ぼっち症候群

保健室に駆け込むと、先生が驚いたように私を見た。


「どうした………?」

「ベッド貸してください。少しの間だけでいいので」


とりあえず、頭の中を整理したい。
一人の空間で落ち着きたい。
休みたい。


「………好きに使うといい。私は少し席をはずす」


なんて気のきく優しい先生なんだ。

その優しさに、さらに涙が溢れる。


「ありがとう、ございます………」


私はベッドの周りのカーテンをしめ、横になる。


保健室の扉が閉まる音がすると、布団を頭から被る。


「ふっ、………ぅ、あ、う………」


際限なく、涙があふれでてくる。



ふと、脳裏に記憶が蘇る。

この間見た、夢のことだ。

あれがきっかけで、全てがおかしくなり始めた。


「ぁ、れ………?」


もしかして、これが夢なのではないか。

私は、本当に車に轢かれたのかもしれない。

そうすれば、あの幸せな夢とも繋がる。

全身が痛くて、すごく辛くて。


ドクン、と心臓が大きく跳ねる。


「ぁ、はあ、はあ………? どうして? なんで? こんな夢なら終わってよ!」


保健室の扉が開く音がして、誰かがカーテンを勢いよく開けた。


「ねえ、春瀬。本当に大丈夫? 落ち着いて。俺がいるから」


駆け寄ってきた煌雅はベッドのはしっこの方に浅く腰掛け、布団越しに私の頭を撫でた。


「………こんなに辛い思いするくらいなら、死んだ方がましなのに。なんで、なんでちょっとの夢も見させてくれないのっ?」

「っ、! 春瀬………! 死んだ方がましだなんて言わないで」

「なんで、なんで煌雅はずっと追いかけてくるのっ? だって、私、何回も拒絶した」



ガラガラと、そしてボロボロに。
幸せは崩れ落ちていく。


「俺は、春瀬が好きだから………っ」


君のその優しい一言が、さらに私の心を抉っていく。



ガラガラと、そしてボロボロに。
そして、幸せは瓦解する。