春、桜が舞っている。
高校二年生になった私と茜は、中学三年生の終わりに、二人で投稿を始めた。
「おてんきあめ」という名前で、あかねとあまくもとして活動している。
高校一年生になり、私はクラスの人たちに公言したのだ。
この症状のことと、投稿のことを。
それから、学年、学校、一気に世界にまでその存在が広まり、フォロワーが十万を超えた。
何が起こったのかわからなかったが、コメントには応援の言葉も批判の言葉も両方バランスよくあって、これが世界なんだと知った。
学校では、先輩や先生に声をかけられることもしばしば。
私の学校に近い高校に通う茜も同じだ。
入学式の次の日。
「どうする?今日は私少しつらかったかな」
「俺はめっちゃ元気!昨日と似てるよな、同じ感じでいいんじゃね?」
放課後、茜と話しながら、今日の投稿をしていた時だった。
「あ、あの!」
後ろから声をかけられ振り向くと、背の小さい、かわいい顔をした男の子が立っていた。
私と同じ制服だ。
「お二人って、おてんきあめさん、ですよね?」
「あれ?よく知ってるね、その名前」
そうだよ、とは言いにくかったので、笑顔でそう答えた。
が、この子が話しかけてきてくれた理由がわかったのは、次の言葉だった。
「僕、実はあまくもさんと同じ症状を持ってるんです。で、前あまくもさんに酷いことを言ったのも、僕です…!」
酷いこと、と思ったが、なぜかこれがぱっと思い浮かんだ。
『プロフィール見ました実在する病気ですか?仮病ならやめてください本当に苦しんでいる人がいるのによくない』
引っかかった、一つのコメント。
「え、あの子…?」
「ごめんなさい。あの時は、僕めっちゃこの症状でいじられてて、その投稿を見た時、すごく悔しくて。同じ症状なのに、なんでそんなに投稿できるほど強いんだろって…。おかしなこと言って、本当にごめんなさい…」
そういうことだったのか。
私もその気持ちはわかるし、そう言ってしまいそうになるのも、本当にわかる。
「今ではファンなんです。親の転勤でここへ来たんですけど、写真がなんだかここらへんの風景と似てて、もしかして、って思って声をかけてしまいました。迷惑でしたよね、すみません…」
でももう、今は違う。
「大丈夫だよ」
全く傷ついてない。むしろその言葉が、成長になったかもしれない。
大丈夫。
「…俺はなにがなんなのかわからんけど、もしよかったら一緒に活動しようぜ!こんな偶然ある?ちょうどアシスタントみたいな役割がほしかったんだわ。どう?」
茜がはにかむ。
うるんでいた男の子の目が、きらりと光る。
「私も、それがいいと思う。ぜひ、私たちと一緒にやってみない?」
「…いいんですか?」
男の子の笑った顔は、脆く優しいものだった。
「…ありがとう、ございます」
それはお天気雨の日。
理解されないことのほうが多く感じるけれど、こんな出会いがあるから。
なんとか、やっていけるだろ。
批判されたっていいから。
理解されなくたっていいから。
ただ、私たちは。
雨垂れは、いつまでも光芒を待っている。
この雨が止むまで、この小さな光が途絶えるまで、私たちは、なんだってできる。
そう思って、生きよう。
光芒を、待とう。
高校二年生になった私と茜は、中学三年生の終わりに、二人で投稿を始めた。
「おてんきあめ」という名前で、あかねとあまくもとして活動している。
高校一年生になり、私はクラスの人たちに公言したのだ。
この症状のことと、投稿のことを。
それから、学年、学校、一気に世界にまでその存在が広まり、フォロワーが十万を超えた。
何が起こったのかわからなかったが、コメントには応援の言葉も批判の言葉も両方バランスよくあって、これが世界なんだと知った。
学校では、先輩や先生に声をかけられることもしばしば。
私の学校に近い高校に通う茜も同じだ。
入学式の次の日。
「どうする?今日は私少しつらかったかな」
「俺はめっちゃ元気!昨日と似てるよな、同じ感じでいいんじゃね?」
放課後、茜と話しながら、今日の投稿をしていた時だった。
「あ、あの!」
後ろから声をかけられ振り向くと、背の小さい、かわいい顔をした男の子が立っていた。
私と同じ制服だ。
「お二人って、おてんきあめさん、ですよね?」
「あれ?よく知ってるね、その名前」
そうだよ、とは言いにくかったので、笑顔でそう答えた。
が、この子が話しかけてきてくれた理由がわかったのは、次の言葉だった。
「僕、実はあまくもさんと同じ症状を持ってるんです。で、前あまくもさんに酷いことを言ったのも、僕です…!」
酷いこと、と思ったが、なぜかこれがぱっと思い浮かんだ。
『プロフィール見ました実在する病気ですか?仮病ならやめてください本当に苦しんでいる人がいるのによくない』
引っかかった、一つのコメント。
「え、あの子…?」
「ごめんなさい。あの時は、僕めっちゃこの症状でいじられてて、その投稿を見た時、すごく悔しくて。同じ症状なのに、なんでそんなに投稿できるほど強いんだろって…。おかしなこと言って、本当にごめんなさい…」
そういうことだったのか。
私もその気持ちはわかるし、そう言ってしまいそうになるのも、本当にわかる。
「今ではファンなんです。親の転勤でここへ来たんですけど、写真がなんだかここらへんの風景と似てて、もしかして、って思って声をかけてしまいました。迷惑でしたよね、すみません…」
でももう、今は違う。
「大丈夫だよ」
全く傷ついてない。むしろその言葉が、成長になったかもしれない。
大丈夫。
「…俺はなにがなんなのかわからんけど、もしよかったら一緒に活動しようぜ!こんな偶然ある?ちょうどアシスタントみたいな役割がほしかったんだわ。どう?」
茜がはにかむ。
うるんでいた男の子の目が、きらりと光る。
「私も、それがいいと思う。ぜひ、私たちと一緒にやってみない?」
「…いいんですか?」
男の子の笑った顔は、脆く優しいものだった。
「…ありがとう、ございます」
それはお天気雨の日。
理解されないことのほうが多く感じるけれど、こんな出会いがあるから。
なんとか、やっていけるだろ。
批判されたっていいから。
理解されなくたっていいから。
ただ、私たちは。
雨垂れは、いつまでも光芒を待っている。
この雨が止むまで、この小さな光が途絶えるまで、私たちは、なんだってできる。
そう思って、生きよう。
光芒を、待とう。