のされていない部屋だ。
がしゃん――。
伊織は、乱暴に牢に投げ入れられる。埃が立ち、伊織は思わず咳き込んだ。
「げほっげほっ……!」
使用人が牢の鍵をかけると、継母は彼らを全員下がらせた。
折檻部屋の戸が閉まって、ふたりきりになると、継母は伊織に近付いた。
「お前、この数週間で、キレイになったわ」
「…………」
「でも、だからこそ。確かめるなんてことをして――もし、万が一があったら……ね? だから、はっきりなんてさせないほうがいいのよ。お前が『未婚の純潔である』という、それだけが価値なのよ。わざわざこちらから価値を棄てるなんて、馬鹿げているわ」
「え……」
「あの人は『傷物になってさえいないのなら、どうでもいい』って言っていたけれど。私からしたら、実際どうだろうと、それこそどうだっていいの。お前は実際はどうであれ、純潔の乙女という名の商品なんだから」
――継母は、庇ってくれたわけでも、伊織の言葉を信じてくれたわけでもなかった。むしろ、逆。信じていないからこそ、止めたのだ。
しかしそんなことも、言葉通り、きっとどうだっていいのだ。わたしがお金になりさえすれば……。
伊織は、目を伏せた。
継母は言った。
「お前が商品になった以上、死なれたら困るわ。これからは食事と毛布は運んであげる。結納の日が決まったら出してあげるわ」
「……はい」
伊織は、数日は閉じ込められそうなことを思い、俯いたまま返事をした。
――その時だった。バチンッと肩に衝撃が走る。
「痛っ……!」
顔を上げると、ヒュッと鞭が飛んできて、伊織は慌てて目を瞑る。
継母は、鞭を手に取っていた。それは、檻の隙間を縫って、伊織をぶつ。
バチンッ! 音が響いて、今度は太ももに痛みが走る。
「うっ……!」
「鳥飛田家の唯一の条件は純潔だけ! 傷があろうと構いやしないわよ! ああ、今のうちに、あの女の娘を、しっかり躾けておかなくっちゃ!」
手首と足首は縛られているため、伊織はよけることもできない。
バチン! バチン! 鞭を叩きつける音が、折檻部屋に響く。
しばらくの間それを繰り返して、継母はようやく手を止めた。
「……うふ。顔にはしないでおいてあげたわ。感謝なさい」
「……ぅ……」
「惨めなお前を思い出したかしら?」
伊織は、継母と目を合わせられず、打たれた手で体をぎこちなくさすった。手が、体が、じんじんと痛む。
「じゃあね。また来るわ」
満足したらしい継母は、鞭を壁にかけると、折檻部屋を出て行った。
後には、ボロボロになった伊織だけが残される。
この時になって、ようやく呪符の効果が切れ、手首と足首に巻き付いていたお札が、はらりと落ちた。解放されたが、体中が痛くて、力が入らない。カビくさい臭いと埃まみれの部屋、そこにぶたれた、自分。そのすべてが、伊織の心を一層惨めにさせた。
「……。十夜さま……」
誰もいなくなった部屋で、横になった伊織は小さく呟いた。
あの温かだった日々は、まるで夢だったかのようだ。
彼の手が、わたしの頭を撫でてくれたあの日々が、もう遠いことのよう。
幻想の中で、彼がわたしの頭を撫でて――誰かに呼ばれて振り返る。
ぱっと嬉しそうな表情をして、彼は他の女の子の元へ――……。
伊織は、目を瞑る。目頭が、熱い。
「羊垣内家から逃げ出したのに、九頭竜家からも逃げ出して、わたしって、本当、逃げてばかり……」
つらいけれど、大丈夫。耐えていれば、いつか嵐が過ぎ去るように、過ぎていくんだから。だから、どんなに傷が増えたって、わたしが我慢すれば良いだけ……。
十夜さまのことも、きっと同じ。
今はつらいけれど、我慢すればきっと大丈夫。十夜さまが結婚するなんて、わたし、耐えられないもの……。
横になったまま袖を動かすと、ころんと何かが転がりでた。見ると、それは十夜にもらったお守りだった。ふたりで出かけたあの日にもらって、それから毎日持ち歩いていたのだ。懐に入れていたはずだが、先ほどの仕打ちで位置がズレたのだろう。なくなっていないことが幸いだった。
「……十夜さま……」
耐えられないと言いながら、この着物も、彼のお守りも、伊織は手放せなかった。
彼は、初めてわたしに優しくしてくれた人で。
だから、そんな彼のことを支えに、これからを過ごしていくつもりだった。
「……あ」
伊織は、お守りの口があいて、中身がのぞいているのに気がついた。それは、白い紙だった。……護符のようなものだろうか。
普通なら、御神璽なのだから見ないだろう。だけれども、なんだか無性に気になって、伊織はその紙を取り出した。折りたたまれた紙を開くと、それは――手紙だった。
