宇宙人が、学校を侵略しに来たらいいな……。
そう思ったことない?

「誰だってある」とまでは言わないけど、私以外にもそう妄想したことある人いるよね?
「こんな世界ぶち壊してしまえ!」とか考えたことあるよね?

……今、それが現実になった。
いつも通りに学校に来たら急に空が暗くなって、ボヤけた教室が余計に見えにくくなった。

窓から見上げた空は、太陽の光を覆うぐらいの大きな円盤があり、学校の上空に浮いていた。

はあ? 何、これ? 何が起きてるの?


……まあ、どうでも良いんだけどね。別に何が起ころうが、誰が死のうがどうでもいいし。

……あ、前言撤回。お父さんとお母さんだけは助けてね。

そう思いながら、私はこの状況をただ傍観していた。すると……。
『大人しくしろ!』

そう叫んだ宇宙人を模したような見た目に、変な声をした三人組が教室に入って来た。

初めは皆、呆けており何が起きたのか分からなかった。
しかし一人が、「犯罪集団」ではないかと騒ぐと途端に教室内はパニックになった。
 
廊下に続くドアに走る生徒。
恐怖から叫ぶ生徒。
机の陰に隠れて、縮こまりながら泣く生徒。

空が暗くなったと騒ぎになって、たった五分で世界が変わってしまった。


ダンダンダン!

「嘘だろ! 開かねーぞ!」

男子達がドアを叩き、蹴り飛ばすけど、びくともしない。
次に椅子の足部分を使ってドアや窓のガラスを割ろうと叩きつけるが、それでもびくともしなかった。

教室の出入り口の二箇所は、宇宙人の力か何か知らないけど開けられなくなり、窓も同様だった。極め付けにはガラスまで割れなくされていた。
……まあ、窓まで細工しなくても、ここは三階。飛び降りるバカは居ないと思うけどね。

「あなた達は誰!」
「何が目的!」
「助けてー!」

クラスメイトの叫び声が、教室中に飛び交う。


「俺達は正義の使者! 悪に満ちたこのクラスを変える為に宇宙よりはるばるとやって来た!」

教壇に立つ、宇宙人に模したよく分からない人物達はそう宣言した。

その発言に、クラス中がざわつく。
やっていることの割に、言ってること子供過ぎる。そう話していた。


『うるせー、黙れ!』

そう叫び、教壇に立つ人物は天井に向け銃を撃つ。
しかしそれも、アニメとかで見る宇宙人が持つようなおもちゃのような銃で、銃口から出てきたのは小さな光だった。

その姿がまた滑稽で、クラス中がざわつく。
もう、何かのドッキリだと言われてもおかしくなかった。

だからか、クラスの男子数人が自称宇宙人に詰めかける。

「ふざけるな!」
「ここから出せよ!」
「痛めつけてやろうか?」
そう言い、一人が椅子を振り上げる。

すると宇宙人に模した一人が、一人の男子に銃を打ち込む。
おもちゃみたいだと思っていたのは思い違いで、銃から放たれた光に当たると、男子生徒は転がり込み痛みに悶絶していた。

「きゃあああー!」

また教室中に悲鳴が響き、パニック状態になった。

『物騒な物、振り上げるね? 君、なかなかの思考をしているな』
そう言われた男子達は、さっきまでの威勢はすっかりなくなり、ガタガタと震えだした。

『どうだい? 一方的にやられる気持ちは?』

宇宙人を模した一人はそう言い、倒れた男子に銃を向けてくる。

『おい、気持ちは分かるが、目的が違うだろう?』
『時間もないから』
それを見ていた二人が静止する。
よって、これ以上の攻撃はなかった。


『我々はこのクラスの悪を暴きに来た!』
『一人ひとりに聞いていくから、己の罪を懺悔しろ!」
先程とは違う、二人の宇宙人を模した人物達はそう言い放ち、銃をこちらに向けてきた。

皆、この銃が怖く、机の下にしゃがんだままでいたり、ずっと泣いていたり、後方にいた生徒達は他のクラスメイトを盾にし、身を守ろうとする。……私も、そんな盾にされた。


『さあみんな座って! 十秒以内に座らなかったら撃つから!』
次の指示に、我先にと後方の席に座り始めた。
私はぶつかられて倒れ、すぐに立ち上がれなかった。

「大丈夫?」
そう言って、私を立ち上がらせてくれた女子が居た。
クラスメイトの伊藤さんだ。

あれ? 教室の中も、クラスメイトもぼやけて見えるのに、自称宇宙人と伊藤さんの姿だけは鮮明に見える。どうして?
いや、逆か。どうして他は、ぼやけて見えるの?

そう思っていると、伊藤さんはそのまま私の手を引き席に座らせてくれた。

「ありがとう」
「ううん。これぐらい……」

私達は一番前の教壇の前になった。私を助けなかったら、伊藤さんまでそんなことにならなかったのに。

そう思うと、胸が痛んだ。