ぼっち症候群

「春瀬、大丈夫?」


煌雅の問いかけに首をかしげる。


「…………泣いてる。俺、なんかだめなこと言った?」


言われて初めて気付いた。

“孤独”が私の心を蝕んでいく。


「保健室行く?」


煌雅の腕が私の肩口まで伸びてきて、反射で避けてしまった。


「っ、ごめんっ」


こんな気持ちになるくらいなら、誰とも関わりたくない。


走って走って走って、ついたのは屋上だった。


頭がいたい。
心臓がいたい。
気分が悪い。


これは、私がいけないの?


私がこんな環境で生き続けられるわけない。


パタパタと走ってくる足音がして、自然と下を向いていた顔をあげる。


「っ、春瀬。本当に大丈夫? 俺が何かしたなら謝る。だから、なにがあったのか教えて」


あなたのせいですよ。

そう心の中で呟いて、さらに虚しくなる。

いや、私のせいか、と自分を納得させる。


「なにもない。大丈夫」


不自然な笑みだっただろう。

煌雅の表情が歪む。


「ね、大丈夫じゃないよね。そんな顔して」


その手が頬に触れそうになった瞬間、私は煌雅を見上げる。


「大丈夫。何があっても朝霧くんには関係ない。もういいから、ほっといて」


自分の瞳から大きな雫がこぼれ落ちる感覚があった。


これ以上、耐えられない。


私がいけない。

なのに、私にはなにもできない。


せめて、誰か一人でも私のこと知っていてくれれば、それだけでもっと気が楽になったのかな?


あーあ、やる気でない。


私は煌雅の横を通りすぎると、一直線で保健室へと向かった。