「ねぇねぇ、名前なんていうの?」


那古ちゃんは初めて会ったときと全然変わらない。


春瀬(はるせ)玉藻、です………」

「えっ、煌雅聞いた? 名前まで可愛くないっ!?」


本当に知らないの?


「那古ちゃん…………。本当に私のことわかんない?」


小さな声しか出なかった。


「えっ、なんか言った? あ、私は狩谷(かりや)那古。で、この男が朝霧(あさぎり)煌雅ね。よろしく!」


私が知ってる那古ちゃんと全然変わらないのに、那古ちゃんじゃないみたい。


「うん。………よろしく、那古ちゃん、朝霧くん」


なんか、自分だけ違うみたい。


自分だけ取り残されたみたい。






那古ちゃんは那古ちゃんじゃなかった。

煌雅も煌雅じゃなかった。


それとも、私が私じゃなかったの?


分からないけど、どれが本当だったとしても、現時点で私は孤独だ。


行き場をなくした感情は心の中で炎のように弾け出した。

ずっと止まらない、消えない。

心の中に、小さな炎が立ち上った。