ぼっち症候群

「おはよー」

「春瀬さんおはよう」

「春瀬さん、おはようございます!」


次の日、学校に行ったら何故かものすごく話し掛けられた。


「おっはよー、玉藻ちゃん! 今日も可愛いねー!」


教室に入ると、那古ちゃんが抱きついてきた。


「おはよう、春瀬。今日も可愛いね」


目が合うと、煌雅までやってきて髪を一筋すくうと、軽くキスをした。


クラスの女子が絶叫した。

耳が痛い。


「あ、ぁの……朝霧、くん?」

「ごめん、嫌だった?」


びっくりして名前を呼ぶと、シュン、と肩を落とした。


「ぁ、いや、そういうことじゃなくて………。ここ、教室なんですけどぉ」


チラッと煌雅を見上げると、ほんのりと頬を朱に染めていた。


「あ゙ー。可愛い。可愛いね、可愛すぎる。好き」


煌雅は甘い言葉を取り繕うともしない。


「ねぇ、それ、2人だけだったらいいってこと? 俺にはそう聞こえたんだけど」

「う、ぁ………。にゃ、あ……」

「猫? 可愛いね。それは肯定ってことでいいの?」


煌雅への気持ちは消さなきゃいけないのに、全然消えてくれない。


こういうところは、前の煌雅と全然違う。

もう少しぶっきらぼうで、ちょっと嫉妬深くて、すぐに抱きついてきて、いつも余裕じゃないのは私だけで。

そう考えると、背筋が凍りついたみたいに感じた。


改めて“孤独”を感じる。


みんなはみんななのに、私だけ違うから。

私が知ってるみんなを、知らないみんながいる。


「? 春瀬、大丈夫?」


不意に煌雅が顔を覗き込んできた。

あまりの近さについ後ずさる。


「ごめん。嫌だったな」


私の頭をポンポンと軽く撫でると、煌雅は離れていく。


「こー、がっ。嫌じゃ、ないよ………っ」


反射的にそ煌雅の制服を掴む。


「ねえ、そういうのやめない? 可愛すぎる」


煌雅は呆れたように微笑むと、私を抱きしめた。



これは、私の好きな煌雅だけど、私の好きな煌雅じゃない。

それでも、彼は私のそばにいてくれる。

煌雅の甘い囁きは私の孤独を加速させた。