お風呂から出たら、リビングの机にご飯が並んでいた。


麻婆豆腐と卵雑炊。


煌雅はいない。


「あ、あの………朝霧くん?」


その時、キッチンの方で音がした。


入ると、そこにいたのは煌雅だった。

何故か、指から血が流れ出ている。


「っ、い………」


痛そうに押さえている。


「っ、大丈夫!?」


私は慌てて駆け寄る。


「はる、せ………」


私を見て、煌雅は驚いたように目を見開き、そしていっきに赤くなった。


「ど、どうしたの。大丈夫?」

「………問題ない」


私からふいっ、と目を逸らし、キッチンを出ていってしまう。


煌雅がいたあたりに包丁が落ちていて、血が数滴垂れていた。


包丁は水道で丁寧に洗ってしまい、水で濡らしたティッシュで床を拭く。


リビングで待っていると、戻ってきた煌雅の指には絆創膏が巻かれていた。


「キッチンは片付けた。ごはんもありがとう。一緒に食べよう?」


煌雅はふっ、と呆れたように笑った。


「そうだな。ありがとう。ごめんね」


椅子に座り、ふたりで手を合わせる。


「いただきます」


とてもシンプルな麻婆豆腐と卵雑炊だったが、とても美味しかった。





そして、10時をまわった頃。


「春瀬、そろそろ寝よう。俺はその辺で適当に寝るから春瀬はベッド使って」


煌雅が言った。


「いや、ここは朝霧くんの家なんだから朝霧くんがベッド使ってよ。私はどこでも寝られるから」

「いや、客人を………しかも、女の子を雑魚寝なんてさせられないよ」


それに対して私が放った言葉。

それによる煌雅の苦労なんて、私には知る由もなかった。


「じゃあ、一緒にベッドで寝よう?」

「………っ、は?」


煌雅の顔が真っ赤になった。