みんなが私を忘れてから初めての週末。


私は新しい文房具を買うためにショッピングモールへと来ていた。


雑貨屋で目当てのものを買い、ついでに本屋に寄る。


何か面白そうな本はないかな、と探していると、一瞬頭がくらくらした。


そこへ、本屋の店員さんがやってきた。


イケメンのお兄さんだった。


「君、大丈夫? 具合悪そうだけど」


私が大っ嫌いなナンパをしてくるような人じゃない。

これは、彼の良心だった。


「あの、大丈夫です………」

「でも、君、すごく顔色悪いよ。バックヤードで休みな。途中で倒れちゃうよ」


お兄さんは、ちょっと触れるね、と言いながら私のおでこに手をやった。


「熱あるよ。親御さんに連絡するから休んでていいよ。家の番号分かる?」


お兄さんは私を支えるように肩に手を回す。


その時───


「痛っ」


お兄さんが小さく悲鳴を上げた。


「ねぇ、あんた何やってんの? 大人が未成年に欲情してんじゃねーよ。触んな。俺の連れだ」


お兄さんの手を掴みながらそう言ったのは、煌雅だった。


「え、あ、そうなの? じゃあ、この子、家まで送り届けてあげられる? とりあえず離して、痛い」


煌雅は怪訝そうにお兄さんを見てから、その手を離した。


「別にこの子を取って食おうってわけじゃないよ。具合悪そうだったから横にしてあげようと思っただけ。ごめんね、君の大切な子に手出しちゃって」

「………いや、すみません。春瀬、大丈夫? 送ってくから家教えて」


煌雅の優しい声に包まれて、全身から力が抜ける。


「!? 春瀬! おい、春瀬!」


煌雅の腕が私を強く抱きしめた感覚を最後に、私は意識を手放した。