そこには、達筆でこう書いてあった。
【 伊織 つらくなったら呼んでくれ これからも助けになろう――十夜】
読み終わった伊織の目から、涙の雫がぽろりぽろりとこぼれる。
十夜さま、十夜さま。
じゃあ、じゃあ、今、会いたいです。
「十夜さま……そばに……来てください……!」
しん――と静まりかえった部屋の中で、伊織の言葉だけが空しく響く。
「……なんて……。ふふ……」
こんな部屋で――ひとりで口に出したところで、……叶いっこない。
伊織は、指先で涙を拭った。
「『呼んで』って、お家を訪ねて呼び鈴を鳴らしに行ってもいい、ってことだよね。わたし……ふふふ……っ。わたし、わたし、……。………… 」
涙がとめどなく溢れて、自分では止められない。
――嬉しいです、十夜さま。
あなたが優しい人だってことが、もう一度わかって、嬉しいです。
つらくないって言ったら、嘘になります。
でも、わたしにはもう、どうすることもできなくて。
家のことも、もっとちゃんと相談できていれば、よかったのかもしれません。
でも、わたしは、わたしのする行動でなにかが変わってしまうのが怖くて、とても怖くて。相談する勇気が持てませんでした。
わたしの相手はあなたではなかったけれど。
――これでもう少し、耐えられると思います。
ぽつんとひとり、ほこりっぽい折檻部屋で。
伊織は、ぎゅっと小さな手紙を抱きしめた。
* * *
それから、何時間かが経って、夜中のことだった。高い位置にあるたったひとつの小さな窓から、うっすらと月明かりが差し込んでいる。
伊織は、小さなお守りを握りしめ、横になっていた。
「…………」
体はじんじんと痛み、胸もじんじんと痛んで、とてもじゃないが眠れやしない。
伊織の体が少し光り、頭から巻き角が現れた。そっと、自分に向かって眠らせる能力をかける。それでようやく、少女は眠りにつくことができた。
その様子を、扉の隙間から見ている者がいた。――伊織の父・栄介だ。伊織のお仕置きは、嘉代子と梨々子に任せたが、――少し様子が気になって見に来たのだ。
栄介は、伊織が寝てしまうと、戸を開けて室内へと入った。
(幸い、顔に傷はついていないようだな)
しかし、今はそんなことはどうでもいい。
栄介は、伊織の頭を見た。
(角がある……。それに、さっき、能力を使っていたのか……?)
部屋を見る。呪符の類いはない。なんの道具も使っていないようだった。
「やっぱり、そうなのか? やっぱり、兄貴の……。だとすると、……私は間違っていない」
栄介は、ブツブツと呟いた。
「放っておいたら使えなくなっていたから、放置していたのに。いつの間に能力を使えるようになったのか……。くそ、兄貴のことなんてもう、思い出したくもないのに。……本当にいつまでも邪魔なやつだ」
伊織の顔を見る。母そっくりの顔だ。その中の一部が、死んだ兄に似ている気がしてならない。
栄介は、十二年前の――七緒がまだ生きていた頃のことを思い出していた。
その日、羊垣内家のお屋敷で、床に就く七緒に、栄介は怒鳴った。
「おい……! 伊織が蔵で生き物を従えて寝ていたぞ! どういうことだっ!? 」
「……ああ、ああ、覚醒したのですね。良かったです……」
「馬鹿女! あれは……っ、兄貴と同じ能力だ! くそ……っ!」
「……羊垣内家の先祖にも、何人かいるではないですか。隔世遺伝では……?」
言いながら、七緒は痩せ細った体を起こした。
「じゃあっ、どうして兄貴と顔が似てるんだ!?」
「……あなたの子どもだからですよ。宗一郎さんとあなたは、兄弟ではないですか。あなたと似ているんです……。ごほっごほっ……」
「信じられるか! 前々から……そうじゃないかと思っていたんだ! 私は、伊織の訓練をやめるし、今日から娘扱いはしない!」
「……わたしは、たった二ヶ月ですが、宗一郎さんと結婚していました。……もし、そうであっても、仕方のないことです……。ですが、今はあなたとわたしの子どもです……」
「違う。伊織は私の娘ではない……!」
兄の妻を上書きしてやったら、兄を上書きできると思った。
でも、違った。能力も人柄もなにもかもが優秀だった兄の遺伝子は、残っていたのだ。淘汰されたのは、自分の方だった。
栄介は、静かに折檻部屋を出た。それから庭に降りると、濁った夜空を見上げた。
「やっぱり私は正しかったじゃないか! ははは! 伊織は私の娘ではない! 家は梨々子が継ぐ! 私は正しい!」
彼の乾いた笑い声が、夜の闇に吸い込まれていった。
