もう、私にとってぼっち症候群になる前の記憶は『思い出』だった。


いつまでも引きずっていたら、ずっとずっと苦しいから。


みんなが私のことを忘れてから3日が経った。


今日は体育がある。

体育館で、男子はバスケ、女子はバレーだ。


知っていたけど、煌雅はバスケが上手で、休憩する女子たちが見て騒いでいる。



「危ないっ!!」



その時、バレーコートで練習をしていたチームのボールが煌雅を見て騒ぐ女子たちのもとへ飛んできた。

すぐ近くだったこともあり、私はボールと女子の間にさっと入るとレシーブでボールの衝突を防いだ。


誰かが大声で注意喚起をしていたからか、視線が集まった。


「………お、男前♡」


第一声は、ボールと衝突しそうになった女子だった。


「春瀬さんありがとう。もう、マジ好き♡」


目がハートになっている。


煌雅が私のもとに駆け寄ってきて、勢いよく頭をクシャクシャに撫でてきた。


「春瀬、すごいね。ヒーローみたいだったよ」


ちょっと興奮気味ににっこり笑顔で私を抱き締める。


「ひゃっ。朝霧く、あの……!」


突然抱き締められた私はもう大パニック。


「もうっ、分かったから、離してっ。こんな人前、恥ずかしっ」


少し遠くでは那古ちゃんがニヤニヤしながら見ている。


「那古ちゃんっ、たす、助けてっ」

「え〜? 顔真っ赤にして、嬉しいようにしか見えないけどー?」

「ん、にゃ、そんなことないからぁ!!」

「『にゃ』だって、カーワーイーイー。玉藻ちゃん可愛すぎー」


那古ちゃんは助けてはくれない。


「朝霧くん、春瀬さんのこと離してくれない? 嫌がってるじゃない」

「は? お前の春瀬じゃねぇし」

「でも朝霧くんの春瀬さんでもありませんー。離してくださいー」


私を挟んで言い合いをしないでほしい。

ぐるぐる困っていると、やっと那古ちゃんが助けてくれた。


「ほら、あんた達! 本人挟んで喧嘩しない! 玉藻ちゃんが困ってるじゃない。分からないようじゃふたりとも近付くな!」


そんな言葉でふたりを撃退していた。