『私』という十四年間の物語は、小説の一冊にも満たない言葉数で終わりを迎えた。

 あの日、命の残り時間を宣告された衝撃も、本棚で貴方に出逢った時の感動も、言葉を紡いでいく瞬間の息遣いも、動かなくなっていく身体への悔しさも、全て。
全て、言葉できる時間が欲しかった。
それでも私は、この十四年の中の一年間を貴方と生きられて幸せだった。

夏宮(なつみや) 蒼夜(そうや)

 たったひとり、私が初めて恋を知った人。
私の全人生を通して考えるとほんの少しの時間だったけれど、その時間、貴方に恋をしていた時間、私はきっとこの世界の誰よりも幸せだったと思えるから。