がしゃん――。
伊織は、乱暴に牢に投げ入れられる。埃が立ち、伊織は思わず咳き込んだ。
「げほっげほっ……!」
使用人が牢の鍵をかけると、継母は彼らを全員下がらせた。
折檻部屋の戸が閉まって、ふたりきりになると、継母は伊織に近付いた。
「お前、この数週間で、キレイになったわ」
「…………」
「でも、だからこそ。確かめるなんてことをして――もし、万が一があったら……ね? だから、はっきりなんてさせないほうがいいのよ。お前が『未婚の純潔である』という、それだけが価値なのよ。わざわざこちらから価値を棄てるなんて、馬鹿げているわ」
「え……」
「あの人は『傷物になってさえいないのなら、どうでもいい』って言っていたけれど。私からしたら、実際どうだろうと、それこそどうだっていいの。お前は実際はどうであれ、純潔の乙女という名の商品なんだから」
――継母は、庇ってくれたわけでも、伊織の言葉を信じてくれたわけでもなかった。むしろ、逆。信じていないからこそ、止めたのだ。
しかしそんなことも、言葉通り、きっとどうだっていいのだ。わたしがお金になりさえすれば……。
伊織は、目を伏せた。
継母は言った。
「お前が商品になった以上、死なれたら困るわ。これからは食事と毛布は運んであげる。結納の日が決まったら出してあげるわ」
「……はい」
伊織は、数日は閉じ込められそうなことを思い、俯いたまま返事をした。
――その時だった。バチンッと肩に衝撃が走る。
「痛っ……!」
顔を上げると、ヒュッと鞭が飛んできて、伊織は慌てて目を瞑る。
継母は、鞭を手に取っていた。それは、檻の隙間を縫って、伊織をぶつ。
バチンッ! 音が響いて、今度は太ももに痛みが走る。
「うっ……!」
「鳥飛田家の唯一の条件は純潔だけ! 傷があろうと構いやしないわよ! ああ、今のうちに、あの女の娘を、しっかり躾けておかなくっちゃ!」
手首と足首は縛られているため、伊織はよけることもできない。
バチン! バチン! 鞭を叩きつける音が、折檻部屋に響く。
しばらくの間それを繰り返して、継母はようやく手を止めた。
「……うふ。顔にはしないでおいてあげたわ。感謝なさい」
「……ぅ……」
「惨めなお前を思い出したかしら?」
伊織は、継母と目を合わせられず、打たれた手で体をぎこちなくさすった。手が、体が、じんじんと痛む。
「じゃあね。また来るわ」
満足したらしい継母は、鞭を壁にかけると、折檻部屋を出て行った。
後には、ボロボロになった伊織だけが残される。
この時になって、ようやく呪符の効果が切れ、手首と足首に巻き付いていたお札が、はらりと落ちた。解放されたが、体中が痛くて、力が入らない。カビくさい臭いと埃まみれの部屋、そこにぶたれた、自分。そのすべてが、伊織の心を一層惨めにさせた。
「……。十夜さま……」
誰もいなくなった部屋で、横になった伊織は小さく呟いた。
あの温かだった日々は、まるで夢だったかのようだ。
彼の手が、わたしの頭を撫でてくれたあの日々が、もう遠いことのよう。
幻想の中で、彼がわたしの頭を撫でて――誰かに呼ばれて振り返る。
ぱっと嬉しそうな表情をして、彼は他の女の子の元へ――……。
伊織は、目を瞑る。目頭が、熱い。
「羊垣内家から逃げ出したのに、九頭竜家からも逃げ出して、わたしって、本当、逃げてばかり……」
つらいけれど、大丈夫。耐えていれば、いつか嵐が過ぎ去るように、過ぎていくんだから。だから、どんなに傷が増えたって、わたしが我慢すれば良いだけ……。
十夜さまのことも、きっと同じ。
今はつらいけれど、我慢すればきっと大丈夫。十夜さまが結婚するなんて、わたし、耐えられないもの……。
横になったまま袖を動かすと、ころんと何かが転がりでた。見ると、それは十夜にもらったお守りだった。ふたりで出かけたあの日にもらって、それから毎日持ち歩いていたのだ。懐に入れていたはずだが、先ほどの仕打ちで位置がズレたのだろう。なくなっていないことが幸いだった。
「……十夜さま……」
耐えられないと言いながら、この着物も、彼のお守りも、伊織は手放せなかった。
彼は、初めてわたしに優しくしてくれた人で。
だから、そんな彼のことを支えに、これからを過ごしていくつもりだった。
「……あ」
伊織は、お守りの口があいて、中身がのぞいているのに気がついた。それは、白い紙だった。……護符のようなものだろうか。
普通なら、御神璽なのだから見ないだろう。だけれども、なんだか無性に気になって、伊織はその紙を取り出した。折りたたまれた紙を開くと、それは――手紙だった。
