宇宙人が学校を侵略してしまった


『じゃあ、始めようか! まずは君!』

宇宙人を模した人物が指差したのは、さっき撃たれた男子だった。

「はあ? 前の席からじゃないのかよ!」
『そんなこと誰も言ってないしー! こっち来な!』

銃を突き付けられた男子は大人しく教壇に向かう。

『さあ、君の懺悔は?』
さっき銃を撃った宇宙人が、そう問う。

「別に何も……」

『嘘はよくないな〜』
そう言い、男子に銃を突き付ける。

「ちっ! 分かったよ! ……クラスの奴らから金せびってた! 悪りぃか!」

男子の悪態に、クラスメイトは冷たい眼差しを向けていた。
ん? そんなことあったっけ?
私は全然覚えていなかった。まあしかし、これがクラスへの罪ならこれで終わ……。

『君、もっと酷いことしてたよね?』
「はあ? なんだよ? いちいち覚えてねーよ!」

『そっか……』

宇宙人は笑っていたけど、その目は怒りに震えているようだった。
次の瞬間、銃を男子に打ち込む。
すると、目の前にいた男子は叫び声と共に消えてしまった。

「きゃあああー!」

教室中は、またパニックになる。

あれ? 今、銃で人が消えてた? え? これって本物? 本物の宇宙人!?

私は、自称宇宙人達を見る。
あれは被り物じゃなくて、本当の顔なのかもしれない。バカバカしいけど、そう考えてしまった。

私がそう考えている間に、ドアに走る生徒が続出したが、宇宙人達に銃を突き付けられ、渋々席に戻っていった。

隣の席を見ると、伊藤さんは両耳を片方ずつの手で抑え、小さく震えていた。

そうだよね、怖いよね、私も……。
……あれ、怖くないし、体も震えない。
教室中を見ると、みんな泣き叫んでいるのに私だけそうはならない。私、感情とかないの?

『さあ、分かったか! 間違えたら存在を消す。だから皆、よーく考えるように!』

その言葉と共に、次の生徒が呼ばれる。


「私! 私はアイツと違って金なんかせびってねーよ!」

次は女子だった。

『そうだね。君は直接的にはしていない。でも、それ以外の大罪は犯したよね?』

またあの宇宙人が問い詰めていく。

「確かに私はアイツの金がクラスの奴らの金だって知ってたよ! でも、奢ってきたのはアイツだろ? 私は悪くない!」

宇宙人は、もっと酷いことだと責め立てる。
「知らねえ!」と言い、逃げようとしたところを銃で撃たれ消えてしまった。

二度目でもクラス中に悲鳴が上がる。
しかし宇宙人達は容赦なく、騒ぎが続く中また別の女子生徒を呼び出す。

もう観念したようで、「裏垢でクラスの奴らの悪口を呟いた」と懺悔したけど、間違いだと消されてしまった。

その後も順番に呼ばれていき、「大人しい女子達からメイク道具を借りパクしていた」、「パシリにして代金まで払わせた」、そして驚いたのは「クラスメイトが団結するのを防ぐ為、悪口を吹き込んだ」という懺悔だった。

その内容にクラス中がざわつく。
互いに顔を見合わせて、あいつらに仕組まれていたと話していた。

宇宙人達は、クラスメイト達が立ち上がり後ろでコソコソと話し合うのに、そのことを何も言わず、ただ見ている。
私と伊藤さんは、その不可思議な状態をただ傍観していた。