なにも見たくない。聞きたくない。

私が知らないみんなを見つけるのが怖い。

辛い。痛い。


負の感情がどくどくと溢れだす。


私のことを力強く抱いてくれる、この温かい腕でさえ、振りほどいて逃げたくなってしまう。


でも、ここでそうしてしまったら、それは3回目の拒絶。

それだけは、絶対にしたくない。


私に“好き”と伝えた声は震えていた。


前は、もっと明るく言ってくれた。

“俺は、春瀬のことが好きだよ”って。

なのに、今回はすごく悲しそうに声を震わせていた。


なにがいけないの?


時間?煌雅?私?それ以外のなにか?


煌雅のあんな悲しそうな声なんて聞きたくない。


「朝霧くん、ごめんね」


ここから更に、私は煌雅を傷付ける。


ごめんね、もう君とは付き合えないや。

私の我儘だけど、どうか許してね、って。


心の中で呟いて煌雅を見る。


「那古ちゃんにも言っておいてもらえるかな。“ごめんね”って」


涙が頬を伝う。

もう、いいの。


こんな世界、いらないんだ。


「それ、どういう………っ」

「お願い。お願い、煌雅。私からの最後のお願い」

「最後って!!」


私は黙ったまま、煌雅に歪な笑みを向ける。


「ねぇ、春瀬!! 何する気」


緩んだ煌雅の腕の中から抜け出す。


学校を飛び出して、走った。



走って、走って、ずっと走った。

待ち合わせ場所の交差点。

ここから全てが始まった。





これが、私からの最後のお願い。

何があっても、君はずっと笑顔でいて。