「袋なんでつけねえの」
 今まで何を聞いてもガン無視を決め込んでいたお客さんから発された第一声。
 嘘じゃん。私きいたよ? その気持ちにぐっとふたをして「失礼いたしました」と袋をつける。
 こんなことは日常茶飯事。
 こういう時少しでも愚痴を言えたらいいんだけど今日のレジのペアは冷静沈着、冷たいで定評のそうさんだった。
 こんなイメージのついてる1つ年上の先輩。
 
 でもね
「いらっしゃいませ」
 そうさんのレジ台に荷物を置いたお客さんはいつも少しボケてる常連のおばあちゃん。
「あれ、お財布どこやったかな」
 そう言いながらお財布を探すおばあちゃんを横目に手際よく商品をスキャンしていく。
「袋お預かりしますね」 
 袋をおばあちゃんから受け取って商品を詰めるのは私の仕事。
 そうさんは袋詰めしやすい順番で置いていってくれる。
 さりげない優しさ。
 おばあちゃんに特別何か声をかけるわけじゃないけど「ごめんねぇ。財布が見当たらなくて」とまだカバンをあさるおばあちゃんに
「全然ゆっくりで大丈夫っすよ」
 と抑揚のない声で言いながら目元を頑張って細めて言っているところにまた優しさを感じた。

 自分の気持ちに素直で、常に省エネ。
 でも仕事をそつなくこなし、なにより静かに優しい。
 それがそうさんだった。
 
 そうさんともっとお話をしてみたい。 
 好奇心から湧くそんな感情に蓋をして
「お疲れさまでした」
 そう言って今日もお互い背を向けて帰路に立った。