『なにすんだよ!』

『指なら切ってもいいかって言うから切れるのかなって』

 藍の返答に、冗談のつもりだった男子は困惑する。まさか自分の言葉を本気で取られるとは思わなかったのだろう。藍はただ、はさみで指が切れるということがどういうことなのかを知りたかった。

 自分の指と取り上げられたはさみをそれでも眺めていると、ひょい、とそのはさみが持ち上げられた。あ、と思う間もなく、持ち上げた陽介が自分の指にはさみをすべらせた。

 指に走った一筋から、血が流れ落ちる。


 委員会は大騒ぎになった。驚いた藍に、陽介は笑った。

『よく切れるって言われたら、試してみたくもなるよな。だから、これから気をつけて使おう。せっかくきれいな細い指なんだから、傷なんかつけない方がいいよ』

『痛くないの?』

『皮1枚だからそれほど。でも、手を洗う時しみるかもな』

 こともなげに陽介は言ったが、藍にしてみれば衝撃だった。