「藍?」

 陽介がおそるおそる声をかけると、藍が振り向く。無表情な藍の顔は、いつもの夜の顔だ。

「どうかしたのか?」

「別に」

 それだけ言うと、また空をあおいだ。陽介は、再度体調を尋ねるが、藍の返事は『大丈夫』だけだった。

 とりあえず、何が起こったかはわからないが、心配はなさそうなので陽介も隣に腰をおろした。


「流れ星、見られてよかったな」

「うん」

「流星群の期間になれば、もっとたくさんの流れ星が見られるよ」

「さっき言っていた?」

「ああ。一緒に見られればいいんだがなあ」

 藍は、黙って空を見上げている。無表情ではあるが、きっとその視線には、もう一度流れ星をみたいという期待が込められているのだろうと陽介は思った。


(藍に、見せてやりたい。どんな顔になるだろう。きっと、すごく喜ぶだろうな)