そこには、達筆でこう書いてあった。
【 伊織 つらくなったら呼んでくれ これからも助けになろう――十夜】
読み終わった伊織の目から、涙の雫がぽろりぽろりとこぼれる。
十夜さま、十夜さま。
じゃあ、じゃあ、今、会いたいです。
「十夜さま……そばに……来てください……!」
しん――と静まりかえった部屋の中で、伊織の言葉だけが空しく響く。
「……なんて……。ふふ……」
こんな部屋で――ひとりで口に出したところで、……叶いっこない。
伊織は、指先で涙を拭った。
「『呼んで』って、お家を訪ねて呼び鈴を鳴らしに行ってもいい、ってことだよね。わたし……ふふふ……っ。わたし、わたし、……。………… 」
涙がとめどなく溢れて、自分では止められない。
――嬉しいです、十夜さま。
あなたが優しい人だってことが、もう一度わかって、嬉しいです。
つらくないって言ったら、嘘になります。
でも、わたしにはもう、どうすることもできなくて。
家のことも、もっとちゃんと相談できていれば、よかったのかもしれません。
でも、わたしは、わたしのする行動でなにかが変わってしまうのが怖くて、とても怖くて。相談する勇気が持てませんでした。
わたしの相手はあなたではなかったけれど。
――これでもう少し、耐えられると思います。
ぽつんとひとり、ほこりっぽい折檻部屋で。
伊織は、ぎゅっと小さな手紙を抱きしめた。
* * *
それから、何時間かが経って、夜中のことだった。高い位置にあるたったひとつの小さな窓から、うっすらと月明かりが差し込んでいる。
伊織は、小さなお守りを握りしめ、横になっていた。
「…………」
体はじんじんと痛み、胸もじんじんと痛んで、とてもじゃないが眠れやしない。
伊織の体が少し光り、頭から巻き角が現れた。そっと、自分に向かって眠らせる能力をかける。それでようやく、少女は眠りにつくことができた。
その様子を、扉の隙間から見ている者がいた。――伊織の父・栄介だ。伊織のお仕置きは、嘉代子と梨々子に任せたが、――少し様子が気になって見に来たのだ。
栄介は、伊織が寝てしまうと、戸を開けて室内へと入った。
(幸い、顔に傷はついていないようだな)
しかし、今はそんなことはどうでもいい。
栄介は、伊織の頭を見た。
(角がある……。それに、さっき、能力を使っていたのか……?)
部屋を見る。呪符の類いはない。なんの道具も使っていないようだった。
「やっぱり、そうなのか? やっぱり、兄貴の……。だとすると、……私は間違っていない」
栄介は、ブツブツと呟いた。
「放っておいたら使えなくなっていたから、放置していたのに。いつの間に能力を使えるようになったのか……。くそ、兄貴のことなんてもう、思い出したくもないのに。……本当にいつまでも邪魔なやつだ」
伊織の顔を見る。母そっくりの顔だ。その中の一部が、死んだ兄に似ている気がしてならない。
栄介は、十二年前の――七緒がまだ生きていた頃のことを思い出していた。
その日、羊垣内家のお屋敷で、床に就く七緒に、栄介は怒鳴った。
「おい……! 伊織が蔵で生き物を従えて寝ていたぞ! どういうことだっ!? 」
「……ああ、ああ、覚醒したのですね。良かったです……」
「馬鹿女! あれは……っ、兄貴と同じ能力だ! くそ……っ!」
「……羊垣内家の先祖にも、何人かいるではないですか。隔世遺伝では……?」
言いながら、七緒は痩せ細った体を起こした。
「じゃあっ、どうして兄貴と顔が似てるんだ!?」
「……あなたの子どもだからですよ。宗一郎さんとあなたは、兄弟ではないですか。あなたと似ているんです……。ごほっごほっ……」
「信じられるか! 前々から……そうじゃないかと思っていたんだ! 私は、伊織の訓練をやめるし、今日から娘扱いはしない!」
「……わたしは、たった二ヶ月ですが、宗一郎さんと結婚していました。……もし、そうであっても、仕方のないことです……。ですが、今はあなたとわたしの子どもです……」
「違う。伊織は私の娘ではない……!」
兄の妻を上書きしてやったら、兄を上書きできると思った。
でも、違った。能力も人柄もなにもかもが優秀だった兄の遺伝子は、残っていたのだ。淘汰されたのは、自分の方だった。
栄介は、静かに折檻部屋を出た。それから庭に降りると、濁った夜空を見上げた。
「やっぱり私は正しかったじゃないか! ははは! 伊織は私の娘ではない! 家は梨々子が継ぐ! 私は正しい!」
彼の乾いた笑い声が、夜の闇に吸い込まれていった。

